造花

22歳大学生。春から院生になります。

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22歳大学生。春から院生になります。

マガジン

  • 日記『わたしのもの(あなたにもあげない、あなたはいらない)』

    日記をまとめています。

  • 小説集〈ため息で自慰をする〉

    今まで書いてきた小説をまとめています。

  • 詩集『わたしという魔法をかけた嘘』

    詩をまとめています。

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【掌編小説】ラブドール

 抱かれるとき、私はたしかに空っぽな人形だった。空っぽな中に精子を注入されるから、体の芯からぐちゃぐちゃになって満たされた。でも現実は人形じゃなくて人間だから、子宮に注ぎ込まれた精子は命の自覚を持ちだして、私の中の卵子と結びつく。  お腹に耳を澄ませると、「この中の誰よりも速く走って僕は僕になるんだ」と意気込む精子と、「 あなたはあなたになるためにあなたじゃなくなるんだよ」 と制す私の卵子。それに応えるようにアフピルを飲むと、お腹の中にある命の出来損ないは着床せずに、亡骸とな

    • 夜中一生懸命書いていた手紙を翌朝読んで恥ずかしくなるみたいな、否定をしないうちに(日記24)

      明日の朝に目が覚めたら、今日の私を否定する私が起きるかもしれないから眠るのが怖い。 夜中一生懸命書いていた手紙を翌朝読んで恥ずかしくなるみたいに。 石橋を叩いて割ってしまわないように、わたしは時々宇宙に行く───のだけれど、 時々、大学へ向かって歩いている最中に、わたしの体を細胞レベルにまで感じることがある。 そうやってどこまでも(わたしでさえも)‘’現象の移動”でしかないことを知ると、「宇宙とか星とか見てると自分の悩みなんかちっぽけに思えてくるんだ」と笑う誰かとは真逆の、

      • プールの自由時間に何をしていた?(日記23)

        いつものように明日が来ることに対する緊張で眠れないので、プールの水底に沈んでいく感覚をイメージしていたけれど、結果として小学生時代のプールの時間のことを思い出していた。 クロールとか平泳ぎの練習を終えると、必ず最後に自由時間があったと思う(いいえ、誰でも?)。 あの時間にしていたことといえば友達と笑いながら水中鬼ごっこをしたり、1人でプールの奥深くまで潜ってその上に浮かんでいるクラスメイトの下を泳いだりしたことで、太陽の光が射し込んでキラキラした塩素臭い水の中で私は何よりも

        • 駆け抜ける馬であること──映画「哀れなるものたち」(原題:「Poor things」)を観て

          私も男の性器に股がって腰を振るとき、草原を駆け抜けて広がった世界へ飛び出していく馬になりたいと思った。 映画を観た後に色々なレビューを見たけれど、フェミニズム云々は私にはまだまだ力不足で(とはいえ、女が行き着く先はどんな女であろうと娼婦なのかなとは思ったりもした)、1番思ったことはこれだった。そしてこれを言葉にしたいと思った。 騎乗位というけれど、私自身が馬なんだと思う。 ほんでてっきり最後、将軍を解剖して死にかけのゴッドの脳を移植でもするのかと想像したけど、ヤギだったの

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        【掌編小説】ラブドール

        • 夜中一生懸命書いていた手紙を翌朝読んで恥ずかしくなるみたいな、否定をしないうちに(日記24)

        • プールの自由時間に何をしていた?(日記23)

        • 駆け抜ける馬であること──映画「哀れなるものたち」(原題:「Poor things」)を観て

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        • 日記『わたしのもの(あなたにもあげない、あなたはいらない)』
          22本
        • 小説集〈ため息で自慰をする〉
          3本
        • 詩集『わたしという魔法をかけた嘘』
          2本

        記事

          心の底の方がゆっくりと冷えていくうちに、遠ざけていた話(日記22)

          ↑画像のように、今わたしの胸の奥にある心の底の方が、どんどん冷えていく感覚を思い出しています。 友人の話を聞いて、「まぁいいんじゃない」と言ったら、 「他の友達に言ったら、「考え直した方がいいよ」と言われたから、あなたがそう言ってくれて安心した…」 と言われた。 私は、否定する気持ちがただ失せているだけなのだと思う。 というか、友人とか知り合いの話に対して踏み込む気力がそこまでないのだと思う。 ……ってなるのはなんだか久しぶりで、久しぶりな私に再会した。 そこまで親しくも

          心の底の方がゆっくりと冷えていくうちに、遠ざけていた話(日記22)

          【掌編小説】outside the oasis

          『Outside the oasis』  あなたは【オアシス】に入って、その中にいる仲間たちとミラーリングをして楽しむ。私の入れない【オアシス】に入って、その中にいる仲間たちとミラーリングをして楽しむ。そしてあなたは、【オアシス】の仲間の呼吸でマーキングされた服を着る。  スモークまみれの箱の中を覗いても、私には何も見えない白昼夢。自分の楽しめないことで楽しめる彼らがうらやましくて、何かの銘柄だとか、誰かも吸っていただとか、何ミリがどうだとか、私の知らない話をしているその

          【掌編小説】outside the oasis

          【小説】性愛と情愛

          『性愛と情愛』  あたたかい太ももが足の先に触れて、自分の指がひどく冷えていることを知る。  上半身を起こして隣を見ると、素性の知らない男が裸で眠っていた。安心しきった顔で、無防備に枕によだれを垂らして。  ああ、今日もまたコレだ。  二日酔いで痛む頭に手をあてて、記憶の糸を手繰り寄せる。けど、何も覚えていない。何も覚えていないけど、自分の胸につけられた唇の痕と、ベッドの上に散らかった下着と、裸の自分がすべてを物語っていた。  静かに布団をめくり、服を着て荷物をまとめ

          【小説】性愛と情愛

          卒論を提出した後の空白を埋める作業と、心鏡(こころのかがみ)について(日記21)

          つい先日卒業論文を提出し終えて、Twitterで締切直前に阿鼻叫喚している人達を観測して(見えないものではなく、とても見えるもの)、私は来年からも論文を書くから“最後”と言っている人達からスっと離れて、画面をよくスクロールした年明けの夜。 就職する人達(ありがとう)が一気に解き放たれたように(純粋な)自由になっている姿と、私の周りにはまだこれから院試を受ける人達の姿とがあって、その狭間に私がいる。 (挟まれているわけでも、ゆらゆらと漂っているわけでもなく) いつだって少

          卒論を提出した後の空白を埋める作業と、心鏡(こころのかがみ)について(日記21)

          【詩】孤ー独(コード)

          声に塗れた星空を見上げれば、 薄暗闇色のキャンバスは 虚構【星】の散らし寿司 それをまた「綺麗だね」ってだれかの声、声、声、 だから星空は〈綺麗〉という記号コードになる。 弧ー独、孤ー独、弧ー独…… (流れ星みたいな涙がつー) 「ほら、あれが夏の」 「あれがデネブアルタイルベg」 虚構【星】と虚構【星】をつないで また新しい虚構【星座】をつくる声、声、声、声声声声声声声 雁字搦めになったわたしは  誰かと見ているはずなのに居場所がない それじゃ孤独になりますね

          【詩】孤ー独(コード)

          【詩】入水願い

          人の声が、昨日さそうそうかわいいえっあるやんやまざきあーぜったいやっぱりあのざわざわがやがやざわざわがやがやって言葉はバラバラな音の集まりになって私の存在をかき消していって、耳は壊れる。私はそう、とことん劣ってるわけで、ズブズブ沈んじゃって────大講義室は海だった。  私の男を今にも寝盗っていきそうなあの子のキャハハとか、大勢の前で堂々とスピーチしてみせるあの子の野太さとか、私のいない遊びの約束を目の前でするあの子のイタズラとか、机に突っ伏した私をちっぽけにしていく音が交

          【詩】入水願い

          浸りたいわけじゃない罪の償い方を教えてください(日記20)

          数年ぶりに父の誕生日におめでとうのメッセージを送ったときの、迷子センターの放送を自覚したこと、途方もない夕暮れの中を歩いていくことの、暖かさと冷えた指先を知らされる時間にありました。 中途半端なことをしているんだ、と思ってそれならじゃあ大きくどちらかに傾けばいいと思っても、これから優しくあろうとしても、完全に過去は許せないのなら、そちらに傾いてもどちらにせよ中途半端なのではないかと思います。 それでも、傷つけ続けることができず、このアパートの家賃も大学の学費も、父のお金で生

          浸りたいわけじゃない罪の償い方を教えてください(日記20)

          そんなことで?腕を切る(日記19)──ミサイルが落ちてくる恐怖に怯えること

          初めて腕を切ったのは中学1年生の秋だった。 その日、日が暮れるまで友達と下駄箱で話し込んで、積もる話に満足して帰って家の扉を開けたら、兄が「帰ってきた!!」と大声でリビングから飛び出してきた。 そのとき、日が暮れても帰ってこない娘を心配して母が血相を変えながら学校にも電話していたことを知った。 私は友達と積もる話をしてすっかり満足して帰ってきたものだから、そんなことになっているとは微塵も思っていなくて驚いて、娘の無事に心底安堵して、ちゃんと帰ってきなさいと叱ってきた母親との

          そんなことで?腕を切る(日記19)──ミサイルが落ちてくる恐怖に怯えること

          【エッセイ】不幸とか不幸とか不幸とかをつめこんでふやかしたらハッピーセット

           朝食会場でオムレツを作り続けるシェフの永久機関。精液にブラックライト。存在をかき消していく音姫。机に頬をくっつけて眺めると、空に傾いていくキャンパスの芝生と校舎。  最近、視界に映るものすべてに意味づけをしてしまって、かといって目を閉じても、形ではない事象や過去に思いを馳せてぐるぐるととりとめもないことを考えてしまう。それこそ、シェフの腕で回される卵液みたいに。きっとこいつらは今の私を私たらしめるもので、剥がれていく指の皮のように、この紙の上に落とされて然るべきなのだと思

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          私の信じていたものが見当違いだったとき(日記18)

          こんばんは。お体にお気をつけてくださいね。 私の信じていたものが見当違いだったとき、そんなもんだよと気づける力があることを知った。 一日に何度も、何度も画面をスクロールしていると、指先には風を吹かせる力があるんだと思う。 このくらいの時期って1番エアコンの調節が難しいのか知らないけど、図書館は暑くて空気が“終”になっていたし、校舎は鳥肌が立って目が覚めるくらいには冷えていた。なので、バスに乗って心地いい場所へ帰ったのだけど、バスに次から次へと(ドンドコドンドコ)部活の見知

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          百合のような、幻想美の、あの子の灰色(日記16)

          泉鏡花は幻想美の世界を築いたそうだけど、あなたにとっての幻想美とはなんですか? って 自分に聞いてみたとき、多分真っ先に思い浮かべるのは彼女のこと。誕生日に手紙とプレゼントを発送し合う彼女のこと。 この先にいるのは誰なんだろうとふと思いながら、それでも手紙を書き続けている時間は中学を卒業して別々の高校へ入学したあの時からもう始まっていて、最近東京に帰省したときに会ってそのことを伝えた。 自分が書いている相手は中学時代の彼女でもなく、中学時代一緒に過ごした彼女をさらに、も

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          リストカット(またの名をあみだくじ)の跡が浮かび上がるとき(日記15)

          リストカット(いつでもあみだくじができる)は、誰につけられた傷なんだろう。 その跡が浮かび上がるとき、早稲田駅の精神科に向かって電車に揺られていたあの夕方の時間を思い出すけど、私は病名をつけてもらいに通っていたのかもしれないと思う。 初めてもらった精神薬はクエチアピンとロゼレムで、きっと私は重症ではなかった。でも私の精神についた傷が公式に認められた気がして酷く嬉しかったし、そのどうしようもなさがあの頃の少女性(少女性とでも言っておけばかわいくなると思ってるだろ!😡)(その通り

          リストカット(またの名をあみだくじ)の跡が浮かび上がるとき(日記15)