映画『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』ネタバレ感想


・このnoteを書こうと思ったきっかけ

 突然ですが、最近流行りのアニメ、『ぼっち・ざ・ろっく!』。このアニメを見ていて、私はなんだか既視感があるな……と思いました。パクリという意味ではなく、友だちの少ない女の子がバンド(音楽)を通じて他人と仲良くなったりするという筋書きに対して、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』という映画を連想しました。

 もちろん、原作こそ両方とも漫画であるものの、ぼざろがアニメなのに対して志乃ちゃんは実写であることや、ぼざろにはきらら系アニメの文脈があり、志乃ちゃんは映画で明言はされませんが吃音を扱っていることなど違いは大きいです。でも、ぼざろを観ている人たちにも志乃ちゃんを観てほしいな、と思ったためこのnoteを書くことにしました。

 ただ、私はその作品を知らない人に対して説明や紹介をしたり、ネタバレをせずに語るのが苦手なため、既に映画を観た人向けの感想になってしまっているかもしれません。それでは元々の趣旨には沿っていないのですが、私の個人的な趣味で書いているものなのでご了承ください。

 もう一つ、私は吃音の当事者ではないので、当事者の方々から見て的外れなことを書いてしまっていたらすみません。


感想

・ストーリーについて

 この映画のストーリーで私が一番好きなところは、ラストです。いきなりネタバレをしますが、志乃ちゃんが少なくとも映画本編の最後の時点で仲直りができていない、というところが好きです。ビターなエンドにも受け取れますが、他の方の感想で未来では仲直りできるのでは? というものがあったり、ある種の依存関係からの脱却としていい意味で捉えている意見もあり、解釈の幅が広いところが好きです。ちなみに私はどちらかというとバッドエンド寄りに捉えていますが、ある意味現実的でいいラストだと思います。

 もう一つ、この映画は青春のヒリヒリした感じの表現が全体的に上手です。青春というとなんとなくキラキラしたものをイメージしがちですが、実際はそれだけではないと思います。具体的にどう、というのは私の語彙では説明が難しいのですが、思春期の繊細さがとても良いです。

 

・キャラクターについて

 主人公の志乃ちゃんは、吃音のため他人と話すことが苦手です。ですがただかわいそうな子としてだけではなく、笑わないでほしいと言って歌った友達の歌に笑ってしまうなど、悪意があるかどうかは別として他人を傷つけてしまうところもあります。それは対人関係の経験値の少なさからきているのだと思います。このような複雑なところを持った主人公ですが、私はとても人間的で魅力的だと思いました。思わず応援したくなります。

 もう一人、私がこの作品で好きなキャラクターがいます。菊地くんです。彼は簡単にいうとあまり空気が読めないキャラクターなのですが、悪い人ではありません。菊地くんを分かりやすい悪者にしなかったところがすごく嬉しかったです。この映画を観た人の中でも彼を受け入れられる人ばかりではないと思いますが、私はとても感情移入してしまいました。

 志乃ちゃんの場合、からかわれたりいじめられることはあっても(勿論それもとても辛いことだと思いますが)、本気で人に嫌われることはあまりないような感じがします。でも菊地くんは多分そういうこともあると思います。そこの辛さを描いてくれているのがこの作品の良さです。辻村深月さんの『かがみの孤城』という作品で、主人公のこころちゃんとウレシノくんという登場人物を対比しているところがありますが、それを思いだしました。

・音楽について

 『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』は、音楽映画としてもとても素晴らしいです。何が素晴らしいかというと、歌もギターもはっきり言ってあまり上手くないというところです。上手くないけれど、ちゃんと心に響きます。カバー曲の選曲も、私は元々知らなかった歌も多いのですが良いです。そういうことができる作品は稀有だと思います。この作品の音楽の素晴らしさは言葉にするのが難しいので、ぜひ聴いてみてください。

 ここまでで今回のnoteは終わります。書きたいことが多すぎて長くなってしまいました。ここまで読んでいただいて本当にありがとうございました。

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