「契約書」はなんでいるのか。

「書面に残しましょう」「そんな必要ないよ。大丈夫。」というやり取りは,弁護士をしているとしばしば遭遇します。契約書はどうして作る必要があるのでしょうか。

まず,原則として,意思の合致があれば契約は成立します(一部の契約を除く)。そうであれば,契約書なんて作る必要ないとも思えます。しかし,契約書がなければ,どのような内容(金額や支払時期,支払条件など)の契約を結んだのか,事後的に第三者が見て分かりません。

契約書が重要になってくるのは,何らかのトラブルが生じた時であることが多いです。簡単な例を挙げると,「100万円でこれを買ったから100万円払う」と買主がいい,他方売主は「これは120万円で売ったのだから120万円払え」と言ってきた場合です。口頭で合意をしていたら,実際にいくらで売買契約が成立したか分からなくなります。

このように,契約内容に関する紛争を減らす(無くせるとは言っていません)ために,どのような内容で契約が成立したかを書面で残す必要があるのです。たとえ双方に信頼関係があろうとなんであろうと,双方で合意した内容であれば,それを書面に残すことに双方デメリットはないはずです。「書面に残さない」と言うような人は,書面に残したくないような理由があるのではないか,と思われても仕方ないでしょう。

このように,契約書を残す理由の大きな部分が「揉めた場合」であり,通常多くの契約は揉めることなく終わっているため,「まぁ残さなくても大丈夫だろう」と思ってしまうも理解できます。しかし我々弁護士は,揉めてしまった例を多く見ています。

このように,契約書に限らず,書面に残すというのは重要な意味があります。書面に残す以上,よく読まずにサインして「そんなつもりではなかった」と言っても通らないこともあるでしょう「書面に残す。残すからには内容をよく理解してから。」ということを心掛けたほうがいいと思います。