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【1/4】請負契約と準委任契約のはざま

主旨

どんな差分があるのか実態を掘ってみよう

背景

ざっくり請負契約

ITプロダクト開発における請負契約とは「受発注の関係性の中で、期限内の成果物の納品と引き換えに対価が支払われる」ものです。
「これをつくって」と発注され、「これをつくるね」と受注し、「これできたよ」と納品し、「これできてるね」と検収し、「これの代金ちょうだい」と請求し、「これの代金はらうよ」と振込される流れです。

これこれこれこれ言ってますが、その「これ」がもし違うものだったら、困るんですよね。
「これ」というものがどんなものなのか、微に入り細を穿つ表現でドキュメント化し、受注側と発注側が「これ」を単一のものとして特定しなければなりません。
さもないと「こういう認識だった」「いや、こちらはこういう認識だった」と、齟齬が生じるたびに調整が必要とされます。

論理的には、請け負った内容に齟齬があると発覚した時点で、請負契約が反故になるべきではありますが、慣習的にはそうなりません。
話し合いや対価の調整で解決されるからです。

まとめると、「『これ』の制作やいついつまでの納品を請け負ってね」と「『これ』の制作やいついつまでの納品を請け負ったよ」が取りかわされるのが請負契約です

ざっくり準委任契約(2020年3月末日まで)

いっぽう、準委任契約では「これ」が定義されるのを必須としません。

ゆだねまかせる契約なので、どんなものをつくるかの事前検討が委任できます。
ゆだねまかせる契約なので、管理系実務(勤怠管理など)が委任できます。
ゆだねまかせる契約なので、事業所(執務環境)の確保が委任できます。

逆さにすると、以下のようにも表現できます。
ゆだねまかせる契約なので、「これ」がどんなものになるか事前に把握できないかもしれません。
ゆだねまかせる契約なので、残業指示は違法行為となり賠償責任を負うかもしれません。
ゆだねまかせる契約なので、「オフィスで働いて」と依頼ならできても、法的に無効で拒否されてもしかたありません。

ただし、ほったらかしの完全フリーダムではありません。
善管注意義務があり、被委任者は「こういうやり方したら失敗するからだめよ」と、委任者に求められなくとも注意や忠告をしなければなりません。

まとめると、「相談ベースでいろいろやっていこう」と「ヤバいこと起きそうなら忠告するから、任せてくれ」が取りかわされるのが準委任契約です。

改正民法の発効(2020年4月1日)後のことについては別途書きます

実態

さて、上記は事実を述べたものであり、かつ理想論でもあります。
すなわち、そうではないケースも生じているのを、経験もすれば見聞きもします。

まず請負契約においてざっくりとしか「これ」が決まっていない段階で受発注が成立する(契約締結)ことがあります。
なにを請け負い、なにを請け負ってもらったのかわからない請負契約です。

いっぽう準委任契約では、たとえばSES(システムエンジニアリングサービス)において業務の依頼でなく指示が実態としておこなわれるケースがあります。
同ケースは一般に偽装請負と呼ばれる違法行為で、それを予防するようSES企業の経営者や営業担当が顧客との交渉に取りくんでいますが、中にはそうでないヤバめな企業もあるようです。

ちなみに、私自身なさけないことに、偽装請負+裁量労働制+勤怠管理放棄の状況で非モテコミットするという、わりとやってしまいがちなコンボを経験しましたw(詳細後述)

思惑の交錯

そもそも、どうしてそういう不適切な事態が生じるのかという疑問があり、ネット上ではさまざまな意見交換がなされています。
私見を述べると、超〜〜単純な話で、意思決定する人やリーダーが勉強不足なのです。
端的には、PCをつかったことのないサイバーセキュリティ担当大臣が話題になりましたね。

少々話がそれます。
反感を買うかもしれませんが、私にとっては「受発注の関係はよくない」「あくまでパートナー」という表現があまり好もしく感じられません。
以下3つ、論拠を挙げておきます。

1.
契約に基づく関係を契約なしに語ることは非合理的

2.
悪質な受注者もいれば悪質な発注者もいる

3.
toBビジネスは、発注者の得る利益を増大させる投資案件を受ける事業

上記各項のあとに「…そして『パートナーかどうか』は論理的に問われていない」を加えて読んでいただくとわかりやすいかもしれません。

なにが言いたいのかというと、勉強不足な人と積極的にかかわるメリットをデメリットが上回るなら、それを排斥するよう動いても不思議ではないよね、ということや、役に立たない「パートナー」に支払いつづけていられるか?という疑念です。

できるだけ相互に多大な利益が得られるよう、条件をすりあわせることこそ肝要ですが、思惑が明に暗に交錯するか相互に勉強不足で、結局違法行為に及ぶのかなあと推測しました。
さもなくば「断ればいいじゃん?」に対してどう返答されるのでしょうか

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