あおり運転について

最近あおり運転について,うんざりするほど報道されています。立法による対応を求める声が安易に出ますが,本当に立法化すべきなのでしょうか。実際,自民党による改正検討の記事が出たことから,その危険性について書いてみようと思います。

1.「あおり運転」を言葉で説明できますか
そもそも,「あおり運転」とは何を指すのでしょうか。「2車線あるのに高速道路でピタッと後ろにくっついて何キロも走行し続け,車を停めると向こうも停めて怒鳴ってきた」などという例を挙げれば,「それは怖い!厳罰にすべきだ!」となるかもしれません。しかしたとえば,「制限速度80キロの1車線しかない道路を前の車が時速15キロで走り続けて,イライラする気持ちが募り,つい前の車に近づいてしまった」ということは誰にでもあることでしょう。この後者の行為も「あおり運転」なのでしょうか。後者の例を排除するような法律にきちんとなるでしょうか。運用で警察官が後者は絶対に立件しないと言い切れるでしょうか。曖昧な概念で立法化してしまうと,いつかそれは自分も処罰され得るということを十分に認識して欲しいと思います。

2.「あおり運転」は増えてるの?
仮にあおり運転の定義が決まったとして,立法で対応する以上は,立法すべきほどあおり運転が増えているとか,凶悪化しているなどの客観的資料が必要でしょうが,そのようなデータは本当に示されているのでしょうか?こういう話になると「あおり運転の定義が分からないからデータの集積ができない」という意見があるでしょう。では,そのような曖昧な概念で人を処罰してもいいのでしょうか?

3.現状の法律で十分対応できる
現状,いわゆるあおり運転に暴行罪を適用した裁判例もあったり,道路交通法でも十分対応ができる状況です。もちろん,あおられる側の恐怖はあるのでしょうが,自分もあおる側になる可能性は絶対にないと言い切れるのでしょうか。極端な例を挙げて立法化を叫び出すと,極端ではない例でもあおり運転として処罰される可能性が出てくるのです。

4.SNSへのアップも慎重に
最近,マナー違反や危険な運転についてSNSにアップする行為をよく目にします。仮に違法な行為を現認したのであれば,警察に言えば済む話であり,SNSへのアップする必要はありません。これを拡散する行為もあわせて,十分なプライバシー侵害行為だと思いますので,慎重に行動して欲しいと思います。