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したいことがないなら何もしないこと

夜になったら灯りを消す。窓辺に座り、涼しい夜風に身を浸す。
何もしない。そうして身体が眠たくなるのを待つ。

眠たくなるまで本を読むなんてしない。といって音楽を聴くでもない。

それをしたいわけじゃないから。
僕がしたいのはただ「眠りたいな」とちゃんと思ってから眠ることだから。


僕がやるべきは、眠たくなるまで何もせずにいること。

近ごろはそうやって「したい気持ちになるまで空白のままでいること」をしている。

そしてそれが、すごく豊かで穏やかで、幸せだと感じている。


きっかけは春先のあの日。

予定が急きょキャンセルになり、この後の時間がぽっかり空く。さて何をしよう、と考える。

行きかったあの店に行こうか。気になっていた動画を観ようか。早く寝る、散歩する、ギターを弾く…

やってみたい(はずの)ことリストを見返しても、なぜか今は何にも惹かれない。


ああそうか、と思う。心が動かないのが当たり前だ。

僕が考えていたのは「何をしてこの空白を埋めようか」ということだ。

「この空白を埋めるのにちょうどいいものは何だろう」ということだからだ。

だから動画だってギターだって、あのお店だってピンとこない。今はそれをしたいわけじゃないからだ。

なのにギターを選ぶから「何か違うな」となってしまう。

それってすごくもったいない。弾きたい時なら最高に楽しいギターが、行きたい時なら最高の出逢いになるお店が、空白を埋めるために浪費されている。

ギターも映画も、本もお店も、暇つぶしとして、便利な穴埋めとして使ったら可哀想だ。そのものの魅力を殺してしまう。

「空白を埋めたい」と「〇〇をしたい」を、ちゃんと分けよう。


僕はただ、暇なのであって、空白を埋めたいだけ。

「したいと思えることが欲しい」というだけ。

僕が本当に思っているのは「この空白を埋めたい」だから、別の何をしたって「空白」とのズレが際立ち空しくなる。

「したいことがほしい」のだから、それがやってくるのを待つしかない。

空白を埋めるためには、別の何かをするではなく「空白そのもの=何もしないこと」で自分を満たす。

今は「何もしない」ことこそが、自分の気持ちを大切にすることかもしれない。

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でも「暇=空白=寂しい」を埋めたくて、したいわけじゃない何かに手を出して、それでますます空しくなること、結構ある。

このまま家に帰りたくなくて、ほしいものは無いのに売り場を回って買い物してみる。
やることないから(寝たいわけじゃないけど)早く寝ようとする。
お腹は空いていないけど時間だから何か食べようとする。
期限付きのクーポンがもったいないから(大してほしくも必要でもないけど)買っておこうとする。
パートナーがほしいから相手をつくろうとする…

暇は寂しいと似ていて、暇は不安を呼ぶ。寂しさと不安を何とかしたくて、本当はしたいわけじゃない言動を選択する。


本当に叶えたい感情とズレたことをすると空しくなるから、自分の感情の正体には敏感でいたい。

「空白を埋めたい」と「〇〇をしたい」は違う。
「何もしたくない」と「したいことがない」も違う。

あの春の日は、結局「何もしない」を選んでみた。窓辺にイスを置いて、ただ夕暮れが進むのを見ていた。

するとしばらくして、自分の中にやってきたのです。水でも飲んでみようかな、とか本でも読んでみようかな、とか。そんな小さな自発性。忘れていたことをふっと思い出したかのように。


僕らは「飽きる」という力をもっているから、そのままじゃいられないから、絶対に何か湧いてくる。そんな人間だって自分を信頼している。

だから、したいことがないなら、堂々と何もしない時間を送れば良い。
そのままじゃいられないから。絶対に何か「これやってみよう」が訪れるから。

どんなに小さくても「やってみよう」で起こした行動は、自分の世界を明るくするから。

そうやって
「暇=寂しい」を「暇=豊か」に移せたら、絶対に幸せな気がした。

あのときの、森の中でのあの感覚も、こういうことだったのかなと思う。


幸せな自分であるためのステップ。僕は一つひとつ進んできた。

まず、自分の感覚を聞こうとすること、
次に、嫌だと感じることをしないこと、
それから、やりたいと思ったことをすること、
そして今、やりたいと思うまで待つこと。

自分はこれで良いと思う。「何もしない」も選択する。ちゃんと待つ。
そうして「これをやってみたい」「これかもしれない」に出逢えたら、ひとまずそれを大切にしてみる。

そうやって探しながら、これからの日々も生きていくこと。


「やってみたい」が訪れるまで、ちゃんと待つよ。大丈夫だよ。

僕は僕に、そう言ってあげよう。

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