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なるべく明るい乳がん日記27束の間言葉を交わす幸福

〜前回のあらすじ〜
3回目の抗がん剤投与後、副作用に悩まされつつも私は日曜劇場『VIVANT』にどハマりしていた。なんの前情報もないまま「日曜劇場枠だし」という信頼と実績のみで見始めたところ、その壮大なスケールと謎多きストーリーにすっかり心を奪われ、毎週欠かさずリアルタイム視聴すべく、放送開始前までに全ての家事を夫と総出で片付け、テレビ前に待機した。
視聴後はあの曲が頭の中に延々鳴り響き全然眠れなかったがあのおもしろさには代えられない。副作用も含めた日常のあらゆる人類のストレスをエンタメは掻き消し生きるパワーを与えてくれるのだ!(前回こんなことはひとつも書いていない。)

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【TC療法4回目の投与日】
今回で投与は最終回。血糖値も測るので朝食は抜き。お腹をキュルキュル鳴らしながらセルフ長距離運転で病院へ。

血圧は安定の低さ。なんと上が85。なぜ回を重ねるごとに血圧が下がっていくのか謎だがそれでも全然立ちくらみしない妙なところで強靭な私。それにしても低すぎるのでしばらく看護師さんと話してから再び計測するもののたいして変化なし。

痒みがあることを看護師さんに伝え、背中や腰の発疹が酷かったところを見てもらったけどこういう時に限って症状が治っているのはなぜだ。連日続く謎の咳もここでは出ない。なぜだ。病院で症状を伝えたい時に限ってその症状が出ていないこのありがちな展開に誰か名前をつけて欲しい。

「足が最近見えないつぶつぶを踏んでるんですけどこれなんでしょうねー」と言うと看護師さんから一言「痺れですね。」と返された。これ痺れか!!
全然わかってなかった。床がザラついてるのかと思ってた。

採血の結果を待つ間に婦人科へ行き、前回受診した時の結果を聞く。
「特に心配なし」とのこと。良かった〜!
年に一回定期的に検診を受けるだけで当面は良さそう。

朝食を食べてひたすら待ってやっと乳腺科の診察。
感染症対策の抗菌薬レボフロキサシン(ニューキノロン系)でアレルギーが出たので今回はオーグメンチン(ペニシリン系)という薬に変えることになった。

「アレルギーの出た抗菌薬の名前(レボフロキサシン)を覚えておくといいですよ。」と先生は言った。この薬でアレルギーが出たという情報は今後の自分を守る、役立つ情報なのだ。

同じように先生は以前「もし今度全身麻酔をする時には違う麻酔薬に変えられるように今回手術で使った麻酔薬の情報を提供します。」と言っていた。系統は違うけど同じような効果のある薬がいろいろとあるものらしい。

血液検査の結果は先生曰く「本当に抗がん剤治療中ですか?」ってくらい良く、今回も順調に投与できる運びとなった。よかった!

投与の準備をし、化学療法室へ。朝早く来てもいつも投薬はお昼を過ぎてからになってしまう。 ”あと何回おばちゃん” は「今日は診察がないから早く終わって帰れる!」とウキウキで午前中に投与を終えて帰って行った。

今回の先客は2人。ボブの人はいつも会う人でショートの人は初めて会う。いつもの流れで投薬を始める。途中ウトウトしたところで化学療法室にある小さい方のテレビから聞き慣れた歌が聞こえてきた。

”私は決して今を 今を憎んではいない”

この曲はーーー!!!

突然ガバッと起きた私に看護師さんはビックリしながら「らんまん見る?」とみんなで見やすいように大きい方のテレビのチャンネルを変えてくれた。ボブの人もらんまんを見ていて「今日ビデオ録ってきた!」と笑っている。「私もです!」と会話も弾む。嬉しい。

でも途中で薬剤師さんから説明を受けたりしてちょっと目を離した隙に突然田邊教授が解任されていた。え?どういて??(土佐弁)
ボブの人とも「え?今何があったの?」とポカンとなった。「家帰ってもう一回見よう!」と言い合いながらボブの人は投薬を終えて帰って行った。

持参したひざ掛けを手にポートから投薬を受けていたボブの人もまた長い道のりなのだろう。朝ドラの急展開を共有したこの時間がお互いに楽しい時間になっていたら嬉しい。私は嬉しかったし楽しかった。ありがとう!

誰かと他愛ない話をすることが本当に嬉しいし、いい息抜きになる。
ちょっと嬉しい気持ちで最後の抗がん剤投与を終え、帰宅する私だった。

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