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記事抜粋44

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さて、労働法を度外視したビッグモーターの「生殺与奪権」なんてのが世間を騒がしていますが、日本の政府自体、おかしくなってませんでしょうか?

  • 元々「私人間における人権保障」はかなりいいかげんでした、日本。

  • バレないと思ったら企業は結構やりたい放題でした(バレると思うとビビりまくってくれるので都合が良いところも有りました♡)

現行の憲法と自民党の憲法改正案

【日本国憲法第1条】天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であって、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。

【自由民主党:日本国憲法改正草案(平成24年4月27日(決定))第1条】「天皇は、日本国の元首であり、日本国および日本国民統合の象徴であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。」

  • 元首?なんの復活?

【日本国憲法第12条】この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

  • 「公共の福祉」とは「他人の権利も同じように尊重すること」です。

【自民党憲法改正案第12条】(国民の責務)この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。

  • そう言えば「納税の義務」だけはどんどん重くなってきてますね。

  • 「公共の福祉」が削除され、代わりに「公益及び公の秩序」が入りました。

  • 「公益及び公の秩序」ってなんすかね?

他にも有ります:憲法に「家族」「緊急事態条項」追加の意図は―自民党草案を読む - Yahoo!ニュース

家族条項は話題になりましたね:旧統一教会側と自民党、改憲案が「一致」 緊急事態条項、家族条項…濃厚な関係が影響?:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)「勝共連合」と自民、改憲草案に多くの一致点 今後の論議に影響か | 毎日新聞 (mainichi.jp)

気になるのは最高法規(97条)の「基本的人権は冒すことのできない永久の権利」が削除されていることです。

基本的人権

①自由権 保障する対象によって、精神的自由権、人身の自由、経済的自由権に分けることができる。精神的自由権とは、国家権力から個人の精神の解放を保障する権利で、具体的には、思想および良心の自由(憲法19条)、信教の自由(憲法20条)、集会・結社および表現の自由(憲法21条1項)、学問の自由(憲法23条)、検閲の禁止・通信の秘密(憲法21条2項)が規定されており、明治憲法下におけるような思想のために罰せられるということはなくなった。さらに、個人の身体がなにものからも、とくに国家権力から自由であることは、人間の最小限度の要求であって、憲法はこの人身の自由を保障するため多くの保障を設けた。そこには、奴隷的拘束および苦役からの自由(憲法18条)と法定手続の保障(憲法31条)、および被疑者・刑事被告人の権利(憲法37条)が保障され、厳しい要件を定めて国家権力の濫用を制限している(憲法32条~39条)。また、近代市民社会の確立のためには、経済の自由が確立されなければならない。日本国憲法も経済的自由権を保障したが、同時に自由主義経済の無制限な放任は社会の腐敗を招くので、この見地から公共の福祉による制限も認められている。職業選択の自由(憲法22条1項)、財産権(私有財産制)の不可侵(憲法29条)のほか、居住・移転の自由、外国移住の自由、国籍離脱の自由(ともに憲法22条)が、沿革的に経済的自由権に属するとされる。

②参政権 国民が政治に参加する権利をいい、具体的には議会議員の選挙権・被選挙権のほか、直接民主制的諸権利や請願権がこれに属する。日本国憲法は、国民主権を原理とし、政治のあり方を終極的に決めるものは国民であるとする。そこで、「公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である」(憲法15条1項)と規定しているが、すべての公務員を選定・罷免することは実際には不可能なので、国会議員および地方公共団体の長と議員の選定権、最高裁判所裁判官の国民審査、地方公共団体の長と議員などの解職請求を認め、他の公務員は議会もしくは行政部によって選ばれることにしている。このことは代表民主制のたてまえから正当化されるが、代表民主制はともするとその機能が鈍化し、国民各層の要求や希望が伝達されにくいという弊害を生じやすいので、その通路を開く意味で、請願権(憲法16条)が規定されている。公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障し、かつ、選挙における投票の秘密を保障している(憲法15条3項・4項)。

③社会権 日本国憲法は新しく社会権を規定している。生存権、教育を受ける権利、勤労の権利などがこれである。まず、生存権の保障のため、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を規定(憲法25条1項)、その具体化として、生活保護法、国民健康保険法をはじめとする社会諸立法によって生活の福祉の増進が図られている。次に機会均等な教育を受ける権利と義務教育の保障が規定され、小・中学校の9か年の義務教育についてこれを無償としている(憲法26条)。また、生存権の実質的な保障のためには勤労の権利の確保が必要であり、憲法で規定(憲法27条)するとともに、国家は労働の機会提供について、職業安定法、雇用保険法などを制定し、労働基準法を設けて勤労条件に関する基準を定め、児童の酷使などを禁止している。なお、権利と同時に義務を負うことをも規定している。さらに、使用者の経済的優位に対抗して契約の実質的平等を確保するために、「勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利」(憲法28条)を保障している。勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権(争議権など)を労働三権という。

④基本的人権と法令審査権 明治憲法のもとでは、裁判所は法令審査権(違憲立法審査権)をもっていなかったから、憲法の保障する自由権を侵害する法律ができたとしても、裁判所はそれをそのまま適用するほかはなかった。これに対して、日本国憲法ははっきり裁判所の法令審査権を認めている(憲法81条)から、かりに国会の多数で基本的人権を侵害する法律をつくったとしても、それに関連した裁判において、裁判所はそれを違憲としてその適用を拒否することができる。ただし、人権の種類によって違憲審査の基準は異なり、精神的自由は経済的自由より厳しく審査されるし(二重の基準の理論)、社会権の審査については国会の意思が尊重されることが多い(立法裁量)という違いがある。それでもこれによって基本的人権の保障は確実なものとなったといわれる。最高裁判所が「憲法の番人」であるといわれるのは、裁判所がこういう審査権によって、憲法の規定が国会によって破られるのを防ぐ役割を担っているからである。

さて、日本国民は「肉屋を応援する豚」ですかね?


[1] ヒンドゥー教

  1. さて、最近、インドが「イスラム教に対するのと同じくらいヒンドゥー教にも気を使ってくれ」言うてるので、ヒンドゥー教のお勉強を。

  2. ヒンドゥー教の聖典「ヴェーダ」は古代インドのヴェーダ語で書かれている。ヴェーダってそもそもバラモン教の聖典でしたわな。先住民を征服したアーリヤ人がバラモン教とカースト制度を発明したのでした。紀元前15世紀頃のこと。ヴェーダ語はその後5-6世紀頃にはサンスクリット語になってますわ:サンスクリット - Wikipedia。ウィキには「狭い意味でのヒンドゥー教は、バラモン教から聖典やカースト制度を引き継ぎ、土着の神々や崇拝様式を吸収しながら徐々に形成されてきた多神教である。紀元前2000年頃にアーリア人がイランからインド北西部に侵入した。彼らは前1500年頃ヴェーダを成立させ、これに基づくバラモン教を信仰した。紀元前5世紀頃に政治的な変化や仏教の隆盛があり、バラモン教は変貌を迫られた。その結果、バラモン教は民間の宗教を受け入れ同化してヒンドゥー教へと変化して行く(バラモン教もヒンドゥー教に含む考えもある)。ヒンドゥー教は紀元前5 - 4世紀に顕在化し始め、紀元後4 - 5世紀に当時優勢であった仏教を凌ぐようになった。その後、インドの民族宗教として民衆に信仰され続けてきた。」とあります。「修正バラモン教」と考えておけばよさそうです。

  3. 以上。

  4. まあ、ヒンドゥー教も尊重しておきましょう。俺はオッペンハイマーはサンスクリット文学が好きだっただけで映画もそれを表現しただけだと思うけどね。

[2] スズキ、ソニー、日本信号、ヨネックスも 成長続けるインド市場に進出、しのぎを削る日系企業 (msn.com)

  1. インドの巨大市場を狙い、日系企業もさまざまな事業分野でしのぎを削る。そこにはどんな魅力や苦労、展望があるのか。現地のビジネス事情を探った。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。

  2. 「スズキの車を見ない日はない」とインド滞在経験者は口をそろえる。それもそのはず。この10年間、スズキのインド国内での新車販売台数シェアは4~5割超で推移。「2台に1台がスズキ」という状況なのだ。ピークは1997年度の65.6%。「3台に2台近く」になる。シェアは下がったのね。スズキがインド市場で驚異的なシェアを占めるに至った背景には何があるのか。原点は約40年前の82年にさかのぼる。東京・帝国ホテルの梅の間。インド政府の「国民車構想」を託された調査団と面談していた、スズキの鈴木修社長(現相談役)は不意に立ち上がり、腕まくりしながらホワイトボードに工場のレイアウトを描き始めた。インド側の要望を踏まえた細かな運営方法などを社長自らが熱く語る姿は、調査団に強い印象を残した。それから1カ月足らず。インド国営自動車会社の海外パートナーにスズキが選ばれる。同年10月にはニューデリーで両社の合弁契約書を調印。翌83年末までに、安価で高品質なインドの国民車となる第1号車をリリースする使命がスズキに課された。最初に立ちはだかったのは現地工場の建設だ。建設現場には重機が一台もなく、すべて人力の作業で進んでいた。見かねたスズキ側が機械の導入を提案したが、インド側は全く耳を貸さない。それにはインドの国内事情があった。当時、インドでは仕事量に対して人口があまりに多かった。このため、建設現場もあえて機械化せず、労働者をできるだけ多く雇用するのが国の政策方針だったのだ。最大のハードルは日本の「労働文化の移植」。全員が同じ制服を着て、社食に集まって食事をするのには強い抵抗を示す社員が少なくなかった。この課題克服に寄与したのは、日本の工場での研修制度だ。2006年までに1772人のインド人スタッフが参加し、「日本式」の定着につながった。83年4月に予約受け付けを開始した1号車の「マルチ800」は第1次の予約受け付けで13万台近くを受注し、大成功を収めた。これが販売と修理を担う販売店をインド全土に築く足がかりになった。国営合弁会社の民営化に伴い、スズキは02年、同社の経営権を取得。07年に社名を「マルチ・スズキ・インディア」(以下、マルチ・スズキ)に変更した。現在、販売店数は3640店(今年3月末)。この販売・サービス網がインド進出成功のカギと話すのは、マルチ・スズキの前社長で、スズキの鮎川堅一副社長だ。「都市部だけでなく、地方の村レベルにまで張り巡らせることで、お客様が安心してスズキ製品をお使いいただけるようにしました。また、インドは地方によって言語も異なるため、地元に精通した駐在販売責任者も採用しています」09年度にはインドでの年間生産が初めて100万台を突破、日本国内生産の95万台余を上回った。22年度のインド国内での自動車販売台数は約164万5千台。近年はインドを輸出拠点としても活用しており、中でも注力しているのはアフリカだ。「今後人口増が見込め、車を個人所有する需要も増えつつある」(鮎川副社長)のが理由だ。22年度にインドから輸出した約26万台のうち、約15万台がアフリカ向けという。ほー、アフリカにも。

  3. ■新車販売が世界3位 そのうち1位になるやろ。インドは昨年、乗用車と商用車を合わせた国内新車販売台数が約470万台に達し、初めて中国、米国に次ぐ世界3位に浮上した。このまま成長が続けば、インドは30年度に現在の約3倍の1千万台の大台に乗る、との予測もある。鮎川副社長はインド市場をこう展望する。「今年、インドは人口世界一となり、各種統計によると、中間所得層の比率は大きな伸びを示し、経済発展に伴い所得水準もさらに高まることが見込まれ、将来的に自動車市場の成長は続くとみています。そのため生産能力の増強を図っており、30年度には現在の約2倍となる年間約400万台を目標としています」EV(電気自動車)についても24年度に投入し、30年度までに6モデルを展開予定。価格を抑えるため、EVに必要なリチウムイオン電池をインドで生産するという。これは良いニュースだな。だが、できるか?

  4. インドのエンターテインメント事業分野でも、日本企業が存在感を高めつつある。「世界で10億人と直接つながる」というビジョンを掲げ、インドの放送業界でトップの座を目指すのは、ソニーグループだ。同社は21年、インドで放送・映像配信事業を手がける子会社と、現地の放送大手の合併を発表。この合併完了後には、インドのメディアネットワーク市場の約25%を握り、米ディズニー傘下の放送事業者を抜いて最大手となる見込みだ。多言語社会インドで動画配信サービス普及のカギとなるのは、各地域文化に根差したコンテンツとローカル言語対応とされる。同社は、合併を通じて多様なコンテンツを確保するとともに、自社開発したAIによる自動字幕生成技術を駆使し、視聴者の掘り起こしを進めている。今後急成長が見込まれるインドのエンタメ市場について同社広報部はこう話す。「絶好の機会の場であるインドにおいて、メディアネットワーク事業のポジションをさらに強固にすることで、感動を広げ、ソニーグループの成長にもつなげていきたい」

  5. ■今からファン増やす インドの国民的スポーツといえばクリケット。だが近年は、様々なスポーツが普及している。中でも盛り上がりを見せるのが、国際大会でもインド選手が台頭しつつあるバドミントンだ。スポーツ用品メーカーのヨネックスは16年にインド製造子会社を設立。翌17年からは現地でのバドミントンラケットの製造も開始した。インドでの今後の展開について同社の廣川亘常務取締役海外営業本部長は言う。「今後もバドミントンの競技人口の増加が見込まれる中、インドのトップ選手の多くが当社のラケットを使用しているブランド認知を生かし、より多くのインドのお客様に“Made by Yonex”の高品質のラケットをお届けし、『ヨネックスファン』の拡大に努めたい」今年6月に開設した第2工場の稼働に伴い、今後3年をめどに現在の生産規模の3倍を目指す。

  6. インドの交通インフラの分野にも日系企業が進出している。2015年に現地法人を設立した日本信号だ。同社は日本の鉄道信号技術の国産化と発展を担い、1928年に設立した老舗の信号機メーカー。現地法人では主に、インドメトロの鉄道信号システムの営業活動やプロジェクト履行を担っている。魅力は成長力と市場の大きさだ。インドメトロ市場は2020年時点の700キロ(13都市)から2025年には1700キロ(50都市)を目指して拡大中という。国際事業部の村上聡部長は「これまでは、各都市のメトロ公社に向けた事業を行ってきましたが、今後はインド国鉄向けにも鉄道信号システムを導入する事業を推進していきたい」と意気込む。インドの国土面積は日本の約9倍。インド国鉄は6万キロ以上の軌道と7千以上の駅を保有する。一方、日本国内の鉄道路線の総延長はJR・私鉄を合わせ約2万7700キロ。スケールの違いは歴然だ。村上部長はインドでのビジネスをこう展望する。「国鉄の信号システム近代化や各都市メトロの整備など旺盛なインフラ投資が見込まれるインド現地に根差したビジネス展開を図り、弊社の安全で安心なシステムをインド全土へ提供していきたい」(編集部・渡辺豪)

  7. さて、世界の経済エンジンになるかな?

[3] インド三連発だ:いよいよ「日本を抜き去る」インド市場、アップルやアマゾンなどテック大型投資まとめ(ビジネス+IT) - Yahoo!ニュース

  1. ゴールドマン・サックスの調査によると、現在GDPで世界5位のインドだが、2025年には日本を抜き、さらに2075年には米国をも超える見通しだ。この巨大市場の可能性を見据え、アマゾンやグーグル、アップル、マイクロンなど米テック・半導体大手企業によるインド投資が一層活発化している。米企業による「インドシフト」の現状を探ってみたい。

  2. 米国の「インドシフト」と半導体大手の大型投資 2023年6月末のモディ首相による米国訪問をきっかけに、米国の対インド投資が加速の様相だ。政府間では、米国からインドへ、ジェットエンジンの技術移転やドローンの提供、医療や宇宙分野における協力合意がなされ、官民における両国関係が深化したことが示された。米国がインドを重視していることは、モディ首相の米国訪問が「国賓訪問(State Visit)」であることから見てとれる。米国の国賓訪問とは、外国国家元首による最高レベルの訪問形式であり、公式訪問(official visit)とは性質が大きく異なる。国賓訪問は、友情と同盟の意を表すものといわれている。インドのEcnomic Timesによると、モディ首相以前に米国を訪問したインド国家元首は、計9人いるが、このうち国賓訪問の待遇を受けたのは、ラーダークリシュナン大統領(1963年6月)とマンモハン・シン首相(2009年11月)のみだったという。モディ首相の訪問により、米国とインドの間で数多くの合意が締結された。1つは、米GE AerospaceとインドHindustan Aeronautics(ヒンドスタン航空機:HAL)による、軽戦闘機HAL Tejas Mk2で用いられるジェットエンジンF414のインド国内共同生産に関する覚書の締結だ。また両国の国防省が共同でイノベーションプラットフォーム「INDUS-X」を開始することを発表するなど、国防分野で関係強化をアピールする動きが顕著だった。また、インドが米主導のアルテミス合意に参加し、2024年の国際宇宙ステーションへの共同ミッションでNASAと協力することで合意しており、宇宙分野でも関係が強化された格好となる。ロシアの兵器生産能力はどんどん落ちていくからな。

  3. また、米国の半導体メーカーであるマイクロン・テクノロジーがインド・グジャラート州に新しいチップ組み立ておよびテスト施設を建設する計画を発表。同社による投資額は、最大で8億2,500万ドル(約1,200億円)に上るという。なお、このプロジェクトには、インド政府とグジャラート州政府が27億5,000万ドルを投じる計画であるともいわれている。さらに、米半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズも同国に新たなエンジニアリングセンターを開設する計画を発表、今後4年間で4億ドルを投資する計画だ。まずは後工程から。その後の産業をインドに持ってくるためにも良いだろう。

  4. アマゾン、アップル、グーグルなど対インド投資まとめ モディ首相は米国訪問時、GAFAMなどのテック大手企業のトップらとも会談しているが、ここでもいくつかの成果を得ている。アマゾンのアンディ・ジャシーCEOは、モディ首相との会談後、インドにおける取り組みを強化する意向を発表、今後7年間でインド投資を倍増する計画を発表した。アマゾンはこれまでにインドに約110億ドルを投資。これに加え、ジャシーCEOは、2030年までにさらに150億ドルを注入することを明らかにした。投資資金の大部分は、インドにおけるAWSの拡大に充てられる見込みだ。アップルのティム・クックCEOもモディ首相との会談後、インド市場を「非常に大きな機会」と評価、数カ月前にインドでアップル公式ストアを開店したことに続き、同国における取り組みをさらに拡大する意向を明らかにしている。実際、モディ首相との会談前、アップルは数週間にわたり、支払いサービスであるApple Payの導入に向けインド当局との協議を実施、近々インド準備銀行の特別部門インド決済公社(NPIC)との協議を行う段階にあると報じられている。インドでは、すでにウォルマートのPhonePe、Google Pay、Paytmがシェアを争う競争激しい市場となっている。一方、グーグルのサンダー・ピチャイCEOもモディ首相との会談後、インドのデジタル化ファンドへの100億ドル投資に加え、グジャラート州のGIFTシティ(グジャラート国際金融技術都市)にフィンテックセンターを開設する計画を発表、引き続きインド市場にコミットする姿勢をアピールしている。ITが一番早いだろうね。

  5. インド経済が米国を超えるのはいつか? 政府間の関係強化に加え、テック大手による投資拡大計画も相まって、米国におけるインド市場への関心はこれまでにないほどに高いものとなっている。このタイミングで、金融大手ゴールドマン・サックスもインド市場の可能性を示すレポートを発表した。ゴールドマン・サックスが2023年7月6日に発表したレポート「How India could rise to the world's second-biggest economy」によると、インド経済は2075年に52兆5,000億ドルとなり、米国(51兆5,000億ドル)を抜く見込みだ。この時点におけるインド経済は、日本(7兆5,000億ドル)の7倍、欧州地域(30兆ドル)の1.7倍に相当する規模になると予想されている。人口増に加え、インドの技術革新、資本投資の拡大、労働生産性の向上が主な成長要因になるという。同レポートの中で、インド担当エコノミストであるサンタヌ・セングプタ氏は、インドの経済成長において、特にカギとなるのが、従属人口比率であると指摘。次の20年でインドの従属人口比率が域内で最低水準になることが経済成長に大きく寄与するだろうと述べている。従属人口比率(dependency ratio)とは、労働人口に対する非労働者の比率。従属人口比率が低い状態であるというのは、若い働き手が高齢者を支える構造になっているということであり、経済が成長しやすい状態だ。セングプタ氏は、労働市場への参加を促進することで、巨大な人口の潜在力を引き出すことが可能だと指摘する。これが製造業、サービス業の拡大につながり、さらなる雇用を生み出すサイクルが生まれ、経済成長に寄与するという。労働力の移動や物流の活性化が見込まれる中、道路や鉄道を含むインフラ整備も重要になる。インド政府は、インフラ投資促進に向け、州政府への50年間無利子ローンプログラムを引き続き実施する計画だ。2045年頃から爆走すると予想。

  6. 労働人口だけではないインド成長の決定的な要因 豊富な労働人口だけでなく、インドの技術や投資も経済成長を押し上げる要因となる。インドのテック産業の活発度合いは、インドの非政府貿易協会であるNasscomが発表する数字にも色濃くあらわれている。Nasscomによると、インドテック産業における収益は2023年末までに2,450億ドル増加する見込みだ。特にIT、ビジネスプロセス管理、ソフトウェア製品の成長が顕著であるという。資本に関してゴールドマンは、従属人口比率の低下や所得増加により、インドの貯蓄率は拡大することが見込まれ、これにより投資を促進するための資本供給基盤が整備されるだろうと予想している。ゴールドマンによると、インド経済は、その成長の60%が主に内需と投資によるもので、域内で多く見られる輸出依存型経済とは異なり、国内需要によって牽引されている。2023年のGDP予測では、インド経済は前年の3兆3,800億ドルから3兆7,000億ドルに拡大する見込み。日本の4兆4,000億ドル、ドイツの4兆3,000億ドルに迫る規模だ。インド政府は、2025年に5兆ドル、2047年に26兆ドルをターゲットとしており、国内で大規模なインフラプロジェクトを進めている。S&Pなどは、インドが日本やドイツのGDPを抜き、世界3位の経済になるのは2030年頃と予想しているが、米国によるインド投資の加速で、その時期は早まるかもしれない。まずは巨大な内需が引っ張るが、当然、その次には輸出が来るでしょう。

[4] ナチスを支持した「偉大な哲学者」の決定的な“間違い”とは何だったのか…マンガですっきり解説 (msn.com)

ユダヤ人迫害などに代表されるナチス・ドイツの残虐行為。その行為は、当時のドイツの国家元首であったアドルフ・ヒトラーの独裁として片づけられがちだが、背景にあったのが「大勢の人々の無関心と同調」だ。安易な同調や無関心は自分で考え、判断する機会を失わせる。責任の不在がいずれは全体主義を生み、社会を腐敗させる。その構造について警鐘を鳴らしたのが、マルティン・ハイデガーの執筆した『存在と時間』。難解で有名な同著をわかりやすく紹介したNHKのテレビ番組「100分de名著」の放送回を、コミック化したのが『まんが!100分de名著 ハイデガー 存在と時間』(扶桑社)だ。

  • 最初に学校で、次に会社で社畜として「バカになる訓練」を続けている日本人には特に耳の痛い話です:

20世紀を代表する哲学者であり、全体主義の恐ろしさを説いたハイデガーだが、実は彼は後年、ナチスに加担した人物としても有名だ。師匠であるフッサールをはじめ、弟子にもハンナ・アーレントやハンス・ヨナスなど、彼の周辺にはユダヤ人が大勢いたにもにもかかわらず、なぜ、当代一の哲学者がナチスに加担してしまったのか。この疑問は、アーレントとヨナスという二人の弟子にとって、戦後の課題となり、研究が進められていった。

  1. 『まんが!100分de名著 ハイデガー 存在と時間』の監修を勤めた哲学者・戸谷洋志さんはこう語る。「第二次世界大戦中、フランスを経由してアメリカへ亡命したアーレントは、ハイデガーの『死への先駆』という概念が、全体主義へと人々を向かわせる傾向と関係があると考えました。ハイデガーは『存在と時間』のなかで、人間は世間のなかにいる限り非本来的であり、自分の本来の生き方を取り戻すには、自分自身の死と向かい合わなければならない、と訴えました。その際、ハイデガーは、人間が他者との関係から切り離され、孤独にならなければならないと考えていました。つまり、孤独こそが人間のより望ましい姿なのであり、他者との関係はそれを濁らせるものだ、と語られたのです」ただ、アーレントは、孤独をよしとする考え方は、かえって人々を単一の集団に飲み込まれやすくすると考えた。なぜなら、他者とかかわるからこそ、私たちは一人一人が別の存在であり、かけがえのない個性を持っていることを知るからだ。「主著『人間の条件』のなかで、彼女はこうした人間の多様さを、『複数性』という概念で説明します。人々の個性は、決して孤独のなかで得られるものではなく、他者の前で自分の意見を語り、他者とともに行動することで、初めて姿を現すのです。彼女はそうした営みのうちに、政治のあるべき姿としての公共性が立ち現れると考えました。反対に、こうした複数性を否定し、人間を単一の存在として支配しようとする思想が、全体主義にほかならないと気が付いたのです」

  2. ◆みんながそうしているから仕方ないと考えることで、責任を逃れる 一方、弟子のひとりであるヨナスは、パレスチナを経由してアメリカへ渡り、ハイデガーの「決意性」という概念に問題を見いだした。決意性とは、『存在と時間』の最重要概念の一つであり、「良心の呼び声」に耳を傾けることによる本来性の回復を意味する。「人間は、世間のなかで生きているときには、空気を読んで『みんな』に従って生きています。その状況では、自分が何をしても、それは『みんながそうしているのだから仕方ない』というロジックで、自分の責任を免れることができます。そのとき人間は無責任になるのです。しかし、良心の声に耳を傾けることを決意し、そうした無責任さに陥るまいとする人は、自分の人生を自分の人生として引き受けることができます。ハイデガーはそこに、人間の本来の生き方を見いだしました」

  3. ◆ときには「良心」も間違える ところがヨナスは、このような発想には問題があると考えた。「ハイデガーの主張をそのまま理解すれば、自分が決意さえしてしまえば、何であっても本来の人生として肯定されてしまう、ということになります。それがたとえナチスに従うという決意であったとしても、です。『存在と時間』には、良心に従って決意せよ、ということは書かれていても、どんなことに対して良心を感じるべきなのか、どんな決意をするべきなのか、ということは書かれていません。だからこそ、良心そのものが誤り、間違った決意をする可能性を、そもそも払拭できないのです」

  4. ◆人間の道徳性に対する洞察の欠如が、ハイデガーの敗因だった ヨナスは、それゆえにハイデガーはナチスに加担することを決意し、自分の本来性を見誤ってしまった、と解釈した。「しかし、良心とはそもそも、内容のないものではないはずです。主著『責任という原理』のなかで、ヨナスは、人間は誰しも生命の傷つきやすさに対して責任を抱く、と述べました。もしも人間に良心の呼び声が語りかけてくるとしたら、それは傷ついたもの、弱いものを守らなければならないときです。人間の道徳性に対する根本的な洞察が欠けていたがゆえに、ハイデガーはナチスに加担してしまったのだ──ヨナスはそのように解釈します」

  5. 後年、アーレントもヨナスも、ハイデガーに対して痛烈な批判を寄せている。だが、両者に共通しているのは、ハイデガーが見落としていた論点にこそ、彼を全体主義へと向かわせてしまった落とし穴があった、ということ。「アーレントにとっては他者との関わりに対するハイデガーの過小評価が、またヨナスにとっては倫理に対するハイデガーの無頓着が、まさにそうした論点でした。両者は、それぞれ違ったところに目をつけながら、『存在と時間』の不足を補い、そこから全体主義に抵抗しうる政治や倫理のあり方を模索したのでした」監修/戸谷洋志 構成/日刊SPA!編集部

  6. 社会に身を置いたうえでってことですかな?

[5] しつこいな、湯之上(笑):国策・日の丸連合・半導体新会社「ラピダス」がお笑いでしかない理由…そもそもの問題として誰が半導体をつくれるのか (2023年8月4日) - エキサイトニュース (excite.co.jp)

2010年だったな、半導体死亡宣告。1997年の半導体敗戦以来、敗戦処理と言われながらよくもったよ・・・。その時が40 nmだったな。まあ、俺は2001-2010年を「日本エレクトロニクス最後の10年」と想定してその間に研究をやってしまおうと考えていたけど。ギリギリ間に合ったって感じ?
  1. 国家プロジェクトとされる半導体産業の促進に向けて、次世代半導体の量産を目指す新会社「ラピダス」が設立されたが、資金不足や経験不足といった問題が山積みだという…何が問題なのかを『半導体有事』(文春新書)から一部抜粋・再構成してお届けする。応募だけはたくさん有るらしいで。

  2. 半導体新会社ラピダスは「ミッション・インポッシブル」 はっきり言うやっちゃな・・・。これでできたらかっこええってことやけどな。まあ、できるか知らんけど。

  3. 2 0 2 1年のコロナ特需は終わりを迎え、半導体業界は不況に突入し始めた……と思っていたら、そんな不況を吹っ飛ばすビッグニュースが2 0 2 2年11月10日に日本列島を駆け巡った。同日夜7時のNHKニュースが、トヨタ自動車、デンソー、ソニーグループ、NTT、NEC、ソフトバンク、キオクシア、三菱UFJ銀行の8社が出資する半導体の新会社「ラピダス」が設立され、5年後の2 0 2 7年までに2 nmの先端ロジック半導体を量産すると報じたのだ。筆者はこのニュースにのけぞり、これはもはや暴挙を通り越して笑うしかないと思った。どう考えても“ミッション・インポッシブル”だからだ。筆者が“ミッション・インポッシブル”と考える根拠を具体的に示したい。それは大きく言って、次の4点になる。①誰が2 nmのデバイス設計を行い、誰が2 nmのプロセス開発を行うのか? 誰が2 nmを量産するのか?②EUVを手に入れて、使いこなせるのか? High NAをどうするのか?③先端半導体メーカーであるTSMC、サムスン、インテルが苦戦している最先端の半導体を、9世代もジャンプして生産できると思っているのか?④なぜ日本が2 nmを生産しなくてはならないのか?あとで解説してくれます。ラピダスはファウンドリーとは何かを分かっているのか? ラピダスは米IBMおよび欧州のコンソーシアムimecと技術提携することになった。しかし、それでも上記の問題は解決しない。一応、試作品くらいはできとんやから、そんなにボロクソ言わんでも・・・。imecもプロセス開発しとるし・・・。

  4. 半導体の微細化という「土台」 半導体の微細化は、1世代ごとに70%の割合で進められる。そして、70%の微細化を行うと、さまざまな問題が、まるでパンドラの箱を開けたように噴出する。微細化を進めるときの課題は、トランジスタの構造だけではないのである。これらの問題を論じる前に、多分に感覚的ではあるが、半導体の微細化を進めるとはどういうことかを述べたい。あらゆる問題を一つ一つ解決していかなければ、新しい世代の半導体は量産できないのである。半導体の微細化を進めるということは、ピラミッドを構築することに似ているかもしれない。ピラミッドの上に行けば行くほど、石を積むことが難しくなるからだ。しかし違いもある。それは、半導体の微細化が進むほど、積み上げなければならないものが多くなるため、半導体の微細化というピラミッドは逆三角形型になるという点だ(図6─7)。その逆ピラミッド型の「土台」において、2 0 2 2年12月末時点で、TSMCが3 nmに到達し、サムスンは3 nmの歩留りが上がらず5/4 nmに留まっており、インテルが10 nm~7 nmから先に進めずにいる。そして、日本は40 nmレベルで停滞したままだ。このように、逆ピラミッド型の「土台」を形成しながら進める半導体の微細化において、ある微細化の世代をスキップするということは、あり得ない。というのは、ある技術世代の「土台」なしには次の世代に進むことができないからだ。だからIBMは一応試作品くらいはできとんやから・・・。imecもEUVプロセス開発しとるし・・・。

  5. ラピダスには微細化の「土台」がない ラピダスには、米IBMと、欧州のコンソーシアムimecが技術提携することになった。しかし、40 nmレベルから3 nmまでの技術の蓄積が全くないラピダスに、誰が何を協力しても、2 nmの量産はできないだろう。その理由を一言でいうと、ラピダスには微細化の「土台」が全くないからだ。「土台」を一つずつ積んできたTSMC、サムスン、インテルですら、さらに微細化を進めることに、大変な努力を強いられている。にもかかわらず、何の微細化の「土台」も持っていないラピダスが、9世代も微細化をスキップして、いきなり2 nmのロジック半導体を量産することはできるはずがない。これは、火を見るより明らかなことである。だからIBMは一応試作品くらいはできとんやから・・・。imecもEUVプロセス開発しとるし・・・。

  6. 筆者から一つ提案がある。いきなり2 nmはいくらなんでも無理だから、2 0 2 3年前半に32 nm、後半に28/22 nm、2 0 2 4年前半にFinFETの16/14 nm、後半に10 nm、2 0 2 5年前半に7 nm、後半に5 nm、2 0 2 6年前半に3 nm、後半にGAA構造の2 nmと、開発を試作でいいから、一歩一歩、着実に「土台」を積み上げていったらどうだろうか。その方が確実であるし、計画通りに進めば、もしかしたら、「2 0 2 7年に2 nm」を量産できるかもしれない。「急がば回れ」ともいうし、「急いては事を仕損ずる」ともいう。ラピダス関係者は、今一度、計画を考え直すべきである。まあ、練習は必要かもね。以上、半導体の微細化を進めるとはどういうことかという概念を説明した。ありがとやんした。

  7. 以下では、ラピダスが米IBMや欧州imecの協力を得ながらも、2 nmのロジック半導体を量産するために、具体的にどのような問題があるかを論じる。お願いしまーす。

  8. 誰が2 nmを設計し、プロセス開発を行うのか? ラピダスでは、2 nmのロジック半導体のデバイス設計、レイアウト設計、プロセス開発、量産を誰が行うのか? もっと簡単に言うと、2 nmを開発し、量産する技術者をどうするのか?ラピダスの出資企業の中には、半導体メーカーとして、ソニーとキオクシアが含まれている。しかし、ソニーは、CMOSイメージセンサに貼り付けるロジック半導体について、TSMCに生産を委託している。また、NANDを生産しているキオクシアは、SSDに必要なロジック半導体のコントローラの設計と生産を外注している。その生産を行っているのは、恐らくTSMCである。したがって、ラピダスの出資企業の中には、ロジック半導体の設計、開発、量産ができる半導体メーカーは存在しない。唯一、ソフトバンク傘下のARMが、プロセッサコアのセルを提供することができる。これだけが、出資企業の中でポジティブに評価できる点である(ただしソフトバンクはARMを米エヌビディアに売却しようとして失敗した。したがって、ソフトバンクが将来を見据えてARMを傘下に置いているとは思えない)。つまるところ、ラピダスが直面する最初の壁は、「技術者をどうするのか?」ということになる。ファウンドリーのラピダスは基本的に前工程だけを行うが、2 nmの場合のプロセスフローは、5 0 0~1 0 0 0工程どころではなく、1 5 0 0~2 0 0 0工程以上になるのではないか?言うても、ぶっちゃけ(1)成膜、(2)リソグラフィ、(3)エッチングの三つだけどな。(4)CMPも有るか。でも、ほぼ配線引き回し工程だしな。 この前工程には、どのくらいの技術者が必要なのか? 筆者が日立製作所でDRAMを開発し、生産していた時、そのプロセス開発部には1 0 0人以上の技術者がいた。20年以上前のDRAMで1 0 0人以上いたわけだから、最先端の2 nmのロジック半導体のプロセス開発には数百人(しかも精鋭集団)の技術者が必要になるのではないか。そして、その前工程のプロセス技術には、3階層がある。まあ、頭数は要るか・・・。

  9. プロセス技術に必要な「要素技術者」「インテグレーション技術者」「生産技術者」

  10. 要素技術者 半導体のプロセス技術には、成膜、リソグラフィ、ドライエッチング、洗浄、検査、CMP(化学的機械研磨)、熱処理、イオン注入などがある。あー、細かいこと言えばもうちょっと有ったな。それぞれには、専門のプロセス技術者が十数~数十人必要である。微細加工技術のリソグラフィとドライエッチングには、最も多くの技術者を必要とする。

  11. インテグレーション技術者 要素技術を組み合わせて、希望する半導体の性能を実現するためのプロセスフローを構築する技術をインテグレーションと呼ぶ。半導体メーカーにおいては、最も有能な技術者がインテグレーション技術者になる。筆者が現役の頃は、その素質がある者が、10年ほど経験を経て一人前のインテグレーション技術者になっていたように思う。そのインテグレーション技術者も数十人規模で必要になるだろう。

  12. 生産技術者 インテグレーション技術者が構築したプロセスフローで試作を行って、シリコンウエハ上に1個~数個程度の半導体が動作したら、そのプロセスフローを量産工場に移管し、高歩留りが得られるように徹底的に改善が行われる。ここで活躍するのが生産技術者である。

  13. 以上の要素技術者とインテグレーション技術者の合計で数百人以上必要であろう。また、量産工場には1 0 0 0人単位の生産技術者が必要になるだろう。

  14. IBMには要素技術者とインテグレーション技術者がいる。「だから、ラピダスにはそれほどの技術者は必要ない」というわけにはいかない。ラピダスがIBMの技術を受け取り、そのプロセスを改良して試作ラインで流せるようにするためには、やはり数百人の技術者が必要である。さらに、IBMには量産工場がないので、ラピダスは1 0 0 0人規模の生産技術者を準備しなければならない。まとめると、選りすぐりの要素技術者とインテグレーション技術者が数百人、量産を立ち上げる生産技術者が1 0 0 0人規模で必要となる。その技術者はどこにいるのか?たしかに半導体死亡宣告の2010年から13年経過しとるから、もうほとんどおらんやろね・・・。

  15. 世界的な半導体技術者不足の問題 世界的に半導体工場が建設ラッシュとなっている。それとともに、半導体技術者をどうやって確保するかは世界的な問題となっている。例えば、日本政府が誘致して建設が着工されたTSMC熊本工場では、1 7 0 0人の社員が必要とされており、その募集が始まっているが、思ったように技術者が集まっていない。これは28/22 nmだけど、3 nmより先はみなとみらいも集めとったね。声かけてくれてありがとう。でも、要素技術とは言え俺様にプロセス技術をやれと?しかもmaxで1,100万円/年は安いわ -- それだったらセミリタイアで今の仕事続けるわ(笑)。2016年の値段が1,200万円だからね。2023年には1,500-2,000万だからね。習近平が要らんことせんかったら中国行こうかと思ったわ(笑)。そもそも、日本には半導体技術者が何人いるのだろうか。また、かつて日本が半導体の世界シェアの50%超を独占していた頃には何人の技術者がいたのだろうか。たしかに半導体死亡宣告の2010年から13年経過しとるから、もうほとんどおらんやろね・・・。さらに、一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、2 0 2 2年5月18日に発表した提言書『国際競争力強化を実現するための半導体戦略』のなかで、JEITAのステアリングメンバー8社において、今後10年間で3.5万人の半導体人材を必要としている、と述べている。それはどのようにすれば実現できるのだろうか。なお、上記の8社とは、東芝デバイス&ストレージ、マイクロンメモリジャパン、キオクシア、ソニーセミコンダクタソリューションズ、ヌヴォトンテクノロジージャパン、三菱電機、ルネサスエレクトロニクス、ロームで、ラピダスはこの中には入っていない。

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半導体プロセスはウザいんだよ・・・:10nmで苦戦するIntel、問題はCo配線とRuバリアメタルか:湯之上隆のナノフォーカス(9)(1/5 ページ) - EE Times Japan (itmedia.co.jp)

今は10 nmでつくってて、今年7 nmが出るんだっけ?出たんだっけ?そのくらいの関心しか無いけどな。

  1. Intelは2016年以降、今日に至るまで、10nmプロセスを立ち上げることができていない。一方で、配線ピッチは同等であるはずの、TSMCとSamsung Electronicsの7nmプロセスは計画通りに進んでいる。ではなぜ、Intelは10nmプロセスの立ち上げに苦戦しているのだろうか。2019年02月18日 11時30分 公開 [湯之上隆(微細加工研究所),EE Times Japan]

  2. 待望されるIntelの10nmプロセス Intelは2016年以降、今日に至るまで、10nmプロセスを立ち上げることができていない。それが原因となって、メモリ不況を引き起していると考えている(関連記事:「Intel 10nmプロセスの遅れが引き起こしたメモリ不況」(2018年12月7日))。その概略は、以下の通りである。Intelでは最先端の微細加工プロセスでPC用プロセッサを量産し、1世代遅れたプロセスでサーバ用プロセスを量産してきた。ところが、2016年以降、10nmが立ち上がらないために、サーバ用がPC用の14nmに追い付いてしまった。さらに、Intelは2018年に、Appleの「iPhone」用の通信半導体ビジネスをQualcommから奪った。これも14nmで量産することになった模様である。以上の結果、14nmの量産工場が過密状態となり、プロセッサを十分供給することができない事態となった。その結果、PC用やサーバ用を当てにして製造されたDRAMとNAND型フラッシュメモリが宙に浮いてしまい、市場に溢れ、価格暴落を引き起こしてしまった――。それが筆者の分析である。

  3. 人類が生み出すデジタルデータは指数関数的に増大しており、東京五輪が開催される2020年には44ZB(ゼタバイト=10の21乗)になると予想されている。Amazon、Microsoft、Googleなどのクラウドメーカーは、これらビッグデータをストレージして、あらゆるビジネスに活用したいと思っているはずだ。ところが、Intelの10nmが立ち上がらないために、最先端のサーバが十分供給されず、データセンターの建設が滞ってしまった。クラウドメーカーが予定通りデータセンターを建設し、半導体業界がメモリ不況を脱するための解決策は、Intelが10nmプロセスを立ち上げ、プロセッサの供給不足を解消することにある。

  4. では、なぜ、Intelは10nmプロセスの立ち上げに苦しんでいるのだろうか? TSMCやSamsung Electronics(以下、Samsung)は、既に7nmの量産を手掛けている。Intelは、TSMCやSamsungより、微細化の技術で後れを取っているのだろうか? 本稿では、Intelが直面している技術的な問題について詳述する。その上で、Intelの10nmプロセスの見通しについて論じる。

  5. IntelはTSMCやSamsungより遅れているのか TSMCは2018年5月に、7nmプロセスの量産を開始したこと、そしてEUV(極端紫外線)リソグラフィを導入したバージョンの生産を2019年前半にも開始する計画だということを発表した(関連記事:「TSMCがロードマップを発表、EUV導入は19年前半」(2018年5月10日))。また、Samsungも2018年10月、「EUVリソグラフィを適用した複数の7nmプロセスチップをテープアウトした」と発表している(関連記事:「Samsung、EUV適用7nmチップ開発を加速」(2018年10月29日))。微細化の数字だけを見ると、Intelは10nmプロセスを立ち上げることができず、TSMCやSamsungは7nmプロセスによる量産に着手しており、Intelが遅れているように見える。ところが、微細配線のピッチでみると、Intelの10nmとTSMCやSamsungの7nmは、ほぼ同等であるという。従って、EUVの導入については確かにIntelがTSMCやSamsungに後れを取っているかもしれないが、微細化の水準について言えば、Intelが遅れているわけではない。むしろ、2017年から10nmプロセスの立ち上げに挑戦しており、その時点では、世界最先端を走っていたといえる。そのため、この問題を正確に言うと、「Intelは10nmの立ち上げに苦戦しているが、TSMCやSamsungはIntelの10nmと同じ水準の7nmの立ち上げに困っているという話が聞こえてこない」ということになる。この差は、どこから来るのであろうか?

  6. Intelの10nmプロセスとは Intelは2017年12月、サンフランシスコで開催された半導体の国際学会「IEDM」で、“A 10nm High Performance and Low-Power CMOS Technology Featuring 3rd Generation FinFET Transistors, Self-Aligned Quad Patterning, Contact over Active Gate and Cobalt Local Interconnects”のタイトルで発表し、世界で初めてコバルト(Co)配線を使ったことを明らかにした。配線引き回し工程やろ・・・。筆者は、2016年頃から、微細配線の材料がCuからCo、Ru(ルテニウム)、Mn(マンガン)などに変わるかもしれない兆候をつかんでいた。従って、この論文でIntelがCo配線を使ったことに注目した。Intelの上記論文によれば、M0とM1にCo配線を使用し、M2~M6の配線にはCu配線とCoキャップを使ったと書かれている(図1、図2)。しかし、バリアメタル材料についての記載はない。ここで、多層配線の構造が、バルク配線材料、バリアメタル、キャップから構成されていることを説明した上で、なぜ、CuからCoなどに配線材料が変更されなくてはならないのかを詳述する。

  7. 多層配線の構造とCu配線の限界 多層配線の構造を図3に示す。現在、ロジックチップの多層配線は、12層程度あり、配線および上下の配線間をつなぐビアを同時に加工するデュアルダマシンというプロセスで形成されている。その配線を形成する要素は、バルク配線、バリアメタル、キャップメタルの三つである。2000年頃までは、バルク配線材料としてアルミニウム(Al)が使われていたが、配線の微細化とともに配線抵抗が増大し、信号遅延が起きることが明らかになったため、Alより抵抗値の小さなCuが使われるようになった。Cuは絶縁膜中を拡散してしまうため、それを防ぐためにTa(タンタル)やTaN(窒化タンタル)などのバリアメタルを形成する必要がある。また、Ta(N)は、Cuと絶縁膜を接着させる役目も担っている。さらに、Cu配線のエレクトロマイグレーションを防止する効果などがあることから、キャップメタルを形成している。ところが、配線の微細化するにつれて、Cu配線およびTa(N)バリアメタルの限界が見えてきた。IBMの野上毅氏が2017年のVLSIシンポジウムで発表した資料によれば、Cu配線の微細化とともに、配線を移動する電子がCu配線のグレインバウンダリで衝突し、さらにTa(N)などのサイドウオールに衝突するために、抵抗値が増大し、信号遅延が避けられない事態となったのである(図4)。例えば、配線幅が20nmになると、配線の抵抗値は、Cuのバルク抵抗値の2.5倍以上になる。そして、この傾向は、配線の微細化とともに、より深刻さを増す。以上の理由から、半導体の微細化を推進するためには、Cuに変わる配線材料と、Ta(N)に変わるバリアメタルを探索することが必要となっていた。

  8. Intelは何に苦しんでいるのか? Intelは、10nmのM0とM1にCo配線を使うことにした。Coは、Cuより抵抗値が高いが、Cuのような巨大なグレインを形成しない。断面電子顕微鏡写真でCuとCoの配線を比較すると、その差は一目瞭然である(図5)。従って、配線材料にCoを使えば、電子衝突による抵抗値の増大を避けることができる。では、もう一方のバリアメタルの対策はどうしているのだろう? Intelは、IEDM2017の発表では、バリアメタルを明らかにしなかった。ところが最近、サンプル出荷されたチップ解析の結果から、Coを含有したRuを使っていることが漏れ聞こえてきた。そして、Intelが10nmプロセスを立ち上げられない原因には、信頼できる関係筋からの情報として、Co配線のCMP(化学機械研磨)における欠陥の問題および、Coを含有したRuバリアメタルのCMPがうまくいかない問題があると聞いている。では、TSMCやSamsungは、このような問題を、どう解決しているのだろうか。

  9. IBMが開発した巧妙なバリアメタルのプロセス IBMは、Samsung、GLOBALFOUNDRIES(GF)と、技術提携している。そのIBMの野上毅氏らは、非常に巧妙なバリアメタルのプロセスを開発した。その名は、“Through-Co Self Forming Barrier Process (tCoSFB)”という。恐らく、tCoSFBは、Samsungが7nmの量産に使うことになるだろう。また、GFについては、2018年8月に、「7nm FinFETプロセスの開発を無期限に延期する」「GFのこの決断を受けて、同社の顧客であるAMDは、7nmチップの製造をTSMCで行うという決定を下した」ということが報じられた(関連記事:「GLOBALFOUNDRIES、7nm開発を無期限停止へ」(2018年8月29日))。この結果、もしかしたら、TSMCもIBMのtCoSFBを使うことになるかもしれない。Intelには無く、Samsungに(もしかしたらTSMCにも)ある技術は、IBMが開発したtCoSFBである。また、IBMには、Intelが苦しんでいるCoのCMP技術もあると推測される。では、tCoSFBとはどんなプロセスなのか?

  10. tCoSFBとは IBMが開発したtCoSFBプロセスを、図6を用いて説明する。1)極めて薄いTa(N)を成膜する。このTa(N)は、薄すぎるため、所々、穴がある。しかし、密着材として機能する。次に、CoをCVDで成膜する。最後に、CuMnのシード層を形成する 2)Cuの電界めっきを行い、配線溝をCuで埋め込む 3)CMPで不要なCu、Co、Ta(N)を除去する 4)その後、アニールすると、Cuの中のMnが、Coを貫通して、Ta(N)の穴に析出し、絶縁膜の酸素と結び付く。これを「かさぶたプロセス(Scab Process)」と呼ぶ 以上の結果、極めて薄いTa(N)(穴はMnが塞いでいる)とCoのバリアメタルが形成される。tCoSFBの要点は、Mnが酸素と結び付きたがる特徴があること、そしてMnが(なぜか)いとも簡単にCoを貫通すること、にある。これ、予想できるか?できるわけないやろ。こういうところが有んねん、半導体プロセス。特に配線工程。さらに、tCoSFBによるバリアメタルによりCuの微細配線は、何と、Co配線よりも、配線抵抗が小さくなることを、IBMの野上氏が2017年のVLSIシンポジウムで明らかにしている(図7)。Samsungは(もしかしたらTSMCも)、IBMが開発したtCoSFBによるバリアメタルを用いたCu配線を使うことにより、微細配線の抵抗増大の問題を回避している可能性がある。

  11. Intelの10nmプロセス立ち上げの見通し 半導体業界が、2018年に突如訪れたメモリ不況から脱するために、Intelが微細配線の問題を解決し、無事に10nmプロセスを立ち上げることが待ち望まれる。Intelは2019年1月8日、「CES 2019」(米国ネバダ州ラスベガス)に先立って発表会を開催し、10nmで製造される次世代主力製品「Ice Lake」を今後数カ月の間に発表するとともに、量産出荷することを明らかにした模様である(笠原一輝『Intel、数カ月内に10nm製造の新CPU「Ice Lake」を量産出荷開始』、PC Watch、2019年1月8日)。同記事の最後には、「搭載製品は年末に登場する見通しで、例年のスケジュールだと、8月末にドイツで行われるIFAでPCメーカー各社から搭載製品が発表され、年末商戦に発売されるだろう」とある。Intelが上記の計画通りに量産できたとすると、PC用の10nmプロセッサが2019年後半、サーバ用の10nmプロセッサが2020年前半になると推測される。Intelの新CEOのRobert Swan氏が、“オオカミ少年”にならないことを願うのみだ。

左:図1 Intelの10nmチップの断面電子顕微鏡写真 出典:Intel IEDM2017-674   右:図2 Intel 10nmチップの配線ピッチとスケーリング 出典:Intel IEDM2017-674
図3 メタル配線の構造
図4 Cu配線の微細化とともに抵抗値が増大 出典:T.Nogami(IBM)「VLSI 2017」の資料より   窒化膜と酸化膜を交互に成膜して応力調整するんやで。成膜時は熱い、室温まで冷やすと縮む。膜が柔らかくて下地より縮むと圧縮応力、膜が硬くて下地ほど縮まなかったら引っ張り応力がかかるんやで。
図5 CoがCuより優れている理由   一番上のCoは明らかにグレインが大きくてほぼcolumnarになっとるやろ。だから粒界抵抗が小さい言うとんねん。クソ馬鹿のKang君とかはこの意味がわからへんねん(笑)。あ、これはSrTiO3の話やった(笑):Vacuum Polarization, ...

でもこの材料選択の理由がようわからんやろ(笑)。融点はCoのほうが圧倒的に高いしな。こういうところが有んのよ、半導体プロセス。「頭で実験する」タイプの俺様(だから、実験ってその後の解析方法も含めて考えてるからだいたい1発目で終わんねん、俺様の場合(笑)。時間がかかるのは、装置つくったり -- 部品は買わないかんからね -- そのための予算調整したりするところやねん。あと、敵殺したりな(生物学的にってわけじゃないけど)。)に合わないってわけ。で、誰にもできるかって言うと、できへんねん(笑)。ま、そもそもIQが違うってわけやねん(笑)。ま、だからいろんな奴がアイディアもらいに訪れるってわけやねん(笑):Vehicle Electrification & Renewable Energy VII. | LinkedIn

図6 Coを介したMnのセルフフォーミングバリア(tCoSFB) 出典:T.Nogami(IBM)「VLSI 2017」の資料より
図7 tCoSFBによるバリアメタルによりCuの微細配線がCo配線より配線抵抗が小さくなることを示した資料 出典:T.Nogami(IBM)「VLSI 2017」の資料より

[6] 出光「電池は油で冷やす」野望、ダイキンもEV熱マネへ新冷媒 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

  1. 電気自動車(EV)から“水”を無くしたい――。こんな野望を抱くのが出光興産だ。同社営業研究所モビリティオイル開発グループの中原靖人氏は「モーターは水冷から油冷に変わってきた。技術変遷を考えれば、電池も油冷になる可能性は十分にあるだろう」と語る。冷却油を新開発し、国内の自動車メーカーと共同検討を始めた。「自動車メーカーの本音は『二酸化炭素(CO2)冷媒は使いたくない』だ。我々が開発した新冷媒のニーズは必ずある」。こう意気込むのは、ダイキン化学事業部商品開発部の午坊健司氏である。同社はEV向けの新冷媒「R-474A」を開発し、2027年に量産を開始する。

  2. EVの“主役”に改善の余地 黎明(れいめい)期から普及期へと移りつつあるEV。このタイミングで商機をつかもうと攻めに出るのが、材料や流体の技術に強みを持つ日本企業である。狙うのは熱マネジメントシステムの市場だ。電池やモーターなどを最適に温度管理しつつ快適な空調を実現する熱マネは、EVの“主役”とも言える重要なシステムである。熱マネシステムに求められる機能は、(1)電池劣化の抑制(2)充電時間の短縮(3)航続距離の確保――の3つ。電池が高温になれば劣化が進行して寿命が縮む。充電時間を短縮しようと高出力にすれば、熱が発生して充電時間が長くなったり電池を劣化させたりする。エンジン車のような熱源を持たないEVにとって、熱を捨てずに有効活用することが航続距離の延長に欠かせない。量産EVの熱マネでは、3つの媒体を使い分けて熱を循環させるシステムが多い。具体的には、電池やインバーターは水(クーラント)、駆動用モーターや減速機は油、空調は冷媒が主流だ。各部品が最適な温度になるように各媒体の流路を切り替えたり熱交換したりする複雑な統合型システムで、まだまだ改善の余地が多く残っている。3つの熱媒体のうち、出光が無くそうと狙うのが水だ。冷媒は空調に欠かせないが、「電池の水冷機構は油冷で置き換えられるはず」(出光潤滑油二部モビリティ技術課チーフエンジニアの奈良篤氏)とする。熱マネに使う媒体を油と冷媒の2つに減らす将来像を描く。

  3. BYDの電池は冷媒冷却だ。空調もこれだ。モータとインバータが水冷だ。

  4. トヨタの電池は水冷だ。モータとインバータもこれだ。空調は冷媒と別回路の水(暖房用)らしい。もっとも、全固体電池になれば電池冷却は要らなくなるかせいぜい空冷だろう。

  5. 以上、「SEAL」分解で見えたBYDの熱マネ思想、トヨタ・テスラ・VWと一挙比較 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)より。

  6. ごくわずかだが、電動車両の電池を油冷するシステムの実用例はある。英McLaren Automotive(マクラーレン・オートモーティブ)のハイブリッド車(HEV)「Speedtail(スピードテール)」は、冷却油を満たした容器に電池を沈める液浸方式の冷却システムを採用した。車両価格が日本円換算で2億5000万円(発売当時)というスーパーカーなので普及しているとは言えないが、強力な電池冷却システムが最高速度400km/h超という性能の実現を支えた。

  7. 「クルマの冷却システムにおいて、熱伝達率で水に勝る流体はない」。熱マネ技術に詳しい専門家がこう断言するように、油が越えなければならない“水の壁”は高い。熱伝達率は空気を1とすると、油が30倍で水が200倍である。油の熱伝達率が低いのは比熱(比熱容量)が小さいからって説明がよく有るが、熱を伝えるのは分子運動なんだよね。同じ体積内に分子がたくさん詰まっているほうが熱を伝えやすいです。分子も小さく軽く動きやすいほうがよい。固体も基本的には々だが、原子(固体内にある場合は自由な原子ではないので格子と言います)は自由に動けないのでその場で振動します。これが熱を伝えます。金属など伝導電子が有る場合はこれも熱を伝えます(まあまあ自由に動けるので電子ガスを仮定します)。

  8. 熱伝達率で劣る油にすると、電池から吸収した熱を大気に放出するためのラジエーターが大型化してしまう。低温環境では油の粘度が上がって循環が難しくなる。強力なオイルポンプを搭載するか、オイルヒーターを追加する必要がありそうだ。つまり、冷却能力だけで比較すると、水から油に置き換える理由はない。


おまけ

[1] 日本はこうやって生き残るんだな:中国マネーが「日本の盆栽」へ!アリババ創業者も1000万円お買い上げ、腕利き職人は給料倍増 | China Report 中国は今 | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

  1. 日本の伝統文化が、後継者不足や資金不足で衰退の危機に瀕していると言われて久しい。そんな中、盆栽や日本庭園など日本の伝統文化に中国人が熱いまなざしを注いでいる。日本の伝統文化を貪欲に吸収しようとする中国人と日本の伝統文化の行き着く先を考えた。(ジャーナリスト 姫田小夏)製造業もそうなるやろ。

  2. 朝顔を売る台湾出身の若者 東京の夏を告げる伝統行事に「入谷朝顔まつり」がある。入谷の朝顔といえば、江戸時代末期から有名で、今年7月は26店舗が出店した。平成半ばの最盛期には65店舗あったが、コロナ禍に加え、担い手の高齢化もあり、朝顔栽培をやめてしまった園芸農家もあるという。早朝5時から夜半の午後11時まで3日間朝顔まつりは続いた。そこで、おそろいの半纏(はんてん)を着た業者さんたちに混じって、行き交うお客さんに声をかけていた台湾出身の若者を見つけた。聞けば、「盆栽を学ぶために来日し、朝顔販売は“修業”の一環」だと言う。日本人は社畜化しすぎてしまって「修行」の感覚も無くなっとるからな。この若者が弟子入りしているのは、東京・江戸川区で「春花園BONSAI美術館」を経営する小林國雄氏(75歳)だ。小林氏は、朝顔まつりについて「寝ずに出店して延べ20人を投入しても、利益は100万円も残らないという厳しい商売ですが、伝統をなくしたくないという思いでやっています。弟子たちの修業のためにもなりますから」と打ち明けた。76年も続く伝統行事でさえも「維持存続をどうするか」という難しい局面に立たされているのだ。盆栽はもともと中国だし。

  3. 世界中から弟子入り、盆栽に魅了されるジャック・マー氏 小林氏は日本を代表する盆栽作家だ。盆栽は「時間の芸術」とも言われ、時間がたつほど味がでてくるという魅力がある。鬼才で知られる小林氏の盆栽は高値で取引され1億円の値がつくものもある。園芸農家をやっていた父親の背中を見てこの世界に入ったが、小林氏は園芸ではなく盆栽を志し、携わって50年になる。30年目に10億円の私財を投じて数寄屋建築の美術館を立ち上げた。実に“はさみ一丁”のなせる業である。美術館は年間5万人が来館し、約8割が外国人だという。世界的著名人も少なくなく、米・アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏やアリババ創業者のジャック・マー氏がここを訪れている。館長の神康文さん(35歳)によると「ジャック・マー氏は盆栽好きで、ここで1000万円のさつきを購入されました」という。これまでに30の国と地域から130人が小林氏の下で修業した。現在はポーランド、プエルトリコ、中国、台湾から来た外国人5人と日本人1人が親方と寝食を共にし、寸暇を惜しんで技能習得に没頭している。共通語は英語だが、親方は弟子たちに「目で盗め」と指導する。現代の奴隷としての技能実習生ではなくこういう方々をお迎えしろ:群馬県内の農業法人で働くスリランカ人技能実習生の女性(以下、Aさん)が、実習先で日常的に暴力や暴言の被害に遭っていたことが、10月16日、彼女を支援する労働組合「総合サポートユニオン」 の群馬県庁内の記者クラブでの記者会見によって明らかになった。会見の場では、農業法人の社長の息子がAさんらスリランカ人実習生を「スリランカに帰れ!」「いらねえよ、てめえなんか!」などと長時間にわたり大声で怒鳴りつける音声テープが流された。雇用主の日本人男性が、実習生のスリランカ人女性を一方的に罵倒し、実習生が「やめて!」と恐怖のあまり泣き叫ぶやり取りには、会見の場に居合わせた誰しもが息を呑んだという。Aさんの勇気ある告発により、群馬県内の報道機関を通じて、人権侵害の事実が明るみに出た。これにより、実習先を監理・指導すべき立場にある監理団体や外国人技能実習機構(OTIT)によって、すぐに保護されて別の安全な実習先を紹介されるものと期待された。だが、事態は予想外に推移する。Aさんの監理団体は、暴力・暴言の被害に遭った実習先でそのまま働くよう説得するために、アパートを突然訪問し、本人の意に反してAさんを「連行」するという 異常な行動に出たのである。

  4. 盆栽のルーツは中国、現代はお抱え職人も あ、中国ルーツ、出てきた。実は盆栽は日本人より外国人に人気あり、むしろ海外で高く評価されている。盆栽のルーツは中国にあり、唐の時代に始まったといわれる「盆景」が、平安時代に日本に伝わってきたといわれる。中国からもたらされた盆景は、日本人の感性とともに長い年月を経て「盆栽文化」として成熟した。近年は中国でも盆景文化が復活し独自の発展を遂げているが、「のびやかで豪快な中国の盆景に触れ、私自身の作風も変わりました」と語るように、小林氏にも大きな影響をもたらしている。まあ、変化した点ではラーメンみたいだけどな。日本の盆栽について小林氏は「盆栽は個性、調和、品性、らしさの四要素が不可欠。個性は必要だが強すぎてはだめ、そこで調和が必要となり、品性が加わることで美しい作品になり、季節や植物が持つ『らしさ』を供えて完成された美となります」と話す。そんな盆栽への関心はとりわけ中国で高まっている。日本でも盆栽に対して “余裕ある金持ちのたしなみ”というイメージもあるが、中国では、広大な家や庭を持つ富裕層が、盆栽に資金を投じそれをステータスにしているところがある。こうした中国の富裕層にはお抱えの職人がいるという。「中国でも高価な盆栽を買っても枯らせてしまった人は少なくありません。その反省から“いい職人”を雇うようになりました。日本で修業した職人は引く手あまたで、私のところで修了証をもらうと中国での給料は倍に跳ね上がるようです」(小林氏)日本にしかない「精神の内面からただよう品位」「枯らさないで長生きさせる技術」、この二つは今なお高い需要がある。近年はトレンドに乗じて “盆栽ブローカー”も出現するようになった。オークションで高値を動かすのは専ら中国人だという。「日本国内のどこのオークション会場にも中国人がたいてい5~6人はいます。日本人のみだと300万円程度ですが、中国人がいると総売り上げが5000万円になる、このくらい経済力には差があるんです」(小林氏)ここも中国市場依存だ。小林氏によると「経済成長があるところは盆栽も伸びる」と言う。確かに日本では昭和の高度経済成長期に盆栽を求める家庭が少なくなかった。今では中国やベトナム、フィリピンなど東南アジアで盆栽熱の高まりがある。「これからはインドだ」と小林氏は言う。あ、インド出てきた。

  5. 「水の音さえ美しい」、中国からやってきた日本庭園視察団 新型コロナウイルスのまん延でストップしていた日中間の民間交流もこの夏、息を吹き返した。“リベンジ交流”があちこちで展開する中、筆者は 中国からの“日本庭園視察団”を取材した。北京、上海、重慶、山西、安徽などから参加した庭園の設計・施工・調達を手掛ける専門家の一行だ。7月末の朝9時、ホテルの会議室は視察団の熱気に包まれていた。講演会に招かれたのはランドスケープアーキテクトの第一人者である戸田芳樹氏(75歳)だ。京都で庭師として修業した経歴を持ち、日本庭園を取り入れて街の景観をデザインする戸田氏は中国においても知る人ぞ知る人物である。日本庭園の歴史は飛鳥時代にさかのぼり、朝鮮半島経由で技術が伝えられたともいわれている。庭園という概念が日本にもたらされた時代、庭園は池を真四角にするなど直線的だったが、時の経過とともに緩やかな曲線を持つ独自の庭園に変化していく。自然の形そのままの池、そこに注ぐ水の流れや滝、ありのままの石の形など、今に伝わる「日本庭園」の要素は奈良時代に形成されたといわれている。また天皇の墓を守るとされる京都の龍安寺がそうであるように、「当時の人々は庭園に先祖の墓、一家の繁栄など意味を持たせ、思想性を反映させていました」と戸田氏は話す。日本庭園に熱い視線を向ける視察団一行は、戸田氏が手掛けた多摩川と富士山を望むロケーションにある二子玉川公園(東京・世田谷区)の回遊式庭園「帰真園(きしんえん)」を訪れた。門から主景である池までを植物や石でデザインし、緩やかな坂などを設けて領域を変化させながら、空間の広がりに到達する――そんな戸田氏の説明に一行は聞き入った。また水流の表現には、水の音さえも「美しい」と言って録音する人たちもいた。だねー。あんま屋さんでも水の音を流しているところも・・・。

  6. 日本庭園に重ねる“自分探しの旅” しかし、残念なことに、日本における日本庭園の文化は縮小に向かいつつある。少なくとも日本庭園は、公共のスペースや高層住宅や商業施設のプロジェクトの一角に入り込むなど、特別なケースでないと造園が難しい時代になった。戸田氏は「50年ほど前は日本の金持ちの間で日本庭園の造園ブームが起きましたが、今では庭にできる敷地そのものがありません」と言う。国民所得落として、増税して、かつ「産めよ増やせよ」言うとるから当たり前でしょ。一方、中国で日本庭園の需要が伸びる背景には、富裕層の存在がある。日本に住んで30年、日本庭園づくりを学んで15年の楊貴宝氏(63歳)はこう話す。「北京など中国で一戸建て住宅を購入する富裕層の中には、庭だけで1000平方メートルや3000平方メートルを有する人もいます。200平方メートルの庭はむしろ狭いぐらいです。白鳥が泳いでいたり、神木で知られる櫟(イチイ)の木すら植えられたりしています。自分の庭に日本庭園を造ることは “富二代”(金持ち二代目)といわれる人々のたしなみにもなっています」また楊氏は、中国人の日本庭園への探求について「“自分探しの旅”にも重なるところがある」と語っている。「19世紀の中国は欧米列強に屈しましたが、『なぜダメだったのか』という問いに対する答えを現代の中国の人たちは探し求めています。対立が深まる欧米側に学びにくくなる中、最近は日本にいっそう目が向くようになっているのです」まあ、盆栽と関係が有るのかは知らんが。ついでなんだろうな。

  7. “21世紀のジャポニズム”の到来か 戸田氏は2007年から中国で行われる商業施設の開発プロジェクトに関わってきたが、「なぜ中国人はここまでして自分を含め日本人をプロジェクトに取り込もうとするのか」という素朴な疑問を抱いていた。戸田氏は中国の事業者からこんなオファーを受けたことがある。「日本人は誠実で、ものづくりには緻密さがあります。明治の開国期に外国から情報や技術を取り入れ独自なものを作り上げました。日本人には中国でもこの発想に基づいて、中国の文化を現代に導いてほしいのです」簡単に言えば「中国の歴史や文化をモダンな感じで展開してほしい」という要望だ。彼らにとっては中国の歴史や文化をどのようにして現代につなぐかが大きな課題、しかし自分たちで簡単にはできないことから、日本の企業をパートナーにすることを思いつく…。だが、戸田氏は事業者に対し「その問いに向き合うのは中国人自身です」と答えている。「帰真園」の参観を終えた重慶出身の参加者は「ここにある植物や石は中国にはない。だから我々が中国でつくれるのは融合スタイルでしかない」と話していた。今後、素材の調達をきっかけに中国の日本庭園は“中国ナイズ”されていく可能性が十分にある。世界各地で造園される日本庭園の中には「これが日本庭園だといえるのか」といったものもあり、「どう定義付けるか」という議論もある。それでも戸田氏は「日中の文化は常に互いに作用し合って新たな価値を生み出していく。中国では、およそ我々がカテゴライズできない、非常に個性的な日本庭園が生み出されるだろう」と前向きに受け止めている。縮小を余儀なくされる日本の伝統文化はどこに行くのか、という素朴な疑問から始まった取材は、盆栽と日本庭園の二つの伝統文化に向けられる世界の熱いまなざしにたどり着いた。戸田氏の言葉を借りれば「海外からの熱量の高まりは、まるで19世紀後半のジャポニズムを彷彿とさせる」かのようだ。遠い昔に中国からもたらされた文化を受容した日本が、年月をかけてそれを変容させ、さらに中国に逆流させるサイクルが動き始めている――そう捉えることもできる。日本の伝統がどんな形で受け継がれていくかは未知数だが、“21世紀のジャポニズム”のその先を見守りたい。ラーメンなみに変化しても別にかまわんやろ。楽しんでいただけたら。

[2] ザイム真理教の暴走を許した菅直人:財務大臣が高校レベルの経済理論を知らず、官僚から「オレたち抜きでは何もできない」と…日本の政治家とキャリア官僚の“歪んだ関係” (msn.com)

  1. 最近、「世の中は変わらない」と投票に行かない国民が多い。その結果、経済政策の基本も分からない政治家が国政に携わってしまうことになる。すると、どうなるか。利上げ、増税、規制強化が待ち受け、ローンの利子は上がり、税金も容赦なく上がり、無駄に行動を制約される。どんなに働いても給料が上がらない世界になってしまうのだ。消極的に肉屋を応援する豚ってことだ。

  2. ここでは、経済学の基本をわかりやすく記した倉山満氏の著書 『これからの時代に生き残るための経済学』 (PHP新書)より一部を抜粋して再編集。経済を知らない政治家と政治家をだましたがる官僚の本末転倒な関係を紹介する。

  3. 乗数効果がわかっていない? 政治家のコンプレックスを象徴するようなエピソードがあります。2010(平成22)年1月26日の参議院予算委員会で、菅直人財務大臣の話です。当時は野党だった自民党の林芳正氏に、「子ども手当の乗数効果はいくらか」との質問を受けました。菅財務相はトンチンカンな答弁をし、同僚の長妻昭厚生労働大臣も仙谷由人国家戦略担当大臣もまともに答えらませんでした。そして、「乗数効果は、高校生が学ぶ、きわめて初歩的な経済理論なのに民主党の経済閣僚はわかっていない」と揶揄されました。民主党に政権担当能力がないことが、公衆の面前でバレてしまった瞬間でした。テレビで生放送されています。国会中継など誰も見ていませんが、ネット世論が取り上げ、大騒ぎになります。当時は「反民主党」というだけでウケる時代でしたから「ほれ見ろ。民主党ってこんなにレベルが低いんだぞ!」と拡散されます。そのうち地上波でも取り上げられて、民主党は何もできない人たちの集まりであるというイメージが全国民についていきました。俺はこの件は別に問題視しなかったが、民主党に外交経験が無いので外交がほとんどできなかったのが問題だったと受け取った。

  4. この場合、菅直人の何が罪深いか。 「菅直人が乗数効果ごときを知らなかったこと」と思ったら、あなたは官僚の罠にはまっています。菅財務大臣は「そんなことも知らないのか」と責められましたが、正直なところ「乗数効果」ってそんなに有名な概念でしょうか?ちなみに高校生用の『用語集現代社会+政治・経済(’22-’23年版)』(清水書院、2021年)によると、以下の通りです。〈乗数理論 投資支出の一単位の増加から波及して、乗数倍だけ国民所得が増加することを説明する理論。国民所得がある水準のとき、投資支出が1兆円増えたとする。その1兆円は、必ず誰かの所得となり、貯蓄か消費に回される。ここで、1兆円のうち80%が消費されるとすれば、今度は0・8兆円が次の誰かの所得になり、さらに同じく80%が消費に回されれば、0・64兆円が誰かの所得となる。この過程が無限にくり返されれば、最終的には5兆円だけ国民所得が倍加する。つまり、所得が一単位増えたとき、そのうちどれだけを支出するかをc(この例では、0・8)とすれば、1/(1-c)を、最初の投資支出増加分に掛けた額だけ国民所得が増加する。このとき、1/(1-c)を乗数とよぶ。〉たしかに高校生用の教材にも載っていますが、高校で教わる国・数・英・理・社すべての分野の知識を間違いなく習得し、覚えている大人がどれくらいいるでしょうか。

  5. 致命的な誤りは「その後の対応」 政治家に「あらゆる専門用語を知っておけ」というのは無理な話。経済が大事なのはわかるけど、政治家は経済のことだけ考えているわけにはいかないのです。菅直人財務大臣と民主党政権の致命的な誤りは、何かを知らなかったことではなく、その後の対応です。メディアからは「こんなことも知らないのか」と煽りたてられ、官僚からは「政治家なんて、結局、オレたち抜きでは何もできないんだ」とバカにされる。それがよほど悔しかったのか、以後、菅直人は財務官僚の軍門にくだってしまいました。脱官僚政治を掲げて政権についた民主党だったのに、官僚の言いなりになり、すっかり依存するようになったのです。

  6. これこそが罪深い。 そもそも、政治家は何をどこまで知っていなければならないのか。官僚はその道の実務の専門家だから、官僚です。なんだかんだと24時間365日、その仕事に取り組んでいるのです。言っちゃあ悪いですが、選挙の片手間に勉強して、太刀打ちできる訳がない。

  7. 源頼朝の偉大さ 急に話は飛びますが、鎌倉幕府を開いた源頼朝には、大江広元という有能なブレーンがいました。鎌倉幕府の公式歴史書である『吾妻鑑』には、広元が随所で幕府の根幹となる政策を主唱する様子が登場します。実際、頼朝にも多くの提言をしたでしょう。では、頼朝が広元の言っていることを、どれほど理解できたか。間違いなく100%だったとは思えません。この世で誰も見たことがない「幕府」です。考えついた広元が偉いのであって、それを頼朝が100%理解できなかったとしても、頼朝の偉大さはいささかも損なわれません。なぜなら、それを実現したのは、頼朝だからです。ブレーンにできることは「何をすればよいか」を提示すること。政治家の仕事は実現することです。そして頼朝は、広元の言うことを細部まで完全に理解していなくとも、間違いなく本筋は摑んでいました。前にdecision makerとdecision takerの話をしました。最近の政治家は、官僚のご説明を何%理解できるかで、優秀さを競っているようなところがあります。何の意味があるのでしょう。もっとも政治家にレクチャーする時、「そこからか!」と叫びたくなる時ほど悲しいこともありませんが。

  8. 官僚だって何でも知っている訳ではない わかりやすくイメージしやすいように、警察でお話ししましょう。警察を司る大臣は国家公安委員長です。では、国家公安委員長が、凶悪犯の逮捕の仕方に関して、官僚よりも詳しくなければならないのでしょうか。そんな訳はありません。だいたい、当の警察官僚だって、実際に凶悪犯の逮捕なんかしません。実際に現場の仕事を行うのは、ノンキャリアの官僚。この場合は現場の刑事です。凶悪犯の逮捕の仕方を知らないのは、政治家もキャリアと呼ばれる高級官僚も同じです。この事情は、財務省でも同じです。財務省のキャリア(幹部候補の高級官僚)にしても、ノンキャリ(その他の職員)に依存しています。局長~事務次官と出世するキャリアが、税務署の職員より税に詳しいなどありえません。予算を司る主計局にしても同じ。財務省主計局には司計課と呼ばれる部局があって、原則としてノンキャリしかいない課です。本当に国家予算を隅々まで知り尽くしているのは、この人たちです。冗談で、「記者会見で政治家の大臣が質問に答えられないと、後ろの事務次官を振り向く。次官が答えられないと横の局長を振り向き……最後に振り向いた人は壁しか見えない」と言われます。実際にはそんなことはありません。基本的に大臣が答えられるように想定問答を仕込むのが高級官僚の仕事ですし、仮に大臣が答えられなくても次官がカバーすれば終了です。実際、「国民福祉税」をぶち上げた細川護熙首相は記者の質問に何も答えられず、横にいた斎藤次郎大蔵事務次官がすべて答えると言う場面がありました。もっとも、官僚が答えに困るような鋭い質問を記者が繰り広げた場面を思い出せませんが、聞く方の勉強不足でしょうか。

  9. キャリア官僚が政治家の役割を担っている 閑話休題。今の日本では、政治家がだらしないから、キャリア官僚が政治家の役割を担っていて、本来の官僚の仕事はノンキャリが行っているという本末転倒の状態にあります。政治家が本来の仕事をこなしていたら、キャリア官僚などいらないのです。ところが、菅直人氏はじめ民主党政治家は、官僚に対抗できる知識を何でもかんでも知らなければいけないという強迫観念に駆られてしまいました。それこそが官僚の付け入る隙でした。安倍さん、菅さんが例外的でしたが、ポチ岸田で元の木阿弥でした。

  10. 参考:消費税「導入」と「増税」の歴史 | nippon.com

[3] 「後進国だったことに愕然」 岸田総理が日本のデジタル化へ決意、マイナ会見で表明(発言全文) (msn.com)

  1. 内閣総理大臣を務める岸田文雄氏は8月4日に会見を開き、「マイナ保険証」をめぐる混乱への対応、そして日本のデジタル化への決意を表明した。まず、マイナ保険証については、2024年秋を予定する紙の健康保険証廃止、およびマイナ保険証へ一体化する方針を維持すると明かした。一方で、マイナ保険証を保有していない人全員に資格確認証を発行し、その有効期間やカードの形状は現行の保険証を踏まえると表明した。なお、2024年秋という紙の保険証の廃止時期については「国民の不安払拭が最前提」としたうえで、「さらなる期間が必要と判断される場合には必要な判断をする」とも述べ、延期に含みを持たせた。

  2. 岸田総理、日本のデジタル化へ決意(発言全文)岸田総理はマイナ保険証への対応と合わせて、日本のデジタル化への決意を表明した。──以下岸田総理の発言(要約含む)「2020年に私は党の政調会長としてコロナとの戦いの最前線に居た。その際に我が国のデジタル化の遅れを痛感した。国民への給付金や各種の支援金の給付遅れ、感染者情報をFAXで集計することによる保健所業務の逼迫、接触確認アプリやワクチン接種システムにおける混乱、欧米諸国や台湾、シンガポール、インドなどで円滑に進む行政サービスが我が国では実現できないという事実に直面し、我が国がデジタル後進国だったことに愕然とした。このデジタル敗戦を二度と繰り返してはならない。主要先進国に大きく遅れを取っている我が国行政のデジタル化の遅れを取り戻したい。この強い思いから、デジタル田園都市国家構想、マイナカードの早期普及を進めてきた。デジタル田園都市国家構想については5G、光ファイバー、海底ケーブルなどデジタルインフラの全国展開を前倒しし、交付金も創出。農林水産業、観光、国土強靭化、医療、教育などの分野のデジタル実装を支援し、横展開を強力に進めていく。 ●なぜマイナカードが必要なのか 並行してマイナンバーカードの早期普及についても縦割りを廃して担当大臣が一致協力して取り組んできた。国民の皆さんのご協力によって普及率は70%を超えた。なぜマイナカードの早期普及が必要なのか。それは、多様な公的サービスをデジタル処理するための公的基盤を欠いていたことが、コロナ時のデジタル敗戦の根本的な原因だったと政府全体で認識したからだ。少し詳しく説明すると、私達の普段の暮らしでは、免許証やパスポートが身元確認の役目を担っている。では、顔が見えず、なりすましも簡単なオンラインの世界で、身元確認や本人確認をするにはどうすればいいか。その役目を担うのが電子証明書を内蔵しているマイナンバーカードだ。それゆえに、マイナンバーカードはデジタル社会のパスポートと呼ばれている。総理大臣の職責を担って以来、世界に伍するデジタル先進国の実現、そして個人や中小企業のさまざまな事業に配慮したきめ細やかな公共サービスを全国津々浦々で行える公的基盤を早く整えたいという、強い思いを持って政策を進めてきた。実際に一部の自治体では先進的な取り組みが始まっている。先週視察をした福岡市では、マイナンバー制度を活用しノンストップ行政の実現を掲げ、9割以上の手続きのオンライン申請が可能になっている。同時に高齢者の方々のきめ細かい相談体制も充実させ、誰一人取り残されない行政サービスに取り組んでいる。群馬県でもマイナカードとSuicaの連携により実現した地域交通の割引サービスを視察した。また、介護施設でもセンサー技術を活用した見守りや蓄積データの活用よって良質な介護が実現している現場を拝見した。このように、生まれだしているデジタル化の流れや先駆的な取り組みを、速やかに全国展開し、人口減少や担い手不足が深刻化する中、医療、介護、子育て支援、行政サービス、地域交通などといった地域の社会課題をデジタルで解決していく。 ●マイナ保険証について 次にマイナカードと健康保険証について。現行の保険証を2024年秋に廃止するの乱暴ではないか。廃止ありきではなく国民の理解が必要だ。という指摘を国民や国会の審議でもいただいている。現場の医療関係者との意見交換でも、安心してすべての国民に受診しただける環境を維持するとともに、デジタル化を進めることが重要との指摘を受けた。私自身、マイナカードをめぐる事案発生以来、現行の保険証の廃止は、国民の不安払拭のための措置が大前提であると申し上げたこともあり、こうした国民の声や現場の声を重く受け止め、不安払拭を最優先とした対応を取っていく。必要な時に必要な医療にアクセスできる医療保険制度は国民生活の安心そのものであり、その信頼を揺るがすことはできない。まずは国民の不安払拭と国民1人1人にデジタル化することによる利便性を理解していただくことが重要。そのため、現行の健康保険証を廃止する際にも、すべての国民が円滑に医療を受けられるように、マイナ保険証を保有していない方全員に資格確認証を発行し、その有効期間やカードの形状も現行の保険証を踏まえたものとするなど、きめ細かい対応を徹底する。これにより、マイナ保険証を保有していない方も、これまで通り保健医療を受けることができる。政府としては、マイナ保険証への移行に際して、マイナ保険証のスマホ搭載や電子処方箋の普及、新たなマイナンバーカードへの移行を着実に進め、マイナ保険証のデジタル環境を整備していく。同時に受診履歴にもとづく質の高い医療、重複投薬の防止、転職等の際のシームレスな保険証の移行など、マイナ保険証によるメリットを国民に実感していただける実効的な仕組みを作る。こうしたデジタル化の取り組みにより、国民に選ばれるマイナ保険証にしていくことに全力で取り組む。デジタル大臣には関係大臣と連携して、来週8日に総点検の中間報告と再発防止とあわせて、こうした内容を盛り込んだ対策をまとめるよう指示をした。 ●世界最先端のスマート行政府を実現する マイナンバーカード関連事案の総点検と再発防止、そして信頼回復のための対応を行いつつ、この先の日本が目指すもの、それは世界最先端のスマート行政府の実現だ。そのためにデジタル基盤と政府の仕組み、双方の改革に取り組んでいく。デジタル基盤では、個人、法人、不動産、のオンライン認証の仕組みや、プライバシーをしっかりと守れるデータ流通基盤の整備、約1700の自治体が共有できる標準業務プログラム群の整備を進める必要がある。予算の効果の見える化に向けて、国の予算事業それぞれにIDを振る取り組みも重要だ。一方で政府の仕組みについては、アナログを前提とする昭和の時代に確立し、これまで機能してきた我が国の制度や行政組織、国地方の役割分担などをデジタルの時代に合わせて見直す必要がある。デジタルの力を使い、公務員の人数を増やさずに多様化するニーズにきめ細かく対応できるようにする。こうした『小さくて大きな政府』にするための令和版行財政改革に取り組む。その際に何よりも大切なのは、利用者基点での業務や制度の設計だ。行政サービスの利用者としての国民に直接向き合っている自治体、介護、教育、産業等の現場で奮闘する人々が、国民の生の声を聞き、政策を磨き、デジタルを活用してきめ細かくサービスをお届けできる、そうした利用者基点の視点を中央官庁に徹底したいと考え、私自ら地方の意見を伺いに行っている。マイナンバーカードの信頼回復に目処をつけ、この秋から令和版デジタル行財政改革を始動する準備を進める」(岸田文雄氏)

  3. なんちゃって電子化から脱却しましょう。

[4] 18年も一つのことを追えてよかったですな:無謀と言われても挑戦…パワー半導体の礎築いた京大・松波名誉教授に「エジソンメダル」 (msn.com)

  1. 電力消費を大幅に削減する「パワー半導体」の基盤に使われる炭化ケイ素(SiC)の実用化に貢献したとして、電気電子工学分野の世界的学会「IEEE(アイトリプルイー)」から今年5月に「エジソンメダル」が贈られた京都大の松波弘之名誉教授(84)=京都府八幡市=が八幡市役所で記者会見を行い、喜びを語った。日本人のエジソンメダル受賞はノーベル物理学賞を受賞した赤崎勇氏らに続き4人目。昭和14年、大阪市生まれ。37年に京都大工学部卒業後、米ノースカロライナ州立大客員准教授や京大工学部教授などを歴任した。松波さんと炭化ケイ素の出会いは43年。当時の炭化ケイ素の用途は研磨剤や耐火材が中心だったが、研究室にあった書籍に半導体への応用の可能性が記載されていた。誰も炭化ケイ素への関心がなかった中、松波さんは「人と違うことをやりたい」と研究への挑戦を始めた。当時は無謀な研究と思われた。基盤に必要なシリコンと炭化ケイ素の原子間の間隔に大きな差があった。このためきれいな基盤を作ることができず暗礁に乗り上げた。周囲からは「できっこない」と厳しい声も寄せられた。それでも「研究に明け暮れた日のことを苦労だったとは思っていない」(松波さん)。地道な研究を続けた。幸運が舞い降りたのは61年だった。研究室の学生が、炭化ケイ素の基盤を表面と並行に研磨するところを誤って傾けて研磨してしまった。これがきっかけとなり、高品質な結晶の製造に成功。ここが有名なところですな。その後、炭化ケイ素製デバイスの製造にも成功しパワー半導体の礎を築いた。電力の制御や変換を行うパワー半導体は、高い電圧、大きな電流に対しても壊れにくいといった特徴があり、脱炭素の促進にも期待されている。ローム(右京区)をはじめとした国内企業だけでなく、米国やドイツなどの企業でも製造コストの抑制を目的に積極的な投資が行われている注目のデバイスだ。松波さんはエジソンメダル受賞の快挙について「世界的学会に評価していただいたのは大変光栄なこと」。その上で「炭化ケイ素の半導体が安価になれば家庭の白物家電にも使われる。持続可能な社会のために寄与できたらうれしい」と話した。(鈴木文也)

  2. 経済/民主主義 I-LIX (2023)のどっかでもSiCパワー半導体についてお話してます。

[5] 天然ガス化学に移行し始めたが芳香族系はまだまだ石油化学のほうが強いんだね:なぜ日本は全国各地に「石油化学コンビナート」があるのか…アメリカ人を感動させた「工場夜景」のワケ (msn.com)

工場萌えってやつだね

なぜ日本は全国各地に巨大な石油化学コンビナートがあるのか。河合塾の化学科講師の大宮理さんは「本質はクジラの解体と同じ。石油を余すことなく使い切るため、1カ所に集約する必要があった」という――。※本稿は、大宮理『ケミストリー現代史 その時、化学が世界を一変させた!』(PHP文庫)の一部を再編集したものです。

  1. デートスポットは「工場夜景」 20世紀中盤から世界的に石油化学工業が勃興し、石油化学コンビナートという巨大な工場がその象徴になります。ゴジラやウルトラマンの怪獣が必ず壊しにいくところです。現在では、“工場萌えブーム”もあって認知度が上がりました。私はコンビナートを偏愛しているので、独身のころ、きれいな工場夜景を見に、よく女性を連れていきました。夜景はウケるのですが、「あれが蒸留塔、あっちがクラッキングタワー、炎を出しているのがフレアスタック、こっちはエチレンのタンク……」と悦に入って解説をすると、ほとんどの女子はシラけます。けれども、一人だけ例外の女子がいました。コンビナートのキラキラした夜景を見て、「これこそが猿から進化した人類が数学、物理、化学を合わせたテクロノジーの集大成や! あっちのボーボー炎出しているタワー、熱そうやから近くまで見にいくで!」と異常な食いつきで、一晩中、車でコンビナートめぐりをさせられました。それがいまの妻です(笑)。ごちそうさまでした。

  2. 連合軍が大勝したのは「工業力」があったから 第2次世界大戦で、連合軍を勝利に導いたのはアメリカの圧倒的な工業力です。大戦を通じてアメリカは、31万機の航空機、8万8000台の戦車、90万台のトラック、41万門の大砲、27隻の航空母艦、2770隻の戦時輸送船などを生産しました。工業力による数の暴力でナチスや日本をボコボコにしたのです。これら大量の航空機や戦闘車両、輸送トラックに大量のガソリンが必要になり、原油からガソリンをつくる技術が必要になります。原油の分別蒸留から得られるガソリンでは少なすぎるので、ほかの石油成分から接触分解(クラッキング)という方法で分岐型の炭化水素を多く含む高性能なハイオクタンガソリン(ハイオク)をつくりだす必要がありました。接触分解では、石油成分から、ベンゼンやトルエン、亀の甲のような記号の構造式をしたベンゼン誘導体(芳香族化合物)も合成されます。従来、これらの分子は製鉄の際に使うコークス(炭素)の製造において、石炭を加熱して分解する際の副生成物であるコールタールという黒い液体から分離して製造していましたが、ガソリン製造の副産物として大量生産が可能になります。芳香族化合物の有名な分子としてトルエンがあります。このトルエンからつくられる分子にTNTという爆薬の分子があります。第1次世界大戦で大量に使われはじめ、この大戦で使われた総量は6万8000トンでした。それが、第2次世界大戦では、1年当たり136万トンもの量が必要になりました。これだけの量をまかなうには石炭からのコールタールだけでは足りないので、ガソリン製造とセットでトルエンを生産する必要があったのです。

  3. コンビナートが巨大なのはクジラ解体と同じ原理 また、石油からハイオクガソリンをつくったときに副産物として発生するエチレンという気体が、いろいろなプラスチックをつくるのに有用な原料になります。石油の分解ではブタンという分子も得られ、合成ゴムの原料になります。クジラやアンコウは捨てるところがないといわれるほど解体して、さまざまな料理(クジラからは鯨油もとれます)に使われます。同様に、石油からのガソリン製造にあわせて、さまざまな分子を捨てることなく徹底的に利用しようとするのが石油化学工業です。その性格上、工場を分散せずに1カ所に集約して効率化する必要があります。それが石油化学コンビナートです。コンビナートとはロシア語で「結合」を意味し、ソ連で発電所や工場を集約して配置したものの名称です。欧米では「コンプレックス(複合体)」と呼んでいます。

  4. 「エチレン」「プロペン」の誕生 石油化学工業の始まりはアメリカです。1920年にスタンダードオイルがガソリン製造において、大きな分子をちぎって小さなガソリンの分子にする、接触分解で生じる切れ端の端材のようなプロペン(プロピレン)C3H6の分子からイソプロピルアルコール(2-プロパノール)CH3CH(OH)CH3を製造しはじめました。それまではプロペンは邪魔者として燃やされていましたが、災い転じて福となすで、捨てるものから有用な商品に転換することが可能となりました。1921年、ユニオンカーバイドがウェストヴァージニア州の油田で、石油とともに噴出する天然ガスに含まれるエタンC2H6の分子を加熱分解して、水素原子を二つ外すことでエチレンC2H4をつくる工場を稼働させました。この世界初のエチレン製造のための小さな石油化学工場の誕生から30年で、エチレンが文明を支える王者になっていきます。

  5. 自動車の普及が「凍らない水」を生んだ 20世紀のはじめ、エチレンやプロペンなどの石油製品の需要が増大していたのには理由があります。1913年に始まった「T型フォード」の大量生産による自動車の普及で、自動車用の化学品、冷却水に加える不凍液のエチレングリコールHOCH2CH2OHや速乾性塗料のニーズが激増していました。はじめはエンジンの冷却水に水を使っていましたが、寒冷地では凍結して故障が続発しました。そのため、水にエチレングリコールを加えて、氷点下でも凍結しない不凍液が発明されました。1923年には、アメリカのデュポンがニトロセルロースをもとにしたラッカー塗料を開発しました。ニトロセルロースは綿や木材の成分であるセルロースを硝酸で処理してつくる物質で、セルロイドや無煙火薬などの原料です。

  6. 実はマニキュアも同じ ラッカー塗料とは、色の成分(顔料)とニトロセルロースを溶剤(シンナー)に溶かしたもので、溶剤が蒸発したあとに顔料と樹脂が塗膜として残ります。マニキュアも同じで、ニトロセルロースを酢酸エチルに溶かしたものです。酢酸エチルは接着剤の溶剤としても使われていて(その独特の匂いが酢酸エチルの匂いです)、パイナップルやキウイなどのフルーツの香りの成分でもあります。スプレーで噴射して速く乾くラッカー塗料が自動車塗装に利用され、それまで数日間かかっていた塗装工程が数時間に短縮されます。溶剤の需要が激増して、溶剤になるイソプロピルアルコールがガソリンと一緒に製造できるようになって一石二鳥となりました。今は水にラテックスを分散させたものが増えてきたね。自動車産業の発展が、ガソリンやエンジンオイル、不凍液、窓ガラス、ゴムタイヤ、樹脂などの開発、製造をうながし、化学工業発展の原動力になったのです。ところで「石油使うのやめろ!」って言ってる連中が合成繊維でできた服を着たり靴を履いているのは滑稽だね(笑)。グローバルに見ると原油の50%は石油化学等に使われ、残りが輸送セクタでガソリン等に使われているんだね。

  7. 分子の形を自在に変えて望みの分子をつくる その後、第2次世界大戦が始まると、アメリカは国策としてガソリンと合成ゴムの大量生産を計画し、石油化学コンビナートが勃興します。石油から航空機用高性能ガソリン(ハイオク)をつくるための化学反応や触媒の探索により、石油化学が着実に力をつけていくのです。1949年には、接触改質(リフォーミング)という新しい革命的な技術が広がります。おもに石炭の熱分解で得られるコールタールからつくられていた、芳香族といわれるベンゼン、トルエン、キシレンといった分子を石油から大量生産できるようになったのです。石油に含まれる炭化水素の長い鎖状の分子(炭素数6〜8)を、あたかもフランスパンを丸めて大きなドーナッツ状にするような化学反応で形を変えて(まさにリフォームして)、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを大量生産する手法です。触媒を使った画期的な技術の発明によって、石炭を中心にした時代から、石油が中心の時代へと急速に時代が変わっていきます。熱で分解する反応や触媒を使った化学反応、混合物の分離などの技術が次々に生まれて、石油に含まれる分子をあたかもブロック玩具を組み替えたり、引き抜いたりするように、自在に分子の形を変えて望みの分子をつくれるようになります。こうして、巨大な石油化学工業へと進化してきたのです。そして、今日の自動車が走りまわり、モノが溢れる大量消費社会へと進んでいきました。

  8. 資源貧乏だからこそコンビナートを建設した 戦後、アメリカの巨大な多国籍石油メジャーが、世界を牛耳りました。自国に油田のないイギリスやドイツ、日本(新潟と秋田の小規模油田のみ)は外貨のドルが不足していたので、アメリカ産の高い石油製品を貴重なドルで買うよりも、安い原油をドルで買って自国で精製するほうを選びました。こうして各国で、石油精製、石油化学を組み合わせた石油化学コンビナートが建設されていきます。アメリカ以外で、石油化学コンビナートの原型ともいうべき石油化学工場がはじめて誕生したのがイギリスです。1951年6月、ミドルズブラのティーズ川河口のICIウィルトン工場が、石油化学の工場として稼働しはじめました。日本では、1955年に、通商産業省(現在の経済産業省)の主導で石油化学コンビナートが計画されました。かつての海軍や陸軍の燃料廠(燃料の製造貯蔵設備)などを財閥系化学企業に払い下げたり、埋め立て地をつくって誘致したりして、鹿島、千葉、川崎、四日市、堺、水島、岩国、徳山、大分など、太平洋ベルト地帯に石油化学コンビナートが建設されていったのです。

  9. あらゆる製品を生み出す魔法の場所 SF映画の金字塔といわれる1982年公開の映画「ブレードランナー」のオープニングでは、ロサンゼルスの街に炎が吹き出すフレアスタックなどが林立し、さながら石油化学コンビナートのような夜景が演出されています。リドリー・スコット監督は、羽田空港から乗った飛行機のなかで、眼下に広がる川崎浮島町(神奈川県)のコンビナートの夜景を目にしてインスピレーションを得たようです。映画の巨匠を魅了するほどの壮大な夜景の石油化学コンビナートでは、何をしているのでしょうか。まず、タンカーからの原油を精製して、沸点の違いで、石油ガス、粗製ガソリン(ナフサ)、灯油、重油などに分けます。ズバ抜けてガソリン(炭素数が5〜11の炭化水素)の需要が大きいので、接触分解で炭素数が多い軽油や重油の成分を触媒とともに加熱して分解し、ナフサをつくり、ガソリンを製造します。このナフサをさらに分解すると、エチレン、プロピレン、ブタンといった石油化学工業の基幹になる原料が得られます。また、ナフサの接触改質により、枝分かれが多い炭化水素(ハイオクガソリン)、さらにベンゼン、トルエン、キシレンといった芳香族化合物を合成します。これらは可燃性のガソリンを加熱するため、危険な工程になります。そのためコンビナートでは、安全に操業するために膨大な技術力と努力が注がれています。いまや、コンピュータで管理することによって、巨大なコンビナートも数人で管理できます。エチレン、プロペン、ベンゼン、トルエン、キシレンといった化合物から、さまざまなプラスチック、合成ゴム、医薬品、カラフルな合成染料、洗剤、液晶材料などを合成していく現代の魔法が石油化学コンビナートです。

  10. 大宮 理(おおみや・おさむ) 河合塾化学科講師 東京・練馬区に生まれ育つ。都立西高校卒業後、早稲田大学理工学部応用化学科で機能性高分子化学の研究室にて研究するも、父親の自己破産で極貧のため大学院にも進学できず、誰にも惜しまれずに卒業、化学の予備校講師に。代々木ゼミナールで衛星放送の授業などを担当したあと、河合塾講師として現在は中部地区の河合塾で授業や教材、模擬試験作成を担当する。『苦手な化学を克服する魔法の本』『もしベクレルさんが放射能を発見していなければ』(以上、PHP研究所)や学参など多数の著作がある。iOSアプリ「インスタ化学」を主宰。独身時代にローマ帝国とイタリアを体感すべく跳ね馬「フェラーリ」を乗りまわすも、いまは二人の子供にお馬さんごっこで乗られている。古書店めぐりや歴史、ミリタリー、プラモデル、自動車、鉄道、模型、自転車(ロードバイク)、ワイン、蒸留酒、日本酒、料理、クラシックやアート鑑賞など多趣味が災いして、日々、人生の“大後悔時代”を歩んでいる。化学のおもしろさ、伝えられてると思うで!

[6] 国交省に”最後にもう一回”喧嘩売る…国を舐め過ぎたビッグモーター、平均年収1000万円超の社員の転職先 (msn.com)

  1. ビッグモーター経営陣は国を舐め過ぎた 「ビッグモーターの経営陣は国を舐めすぎだ。事の重大さをわかっていないのではないか」首都圏のディーラー幹部は「ありえない」を繰り返しながらこう語る。「どれかひとつでも普通の会社なら大変なことなのに、できる悪さは全部しましたという体だ。それで知らない、社員がやったで済むわけがない」中古車販売・買取大手のビッグモーターは以前から損害保険会社への水増し請求が噂された。それが今年に入り客の車のタイヤに穴を開ける動画が流出、さらには靴下にゴルフボールを入れて振り回し凹ませる、工具でボディを引っ掻く、ヘッドライトを割るといった行為で客の車を破損させて保険会社に請求していた。

  2. これだけやらかしたのに、国交省にも喧嘩を売る経営陣 こうした具体例に対してディーラー幹部は「もう何を言っていいかわからないが」としながらも、「普通に犯罪だ。器物損壊に道路運送車両法違反、詐欺罪。それが成立するかはわからないが常軌を逸していることは事実だ。もう中古車業界がどうこうの話ですらない、ただの犯罪行為だと思う。、まして全国の支店でそれをやって『経営陣は知らなかった』で済むわけがない」ビッグモーターの創業者である兼重宏行氏は会見で「耳を疑った。こんなことまでやるのかと」「大事なお客様の車を修理する人間が傷をつけて水増し請求、ありえんです」「天地神明に誓って知りませんでした」といった趣旨の発言に終始した。そして息子で副社長だった兼重宏一氏も含めて「経営陣は知らなかった」と組織的な指示を否定した。「これだけのことをして、申し開きがあれでは国交省も立場がない。まして新社長が「大丈夫だったと思います」では喧嘩を売ってるに等しい」

  3. 会社としての存続が難しくなる…金融界隈からも怒りの声 7月28日、国土交通省はついにビッグモーターの全国24都道府県、34店舗の立ち入り調査を始めた。「最終的には整備そのものができなくなる恐れがある」それは民間車検場の指定取り消しや業務停止ということか。「踏み込んだ話は控えるが、仮にそうだとするなら会社としての存続が難しくなる、ということになる」大手自動車メーカーの工場が立ち並ぶ北関東の地銀関係者にも話を聞くと「本当に怖いのは金融庁だ」とも話す。彼は日ごろ多くの自動車修理工場や中古車店とも融資や経営相談を通して関係が深い。

  4. 損保ジャパンの「知らぬ存ぜぬ」は許されるのか 「整備ができないこともそうだが、中古車の売買に影響がでる。これが一番怖い。保険が扱えなくなれば事実上、売買もできない。損保ジャパンは何を言われても切り捨てるつもりだ。一蓮托生になる気はないだろう」多くの自動車販売店は保険代理業務も兼ねている。ビッグモーターもまた保険代理店として関東財務局に登録して各種手続きを行ってきた。だからこその「水増し請求」かはともかく、ビッグモーターの水増し請求には損保ジャパンが大きく関わってきたとされる。損保ジャパンからビッグモーターへの出向者は2011年からのべ37人、知らぬ存ぜぬは難しいように思うのだが。「事故を起こした経験があればわかるだろうが、本来の保険事故調査は本当に厳しいものだ。私も経験あるが、アジャスターの調査や確認は重箱の隅どころではない。それをビッグモーターも損保ジャパンも「知らなかった」「見抜けなかった」は無理がある。金融庁も舐められたものだ」金融庁はさっそく調査に乗り出すと同時にビッグモーター、損保各社に報告徴求命令を出すとした。またビッグモーターの幹部から不適切な保険契約や法令違反についても聴取した。そして7月31日、ついにビッグモーターの自動車保険契約の捏造疑惑が判明した。その前日には損保ジャパンがビッグモーターに対して損害賠償請求の準備を発表、同時にビッグモーターとの代理店契約を解除するとした。本稿のヒアリングはビッグモーターの会見直後(7月25日)だったが、彼らの発言はおおよそ的確だったことになる。

  5. おさまりを見せない”内部告発” ビッグモーター、損保ジャパン双方とも疑惑の者同士、なすりつけ合いとトカゲのしっぽ切りという泥沼の様相を呈してきた格好だが、この期に及んでこの体たらく、国交省も舐められ、金融庁も舐められたということか。つまり国が、ひいては日本国民(あえて主語を大きくする)も舐めていたということか。SNSも多くの顧客の「信じていたのに」「愛車を台無しにされた」「不具合ばかりだった」といった怨嗟に満ちている。鈴木俊一財務省兼金融担当相も「こんなことがあるのかと我が目を疑った」「非常に不愉快なことだと思う、国民感情に配慮して対応したい」と述べた。斉藤鉄夫国土交通大臣も立ち入り調査に際し「厳正に対処」とした。「整備はできない、保険は扱えないでは売買も難しくなる。イメージも最悪だ。損保ジャパンもビッグモーターを差し出して逃げるつもりだろう。現に東京海上や三井住友海上と一緒に被害者の顔をしている。損保ジャパンも金融庁から灸は据えられるだろうが、最終的にはビッグモーターが悪い、で決着するのでは」四面楚歌のビッグモーターだが、怖いのは国や損保各社だけでないと話すのは労働問題に取り組んできた地方議員だ。「ビッグモーターは経営計画書に「生殺与奪」と書く社風です。恨みをもつ元社員は一定数いて、実際に彼らがマスコミやSNSでリークしています。私のところにも地元のビッグモーターで働いていた営業マンや板金工、整備士が報じられているパワハラや労基違反についての相談が来ています」・・・議員は地元のビッグモーターの街路樹も問題視している。各地でビッグモーター周辺の街路樹が枯れ、除草剤の成分が検出された件だ。「はっきり言って犯罪でしかない。「枯らして見晴らしよくしよう」と除草剤が当たり前のように使われた。報道の裏づけも複数出た。これではビッグモーターは反社会的な集団とみなされても仕方のないように思う」

  6. もはや転職も難しくなってしまった 元自動車情報誌の広告営業担当は「これまでのビッグモーターのままでは難しいと思う」と語る「国交省にしろ金融庁にしろ、ここまでメンツを潰して日本の企業として生き残るのは難しいように思う。そもそも世間的に、ビッグモーターという社名のまま経営することの理解は得られないのでは」いや、この会社が存続すること自体が難しいのでは?客の愛車を傷つけて保険の水増し請求を繰り返してきたビッグモーター、現役社員の中には「転職するにも履歴書にビッグモーターと書いて雇ってくれるところはないのでは」と嘆く声もある。また元ビッグモーターの整備士はこう証言する。「ビッグモーターでは年収1000万を超える社員も珍しくない。それはノルマを達成、つまり今回の手口を実行したり、それに加担したり、命令したりといった連中だ。彼らはビッグモーターの中の勝ち組。居心地はいい。ほとぼりが冷めればまた営業できると思っている者もいる。ここ数年の中古市場はコロナと新車不足でバブルに湧いた。どこかのんきなところがある。業界最大手が潰れるわけがないと思っている」無茶苦茶な行為の数々に加え非難轟々の会見、そして経営陣の姿勢が本気で国を怒らせた。日本国民を怒らせた。ビッグモーターによる社員に対する「生殺与奪」は、いまや日本中からビッグモーターに向けられている。

  7. ところで「グッドウィル」ってどうなったんでしたっけ?ああ、こうなったのか:消えた383億円 “グッドウィルの亡霊”テクノプロ上場に暗い影落とす、闇の買収劇 | ビジネスジャーナル (biz-journal.jp)


by T. H.


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[1] Materials/Electronics

  1. Fermi Level (2018).

  2. Vacuum Polarization, Polaron, and Polariton (2018).

  3. Current Status on ReRAM & FTJ (2023).

[2] Electrochemistry/Transportation/Stationary Energy Storage

  1. Electrochemical Impedance Analysis for Li-ion Batteries (2018).

  2. Electrochemical Impedance Analysis for Fuel Cell (2020).

  3. Progresses on Sulfide-Based All Solid-State Li-ion Batteries (2023).さて、

  4. 関連学会動向 (2023).

[3] Power Generation/Consumption

  1. Electric-Power Generation, Power Consumption, and Thermal Control (2020).

  2. H2 & NH3 Combustion Technologies (2020).

[4] Life

  1. Home Appliances I (2021).

  2. Home Appliances II (2021).

[5] Life Ver. 2

  1. Human Augmentation (2021).

  2. Vehicle Electrification & Renewable Energy Shift I-LXXXI (2022).

[6] 経済/民主主義

  1. 経済/民主主義 I-LIX (2023).

  2. 記事抜粋1-43 (2023).

Published Articles (2004-2005, 2008-2011, 2015)

  1. Toru HARA | Confidential | Doctor of Engineering | Research profile (researchgate.net)

  2. Toru Hara, Doctor of Engineering - Google Scholar


さて、俺のスタイルは①仮説を立てることがスタート、②次にそれを検証するっていう「仮説・検証」スタイルだ。したがって「演繹的」って思われることが多いんだが、仮説は天から降ってくるもんではないので、文献調査などしなければならん。このプロセスが実は「帰納的」になっているんですね。

英国経験論の父、ベーコンさんは

  1. 自然の探求によって自然を克服し、人類に福祉をもたらすことを提案。

  2. 探求方法としては、法則から事実を予見するアリストテレス的な演繹法に対し、個々の実験や観察の結果得られた知見を整理・総合することで法則性を見出す帰納法を提唱。

  3. 実験・観察には誤解・先入観・偏見がつきまとうことも否定できないことを指摘。

  4. 人間が錯誤に陥りやすい要因を分析し、あらかじめ錯誤をおかさないように理論(イドラ論)を確立。

  • そう言えば、21世紀の経済学となった行動経済学(研究は20世紀だったけど)も「人間の定型的なミスのパターン」を統計的に抽出したものだったね。

って方らしい。そのイドラ(幻影・偶像。ラテン語イドルム idolum の複数形idola。)だが、次の4種有るそうです。

  1. 種族のイドラ(自然性質によるイドラ) ベーコンが「その根拠を人間性そのものに、人間という種族または類そのものにもっている」イドラとしたもので、人間の感覚における錯覚や人間の本性にもとづく偏見のことであり、人類一般に共通してある誤りである。例としては、水平線・地平線上の太陽は大きく見えることや暗い場所では別のものに見誤ることなどがあげられる。人類共通のイドラってことね。

  2. 洞窟のイドラ(個人経験によるイドラ) ベーコンが「各人に固有の特殊な本性によることもあり、自分のうけた教育と他人との交わりによることもある」イドラとしたもので、狭い洞窟の中から世界を見ているかのような、各個人がもつ誤りのことである。それぞれの個人の性癖、習慣、教育や狭い経験などによってものの見方がゆがめられることを指し、「井の中の蛙(かわず)」はその典型である。お前のイドラってことね。「空が四角いと思っていた」ピンク・スパイダー的なやつね。

  3. 市場のイドラ(伝聞によるイドラ) ベーコンが「人類相互の接触と交際」から生ずるイドラとしたもので、言葉が思考に及ぼす影響から生じる偏見のことである。社会生活や他者との交わりから生じ、言葉の不正確ないし不適当な規定や使用によって引き起こされる偏見を指し、噂などはこれに含まれる。噂のイドラってことね。だからアホとは付き合わないほうがいいのね。

  4. 劇場のイドラ(権威によるイドラ) ベーコンが「哲学のさまざまな学説から、そしてまた証明のまちがった法則から人びとの心にはいってきた」イドラとしたもので、思想家たちの思想や学説によって生じた誤り、ないし、権威や伝統を無批判に信じることから生じる偏見のことである。思想家たちの舞台の上のドラマに眩惑され、事実を見誤ってしまうこと。中世において圧倒的な権威であったカトリック教会が唱えてきた天動説的な宇宙観は、ニコラウス・コペルニクス(ポーランド)やヨハネス・ケプラー(ドイツ)、ガリレオ・ガリレイ(イタリア)などによる天文学上の諸発見によって覆されたのである。お上のイドラってとこかな?

ベーコンは、人間の知性は、これらのイドラによって人は一旦こうだと思いこむと、すべてのことを、それに合致するようにつくりあげてしまう性向をもつと考えた。こうした思いこみは、たとえその考えに反する事例が多くあらわれても、それらを無視ないし軽視しがちである。したがって、ベーコンは、この4つのイドラを取り除いて初めて、人は真理にたどり着け、本来の姿を取り戻すことができると説いた。だそうです。

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