原文記事：The Pandemic Has Been Very, Very Good for the Creator Economy

著：ルーカス・ショー  2021年8月30日 7:00 JST

ハリウッドとシリコンバレーが出会う場所

2009年にレザ・イザドがインフルエンサーの代理業を始めたとき、彼のクライアントの最終目標は、メインストリームにクロスオーバーする（既存のメディアに進出する）ことだった。
フレッドことルーカス・クルイックシャンクは、自身のYouTubeチャンネルをニコロデオンの映画シリーズに仕立て上げた。
ローガン・ポールは、「Law & Order: Special Victims Unit」と「Bizaardvark」に出演、リリー・シンは、NBCで深夜のトークショーを担当した。

ソーシャルメディアで有名になった人たちは、今でもハリウッドで活躍の場を求めている。
TikTokのAddison Raeは、レコード会社との契約と、Netflixで今週末最も人気のあるタイトルであるロマンチックコメディ「He's All That」での主演の両方を達成した。

しかし、現在のクリエイター達はソーシャルメディアで多くのお金を稼いでおり、主要メディアへの進出が最終目的ではなくなっている。

YouTubeでは広告、Instagramではスポンサーシップで何百万ドルも稼ぐことができる。
視聴者を活用して、自分の洋服やメイクアップのブランドを立ち上げることもできる。
また、他の多くのクリエイティブな活動とは異なり、クリエイター・エコノミーはパンデミックの影響を受けないことが証明されている。

ユナイテッド・タレント・エージェンシーのデジタル・タレント部門責任者、アリ・バーマンは、「私たちは、すでに自宅でビジネスを立ち上げたり、管理したりしている人たちの担当になっている」と述べる。

デジタル・タレントをめぐるビジネスがあまりにも大きくなったため、「クリエイター・エコノミー」という新しい言葉が生まれ、今年のビジネスの流行語の一つになっている。それは、Substack、Patreon、OnlyFansなど、ジャーナリストやポッドキャスター、性産業従事者にYouTuberのビジネスモデルを再現するチャンスを与えている企業の台頭を見れば一目瞭然である。
イザドによると、クリエイター経済は200億ドル以上の価値があるとのことだ。

そのようなお金が飛び交う中、私は業界を代表する4人の経営者に、YouTubeやTikTok、そしてどの有名人が最も優れたソーシャルメディアの存在感を示しているかについて話を聞いた。

バーマン、Underscore Talentの共同設立者であるイザド、Select Management Groupのパートナーであるリサ・フィリペリ、100 Thievesの最高執行責任者であるジョン・ロビンソンなど。彼らは、現在活躍している多くの人気インフルエンサーと仕事をしている。ここでは、話の内容を凝縮、わかりやすく編集した。

このビジネスは、YouTubeから始まりましたね。
ユーチューバーを起用するとお金になると気づいたのはいつですか？

バーマン： エイプリルフールの日に、あるエージェントが「Annoying Orange」というオレンジのアニメを使ったYouTubeチャンネルと契約したというメールを送ってきたんです。ほとんどの人は冗談だと思って笑っていましたが、私はそれがとてもクールだと思ったのです。

フィリペリ： クリエイティブ・アーティスト・エージェンシーにいたとき、私は支援部門で働いていたのですが、Twitterで起きている取引に魅了されました。当時、会社としては重視していませんでしたが、Googleはオリジナルコンテンツのプログラムやチャンネルに5億ドルを投資していました。
クリエイターに代理人がいないことに気づいた私は、代理人としてのキャリアを歩むことを決意しました。どのクリエイターにも代理人がいなかったんですから。　「これはおかしい！」と思いました。サンセット大通りのビルボードと同じくらい大きなインプレッションを獲得しているのに…ブラッド・ピットになら大金を払うのにね。

イザド： 私たちは2009年にタレント・マネジメントから始めました。エヴァン・ワイスというマネージャーが、フレッドというキャラクターを生み出したルーカス・クルイックシャンクと契約しました。2009年当時、フレッドはYouTubeで最大のチャンネルでした。

この1年間で最も多くの新しい才能を見つけたのはどこですか？

バーマン： それは簡単な答えですね。TikTokです。

TikTokを本格的に始めたのはいつですか？

バーマン： 2019年の秋くらいに、最初のTikTokタレントであるBrittany Broskiと契約しました。彼女はバイラルミームのセンスがあり、コンブチャ（Kombucha）ガールとして知られていました。その後、D'Amelioファミリーと仕事を始めました。

フィリペリ： 私は、話題のプラットフォームが登場すると、それに注目するようにしています。自分が登録し、顧客にも登録するように伝え、評価するのです。私はVineが好きだったので、TikTokも楽しいと感じました。コメディー的な側面で気に入りました。コメディアンの周りにはたくさんの発見があります。
コメディアンはすぐに発見され、あっという間にフォロワーが増えますからね。For Youのページはよくできています。1つのQAnonビデオを見るとどうなるかについての研究がたくさん見られたため、YouTubeでの発見可能性はさらに困難になりました。2日後には洗脳されてしまいますから。

YouTubeブランド安全性の問題は、長期的にはどのような影響を及ぼしていますか？

イザド： YouTubeは、より多くの広告主を獲得するために、プラットフォーム上の問題に上手に対処してきました。消費者の問題を抱えたことはありません。彼らは常に、対処すべきより多くの消費者を抱えていました。しかし、長年にわたって発生してきた問題に対処するためには、技術的なツールを構築し、進化させなければなりませんでした。
YouTubeが直面したこれらの問題の多くは、他のプラットフォームに市場を開放するのに役立ちました。多くのクリエイターに、「マルチプラットフォームでなければならない」という意識が芽生えました。価値を引き出すことのできる、できるだけ多くのプラットフォームに登場する必要があるのです。

今でもYouTubeは、クライアントにとって最も重要なプラットフォームですか？

イザド： YouTubeは今も昔も圧倒的な存在感を放っています。クリエイターへの支払い総額を見ても、他の追随を許しません。しかし、今は他のプレイヤーが参加する余地、より多くのクリエイターが登場する余地が出てきました。

フィリペリ： 私は、特定のプラットフォームが他のプラットフォームよりも価値があるとは考えていません。TikTokは多くのことを変えました。TikTokがすべてを変えたということは皆が知っているがあえて触れようとしないだけです。

TikTokでクリエイタービジネスを構築することを、YouTubeと比較してどう思いますか？

フィリペリ： TikTokの方が速いですが、フォローやエンゲージメントが気になるわね。TikTokのフォロワー1億人は、Instagramでのフォロワー2,000万人に相当する、その差がずいぶん大きいですよね。あるいは、TikTokで1億人ということは、YouTubeでは800万人ということになります。
それに、他のプラットフォームに比べてデータの透明性が低いと感じます。Googleのメタデータは素晴らしい。Instagramのメタデータは素晴らしいです。TikTokのメタデータは......気になりますね。それと、TikTokでのブランド取引ははるかに少ないです。これは私の偏見から来ているのかもしれません。あるブランドがTikTokではYouTubeほどお金を払わないと知っているからです。

YouTubeでは無名の人でもブレイクできるのでしょうか？

イザド： 何でもそうですが、難しくなっています。でも、答えはイエスです。YouTubeはShortsを積極的に展開しています。トップ10を見ると、2年前にはいなかった多くのタレントが、月に何億回も再生されています。

ロビンソン： 昔から大変でしたよ。Valkyraeは、典型的な5年間のオーバーナイト・サクセスストーリーです。彼女は一生懸命努力してきましたし、長い間、素晴らしいコミュニティに支えられてきました。

YouTubeとTikTok以外で、最も重要なプラットフォームは何ですか？

イザド： Instagramは、YouTubeよりも多くのブランドコンテンツを生み出しています。ですから、特に美容、ライフスタイル、料理、ファッションなどの主要カテゴリーでは、インスタグラムに載せることは超重要です。

バーマン： 最も多いのは、YouTube、TikTok、Instagram、Facebookです。2014年には、Snapchatから飛び出した才能が見られましたが、クリエイターにとってはエコシステムが新しかったので、それを軸にビジネスを構築する機会はありませんでした。
今後、Pinterestがどのような方向に進んでいくのか、とても楽しみにしています。たくさんの素晴らしい声が寄せられ、ママ＆ポップショップも増えています。次のChip and Joanna Gainesは、Pinterestから生まれるかもしれません。

ロビンソン： Instagramは800ポンドのゴリラです。常に上位2～3位に入るプラットフォームで、Facebookがそれをどう活用するかが問題です。Reelsと「Instagram Stories」は、主に競合他社を追随して進化した、非常に大きな製品です。フェイスブックは何が起きているかをよく見ています。私は、これらが最後の生産革新であるとは思っていません。

長い間、人々はクリエイターが主流メディアに進出することに関心があったようです。
今ではそのようなことはあまり言われなくなりましたね。

フィリペリ： 皆、それが大したお金にならないこと、影響力が小さいことに驚いたのですよ。コントロールと金銭的な利益を放棄することは抑止力になりました。インフルエンサーという仕事は、今では少し正当化された仕事になっています。人々は正統性を求めていましたからね。以前はハリウッドがお墨付きを与えてくれていました。しかし、今では人々はハリウッドのお墨付きなど求めていません。

YouTubeやTikTokで人気のある人を、どうやったら自分の事業のCEOにできますか？

イザド： これは、多くのクリエイターが直面する最大の課題です。彼らは、ガレージから生まれたビジネスに留まる傾向があります。自分とカメラ、そして1人か2人のアシスタントで構成されています。大勢の人がいるわけではありません。ある時期になると、自分の生活に人が増え、そこから得られるアウトプットよりも人の管理の方が大変に感じられるようになります。本当に非効率的で手間のかかることだと思います。大変ですよね。
しかし、それを乗り越えた先には、持続可能なビジネスがあるのです。クリエイティブなことや得意なことを続けられればの話ですが。RhettとLinkはそれを見事にやり遂げました。それが持続可能性を築く方法なのです。休暇を取りながら、24時間仕事のことを考えずに済むような方法で、自分を中心としたビジネスを構築するのです。

ロビンソン： 私たちは柔軟に対応しようとしています。私たちは、今まで以上のことを行うチャンスを常々提供しています。CouRageの場合、彼が私たちと仕事をするのを楽しみにしていた理由のひとつは、私たちが「（100 Thievesの創設者）マット（ナデショ）と一緒にポッドキャストをやってみないか」と言ったからです。彼は、TwitchでのストリーミングやYouTubeでのビデオ制作で大きなコミュニティを築いていました。ポッドキャストをやることは、彼にとって大きな変化でした。

デジタルネイティブのタレントがこれまでに行った最も大きな取引は何ですか？
あるいは、あなたが最も感銘を受けたビジネスは何ですか？

ロビンソン： おそらく、NinjaかDr. Disrespectのどちらかの実績でしょう。2人とも、従来のゲームコミュニティを超えたリーチについて、実に優れた視点を持っています。

イザド： Dave Portnoyは、自分の個性や得意分野を活かして会社を設立することに成功しました。Crooked Media社の人々は、ポッドキャスト1～2個に過ぎなかったものをメディアビジネスにすることに成功しました。

クリエイターたちは、毎週、毎日、時に1時間毎に新しいビデオやクリップを投稿しています。
燃え尽き症候群を防ぐにはどうしたらいいですか？

フィリペリ： 引退や減速、仕事のやり方を変えるなどしても良いことを知っておくことです。多くのタレントにとっては、それを受け入れたり、実行することは難しいことです。ただ、人は皆減速していくものです。年を重ねるごとに価値観が変わったり、お金があるから一生懸命働かなくてもいいと思ったり。自殺するくらいなら、楽に生きればいいんですよ。

バーマン： それには必然性があります。すべての映画に続編が制作されるわけではありません。すべてのテレビ番組が1～2シーズン以上続くわけではありません。結局のところ、声を出してコンテンツを作っていると、ある種の行き詰まりを感じることになるのです。そんなときに担当者としてできる最善のことは、耳を傾けることだと思います。

イザド： 私たちは、どうすれば1日の時間を増やせるかを常に考えています。どうすれば人々の仕事を減らしてサービスプロバイダーに渡すことができるのか、あるいは企業内で仕事をすることができるのか。これは常に考えていることです。スケジュールを立てて、すべてを整理してみてください。

ロビンソン： コンテンツ制作者との仕事を成功させるためには、あなたが本当に理解し、敏感でなければなりません。潮の満ち引きのように、世の中には自然な流れというものがあります。1ヶ月間は集中して、その後は一歩引いてみましょう。

最大手のソーシャル・プラットフォームに1つだけお願いするとしたら、それは何ですか？

バーマン： YouTubeの動画を、公開後に編集できるようになったら素晴らしいですね。

ロビンソン： Instagramで、ゲームのライブストリーミングをそのプラットフォームに組み込んで欲しい。Instagramではすでにゲームが主流です。もし、クリエイターにそのような機能を提供すれば、Instagramという製品にとっても、それを利用するクリエイターにとっても、真のゲームチェンジャーとなるでしょう。

伝統的なハリウッドのセレブで、最もソーシャルメディアでの存在感があるのは？

ロビンソン： タイラー・ザ・クリエイターはどうですか？彼は生身の人間であり、本物だと思います。

バーマン： Molly Simsは、お母さんたちに向けて、憧れと実現可能性のバランスを取りながら、実にクリエイティブな活動をしています。

フィリペリ： Lil Nas X.ほどインターネットを得意とする人はいないわね。

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