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自作楽器デュオ・サンピン アルバム"Handmade Instruments Duo"からのミュージックビデオまとめ

エレクトリック、アコースティック混成の自作楽器デュオ、サンピン。我々のエッセンスを集めたアルバム"Handmade Instruments Duo"を数年前よりSpotifyApple MusicAmazon Musicなど主要音楽ストリーミングサービスより配信しておりますが、その演奏風景をとらえた動画群もyoutubeより少しずつ配信していました。そして2021年11月に全9曲の動画が揃いましたので、ここにそれら9曲のMVを解説をつけつつお届けします。我々の音楽は、音だけならイマジネーションを膨らませ楽しんで頂けたらと思う一方、具体的に楽器とその演奏風景をご覧頂くのも自作楽器デュオならではの魅せ処かと思います。自作楽器演奏でありながら音色や音楽性がバリエーションに富んだ内容になっているのもポイントです。ぜひご覧ください!(Text by 尾上祐一)

Kara-Age

尾上作の回転する円盤が弦を擦って音を出す胡弓のような2弦エレキ楽器=回擦胡(Kaisatsuko)と、久田の自作、自演によるアラブのダラブッカ・パーカッションをフィーチャー。このダラブッカはエイの皮を張った自作ならではの物。曲は、回擦胡で作曲。回擦胡はエレキ楽器である特性を生かし、しゃべっているようなサウンドのトーキング・フィルター・エフェクト(ワウの変種)をかけています。変拍子の応酬の中、久田の非常にエキサイティングなダラブッカ・プレイが曲を引き立てます。また曲の途中、尾上のもう一つの自作楽器リボンコントローラーの演奏もアクセント的に挿入されます。更に尾上はフェンダー・ベースもプレイしています。

Still Life

こちらは尾上が13年程前に回擦胡で作曲した"Still Life"。久田は、フレームドラムをプレイ。尾上的にこれまで様々なプロジェクトで演奏してきている曲ですが、サンピンでは静謐でありながら、久田の重厚なフレームドラムに導かれ徐々に盛り上がります。回擦胡は2弦なので基本的には2音ですが、この曲では5度のピッチシフターエフェクトを足して4音で演奏されています。動画中の久田のフレームドラム工房「音鼓知振」パーカッションの数々の写真も正にスティル・ライフ(静物)な趣があります。

焼肉粽

台湾の古い歌謡で向こうでは誰もが知っているという歌 "ちまき売り(焼肉粽)"のカバーです。ここで尾上はリボンコントローラーという楽器をプレイ。指で押した場所に応じて滑らかな音程変化の演奏が可能な電子楽器で、棒状のボディに接触タイプのリボン状の位置センサーを搭載し、指で押した場所の位置情報で発振器の周波数をコントロールする原理。尾上的には幾つかのプロジェクトで演奏している曲ですが、Sanpinでは久田のダラブッカ・パーカッションと相まってエスノ色があり、かつノリのいい仕上がりになっていると思います。また、フェンダーベースは尾上が演奏しています。台湾本国では様々な歌手が取り上げていますが、我々的に参考にした鄧麗君(Teresa Teng)のバージョンはこちらで聴くことができます。

浮雲

リボンコントローラーで作曲し、演奏し続けている"浮雲"という曲です。幾分日本や中国を感じさせるメロディじゃないかなと思いますが、昔の作曲家の早坂文雄とかの影響を受けてて、12音すべてを使ってたりもします。尾上のリボンコントローラーによる浮遊感、そして久田によるキメ細かいアラブのタンバリン=Riq(やはり久田の自作)のプレイは、同じタンバリンでも皆さんご存じのそれとは大分違った奏法じゃないかなと思います。更に中盤では久田によるバネとフレームドラムを組み合わせた珍楽器Frame'd Laposも登場し、聴き処、観処がいっぱいです。

Contrail

久田の口琴を全面的にフィーチャーした"コントレイル"と言う曲(仲間のキツカワ・ジョーさん作)。口琴でソロとテーマを示した後、尾上も回擦胡リボンコントローラーと楽器を取りかえつつパフォーマンスに加わります。これは立川と八王子の男達が静かに荒野を飛び立ち、大地を見据え、月の裏側を通り、宇宙へと向かうエスノ&人力テクノな音の詩なのであります。なお久田がプレイしている口琴は、鍛冶職人の目次伯光さん製作のものです。

Within You Without You

ジョージ・ハリスン作、ザ・ビートルズの楽曲。アルバムSgt. Pepper's Lonely Hearts Club BandのB面最初を飾るインド風味のある楽曲のカバーです。オリジナルではジョージのボーカルと共にインドの弓奏楽器エスラジがユニゾンで演奏されてますが、そのエスラジのイメージを膨らませた形で回擦胡をプレイしてます。尾上的にはずいぶん前から回擦胡ソロで演奏しているのですが、中盤の5拍子の演奏がとても難しく、サンピンでやっと演奏できるようになった感じ。久田は自作ダラブッカを演奏しています。

サンピンのパフォーマンスは、ライブ・テイクの動画がジョージ・ハリスンのツイッターで紹介されたことがあり実に光栄でした。

牧羊女

ウイグルのトラディショナル曲を、尾上のリボンコントローラーと久田のフレームドラムによる独自解釈でカバー。ここで久田がプレイしているフレームドラムは、空気入れで皮の張りを調整できるユニークなもので自作ならではの創意工夫があります。曲的には、静謐な出だしから熱いエスノ・サイケ・ロックへと展開します。シーンに応じ音色を劇的に切り替えられるのは電子楽器ならでは。そしてこのダイナミックな表現もサンピンならでは。この動画では、サウンドに合わせて変化するバック映像と共にトリップしてください。

三文サーカス

尾上が回擦胡で作曲した"三文サーカス"。久田は、アラブのタンバリンのRiqをプレイしています。ここでもRiqならではのキメ細かいタンバリンプレイが聴けます。変則的な小節数と回擦胡が醸し出す酩酊感が危うくもスリリングなサーカスを描きます。回擦胡の演奏は、大きく分けて2つのスタイルがあり、1つは太い方の弦をドローン弦として鳴らし続け、もう1本の弦でメロディを弾くスタイル。もう一つは2つの弦を和音として押さえコードやメロディを演奏するスタイル。この"三文サーカス"や、2曲目で紹介している"Still Life"は、後者のスタイルで演奏されています。

Rumeli Karsilama

尾上の電子チャルメラのようなけたたましい音色のリボンコントローラーと久田のダラブッカパーカションによる、トルコのトラディショナル"Rumeli Karsilama"のカバー。フリーフォームなイントロから9/8拍子を畳み込むメイン・テーマへ。そして緩急つけながら爆発するジャムへと展開する我々ならではのビザールでハードなエスノ・ミュージックです。良く見るとダラブッカの皮が薄オレンジ色に光っていますが、これは内部に電球を入れており、その熱で皮の張りを良くするためなのですが、副作用的にステージ映えもします。さてこの動画、トルコ本国のネット掲示板でちょろっとバズったようで、ある日、一気に高評価が20~30跳ね上がりました。彼らは"SARIBOGA"という言葉を連発してました。意味はよくわからないのですが、トルコは歴史的に日本に恩があるので、その辺の事柄から来ていることでないか?と捉えています。

About Sanpin

久田祐三の"三"、尾上祐一の"一"、三・一サンピンと命名。2015年より活動。
サンピン・ホームページ
サンピン フェイスブック・ページ

久田祐三
フレームドラム、ダラブッカ、Riq、口琴
など中近東や中央アジアの繊細で豊かな音色の民族打楽器を駆使し、リズムの根源を探求すべく音楽ジャンルの枠にとらわれず活動中。打楽器トリオSag Chanaや中世古楽アンサンブルViatgerの他、サポート、個人での演奏も精力的に行っている。フレームドラム工房「音鼓知振」代表としてもフレームドラムの制作&販売や、イベント出店、ワークショップ、鹿皮の有効活用、アーティストとのコラボレーション等を展開。 フェイスブックフレームドラム工房「音鼓知振」

尾上祐一
回転する円盤が弦をこすって音を出す2弦の電気楽器の回擦胡と、押す場所により音程が滑らかに変化する電子楽器のリボンコントローラーを担当。共に自作の楽器。古今東西の様々な音と音楽を探求し、電気系自作楽器の演奏活動を即興から楽曲、独奏からワナナバニ園をはじめとしたバンドまで、様々な形態で行っている(活動履歴)。またこのnoteで観られる動画を含め、自身の音楽の動画制作も行っている。フェイスブックホームページYoutubeチャンネル

アルバム"Handmade Instruments Duo"
ベルギーのレーベルOFF Record Labelよりデジタル・リリース。

SpotifyApple MusicAmazon Music youtube music, Bandcampなど主要ストリーミングサービスより配信中。またサンピンのライブなどでCD販売しています。
"Sanpin”、"Handmade Instruments Duo"でご検索ください。


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