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感情こそが運命だから、心のあわいを分かり合えるあなたとこそ僕はいっしょにいたい

「自分と人の感じ方はちがうから伝え方には気をつけなさい」

そう言われて育ってきた。だから言葉を選ぶ。自分を分かりやすくする。心の全部は話さない。

そのことに、実は小さく傷つき続けてきたのではないか?

相手の感じ方を気にして、話しすぎていないか時間を気にして、伝わる言葉かどうかを気にして、気を損ねないかを気にして。心のすべてを言えた経験なんていくつあったろうか。物足りなさを、口にできていない思いがあることを、僕はずっと感じ続けてきた。


全て話すことすらしていないのだから、理解することはどれほど先にあるのだろう。

毎日やり取りしているのに「ちゃんと分かる」ことすら僕らには難しくて。だから否定も反論も的外れだ。そもそも「分かる」ができないのだから。


「今」の裏には「今まで」のその人があって、これはどういうこと?とかどうしてそう思うの?とか言葉を交わすなら、僕はその人の「今」を分かるためにこそ、そうしたい。

話を先に進めるためでもなく、深掘りするためでもなく、あなたの今を、その分厚さとともに少しでも感じるために。「ああ、こういうことなんだね」って心から言えることが、僕が「分かる」ということだ。
(そう言えた瞬間に、否定や反論なんて出ようがない。)

「分かる」という、ただそのことが遠いから、心の内を話してくれることが僕は嬉しい。ぐちゃぐちゃで良い、うまく言葉にならなくて良い、矛盾して良い、この前と変わって良い。

どうしてこんなことまで話せるんだろう。あなたにならこんなことも話せると思って。笑わないと思って。どんな結論も受けとめてくれると思って。

運命というものがあるのなら、そう思える人を言うのだと思う。


だってそうじゃないですか。

緑色が好きだったり、甘いものが好きだったり、空が好きだったり、僕はなぜだかそういう風にできていて。

その僕が緑を選び、甘いものを選び、空を見ることを選んで、僕の人生はできていく。

その僕があなたとの時間を好きだと思い、「あなたになら」「あなたとなら」と思う。なぜだかあなたにだけ感じるその特別な気持ちで僕は動くのだから、感情こそが運命みたいなものじゃないですか。

僕は僕で、この僕でしかいられなくて、話し方だって関係の築き方だって、このやり方しかできない。このやり方だから、それによる嬉しいも悲しいも当然起こる。でも悲しいは不幸とは違うから、僕はそれを受けとって、とことん自分でやっていく。


ぴったり言葉にはならない心を、絶対に言葉足らずになる心をあなたが見せてくれる。その時はうまくできなくても後で「実はあの時こうだった」「本当はこう言いたかった」って教えてくれるなら、どれだけだってそこから歩み直せる。

話を蒸し返すって悪いことみたいだけど、そうやって正しくあなたに伝えたい、分かり合いたいとしてくれるのだから、これほど嬉しくて美しいことはないじゃないか。

心を教えてくれることは、ものすごく嬉しい。

僕らはなかなか分かれないから。でも進む日々の中でうまくやり取りを済ませて、心の細部を実は置きざりにしているから。めったに出せない物足りなさが山ほど募ってしまっているから。

「なかなか分かれないこの人をちゃんと理解したい」という気持ちは、ただそれだけで、ものすごく美しい。

そういうしかたで愛してもらえたら、それ以上のしあわせは無いじゃないかと思う。

ぜんぜん言葉にできなくて、めったに分かれないこの不完全さを、愛おしいとすら思う。

生活の、苦しくて汚くて色味のない部分だって、やっていけるんじゃないかって思う。


今まで色々、我慢してきたよな。でも世界に手加減したってしょうがないよな。

嘘をつけない僕の欲求があるから、やるしかないよなと思うのです。いずれ来る別れの時、あなたの輪郭がはっきりしているほど傷は深くなり、他の誰にも埋められない。けど、痛みが耐え難くなるとしても今あなたの形をもっと刻んでおきたい。いつかあなたを思い出してなぞる時、懐かしく温かく痛む傷。それが今、僕があなたと関係を結ぶということだ。

そうしていつか連絡を取ることもなくなって、会っても一時間の近況報告で。そんな未来はきっとくる。けれど別れのその時に、この先だってできるなら続けたいよねと願えるような、そんなひたすらに素敵な関係を築こう。

心の通り動けば、いずれ結果も受けとれる。

あなたが誠実につくってくれた結びに、できる限りの潔さで応えたい。


あなたのおかげで出逢えた自分で、きっと僕はこの先ちゃんと幸せになります。お互い幸せに生きていきましょう。

あなたのおかげで出逢えた自分で、こんな風に思える。なんて贅沢な人生だ。


「東京」

愛されていて欲しい人がいる
なんて贅沢な人生だ

見慣れた街 見慣れない人だらけなのに
僕らお互いを知ってる 良いところも 逆も
かじかんだ手 終電はあと少しなのに
僕ら思い出話が 尽きないくらいだな

出会いは 少しずつ 名前を変えていく

好きな人 愛しい人 偶然も 今呼ぶなら運命
見つけられた 歓びを 笑いあえたら 幸せと名付けよう
愛されたい 心の奥 望む僕にも 愛する人
愛されていて欲しい人がいる なんて贅沢な人生だ

重ねる歳 建前と本音との間に
僕ら思い出話を 置いてきたこともある

出会いは 少しずつ 形を変えていく

会いたくて 会えない人 運命と呼べなかった恋も
手が離れた 冷たさを 思い出せたら 優しさへと変えよう
愛されたい 心の奥 望む僕にも 愛する人
愛されていて欲しい人がいる なんて贅沢な人生だ

このまま このまま 
愛して生きていたいよ
このまま このまま
ずっと

生きる人 今日 生きる人に 歌いたい 歌が 生まれるんだ
見つけられた 歓びも 手が離れた 感覚も 込めて 
愛されたい 心の奥 望む僕にも 愛する人
愛されていて欲しい人がいる 届いて 聞こえて

あなたへ

なんて贅沢な人生だ

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