見出し画像

マーダーミステリー気づき④ -ゲーム性と没入感は対立するのでは?-

※プレイヤーではなくゲームの話です

※私自身はマーダーミステリーにゲーム性を求めるタイプのユーザーです


よく推理重視とRP重視は対立するなりしないなり、そういう話題が出たり出なかったりしますが、マーダーミステリーについてはゲーム性と没入感は対立するのではないかと思ったしだいです。

たまにマーダーミステリーにはゲーム性が必須だという意見も見ますが、私は必ずしもそうではないと思っています。(とはいえ、私自身は制作者としてはゲーム性を入れるし、遊ぶ側としてもそれを求めるタイプです)

マーダーミステリープレイヤーには物語に入り込むことを好み、没入感を優先して求めている層がおり、そしてその需要も間違っていないと思っているからです。今後、物語性と没入感を重視したシナリオが増えていくのも自然な流れでしょう。

そもそも本家本元の中国が、そういう没入感を高めるために演出することに特化したお店が発展していって流行っていっているので、その『没入感』を全否定するのは正直ナンセンスだと思います。

じゃあゲーム性と没入感について、この二つの要素については対立するのではないかと思った理由ーーなぜなら、まず『没入感』について、それはプレイヤーの感覚にかなり依存する部分だからです。

どれだけ入念に制作者側がプレイヤーに没入感を与えようと演出しようと、プレイヤー側の受け皿――容量や感覚にマッチしていなければ、それを制作者側の意図する形では素直に受け取らないでしょう。

たとえば私は没入感を覚えにくい性質なので、おそらくUSJのホテルアルバートのレベルまでやってくれないと没入感を覚えることはないでしょう。(こちらのホテルアルバートの体験が包括型チケットではあったけれども単体でいうと5000円くらいだった気がする……)

※以下がホテルアルバートの簡単な説明です(参考までに)(ネタバレと書いてありますが致命的なものはないです)


じゃあゲーム性を突き詰めると、どうして没入感が削がれてしまうのでしょうか。それは人の持つ『勝ち負け』の感覚にこそ、その鍵が隠されているのではないかと考えています。

マーダーミステリーに『対立性』を持たせて(結果として)対人ゲームになるように構成すると、必ず配役によってはプレイ次第で『勝ち』と『負け』が出てきます。そもそも『犯人』と『犯人以外』で分けられる構成なら、犯人が逃げ切れば『犯人の勝ち』です。こちらの意見には「そんなことはない! 犯人が逃げ切ったからといって、その場で紡いできた物語があるんだから犯人以外は負けじゃないよ」と言う人もいるかもしれませんが、おそらく私が『犯人側』で『逃げ切ることができた』なら「どれだけきれい事を言って表面上つくろって、みんな楽しかったからいいよねと笑顔で締めくくろうとしても、無事に逃げ切った私は今回の卓で勝ったな」と口には出さないだけで思いますし、人によっては「犯人を当てられなかった。悔しい」と思う人も出てくると思います。雰囲気を壊さないように大人としてその場で口には出さないだけで、心の奥底では『勝ち負け』を意識しているユーザーもいるのではないでしょうか。

「物語を綺麗に紡いで没入感を高める努力をすればゲーム性があって実態は勝ち負けがあろうとも、人は気にせずに没入できる」は理想論できれい事かなと個人的には思います。あまりにユーザーに丸投げして責任のない言葉かなとは。人によってはどれだけ演出しようが実態として勝ち負けがあるなら、そこを気にしてしまうものは出てくるでしょうし、意識する人もいるでしょう。良くも悪くもユーザーに依存するのがマーダーミステリーなのですから。

もう少し詳しくいうと、おそらく『勝ち負け』を意識すると、没入感が削がれます。現実に引き戻されてしまうからです。おそらく日本のマーダーミステリーのユーザー層には「勝ち負けなんかにこだわらず、物語に浸らせて欲しい」というユーザーもいるんじゃないかと思います。そういうユーザーが「もしかしたら今回のゲーム、ほとんど他のユーザーに妨害されて何もできていない?」と気付いてしまえば、そこに意識が持って行かれてしまうのでは。さらに、もしゲーム性に特化するためにベースとなった仕組みが複雑だった場合、物語を理解するよりも、その仕組みを覚えることを優先しなければいけなくなるため、さらに没入感は削がれるでしょう。

さらにいうと『没入感』も『勝ち負けにこだわる感覚』もユーザーに依存する部分だからこそ、両立はかなり難しいし、対立するのではないでしょうか。これを解決するには少なくとも私のように没入感を覚えないタイプなら、USJのホテルアルバートのレベルまで金をかけなければいけないとは思いますが、果たして現実にそこまで可能なのでしょうか。たとえばオンラインで音楽やSEを追加したところで、その程度は配信などでもよく見るし、ゲームをたくさんやって配信や動画を見慣れている私にとっては、とくに没入感には繋がらないでしょう。

少なくともオンラインという点では私はマーダーミステリーを制作するにあたって、そこまでお金をかけられません。

もしかしたら、それでも両立については、できるかできないかといったらできるのかもしれませんが、そこはもう一つの必須パーツである『コスト』(もしくは人材)に依存するのが実態なんじゃないかなとも思います。そして正直、その点を見ても両立するのはかなり難しいのではないかと。

なんかごちゃごちゃ長く言っちゃったのですが。

結論をいうとマーダーミステリーにおいて『ゲーム性』と『没入感』を両立させるのは難しいと思ってます。両方ともユーザーの感覚に依存する部分だからです。そこを補填してそれでも両立させようとするならば『お金』がかかります。『時間』も『人材』もかかってしまうかもしれません。そういう点からしても個人でマーダーミステリーを制作するというのであれば、どちらに比重を置くかは最初のコンセプトのときに考えておく部分なのかもしれませんね。

※ちなみに私は推理作品好き界隈からきた人間なので『人狼』も『謎解き』も苦手です。とくに『謎解き』は中にはパズル要素があるため大嫌いです。(パズルがとくに嫌いであるため)それでもマーダーミステリーに惹かれてしまうのはUSJで遊んだ『ホテルアルバート』で味わった感覚を簡易的に楽しめるからなのだろうなとも。ついぞ先日遊んだ『ミステリーホテル』も没入感を味わえるミステリーで楽しかったです、レストランで探偵さんとして接してチヤホヤチヤホヤされつつ会話してもらったので。あくまで事件に関係する重要な鍵を持った登場人物になった上でミステリーを楽しむことができるので『マーダーミステリー』が好きなんだと思いました。かといって協力して推理したいわけではなく、あくまで腹に何かありそうな登場人物の一人になって、情報出したり引っ込めたり無駄に疑われたりしたいので。それこそ本当にミステリー世界の住人になって事件をときたいんだと思います。(なので犯人になったら勝率は高いけど推理したかったなあって思うのでした)

※そんな私だからこそ、マーダーミステリーの評価基準は没入感やゲーム性や推理云々より『ユーザーに対してわかりやすく、遊びやすくゲームを提供しているか』が大事なのでした…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?