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BOOM BOOM SATELLITESと僕のこと、そしてTHE SPELLBOUNDへ

2022年12月15日、Spotify O-EASTで開催されたTHE SPELLBOUNDの「『すべてがそこにありますように。』Release Party」に行ってきた。
BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之さん、THE NOVEMBERSの小林祐介さんの二人で2020年12月15日に結成されたこのロックユニットが、結成2周年の日にアニメ「ゴールデンカムイ」第4期エンディングテーマになった「すべてがそこにありますように。」のリリース記念として開催されたこのライブ。
僕が彼らのライブに行くのも2月のアルバムリリース記念公演以来。

音楽業界に入って約15年、それまでいろんなアーティストと関わってきた。歌姫、ダンス&ボーカルグループ、バンド、アイドル、声優、シンガーソングライター…etc.
そのどれも全てにたくさんの素敵な思い出があるが、その中でもひときわ特別な思いが忘れられないアーティストがいる。
BOOM BOOM SATELLITESだ。

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以下の話はあくまで個人的な備忘録です
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僕はBOOM BOOM SATELLITESの活動終了前約3年ほど、グッズ作り担当としてスタッフの末端にいたことがある。
事の経緯としては、ある日自分が働いている会社(当時僕はそこでグッズ担当をしていた)のマネジメント部門に、BOOM BOOM SATELLITESが移籍してきたという噂を聞いた。
僕は元々大のバンド好きっ子だったけど、自分の勤務先の会社はあまりバンドものが強くなくて、仕事上において自分が元々好きだったアーティストに関わるという機会はあまりなかった(もちろん仕事で関わったアーティストは全て尊敬しているし大好きだが、関わる前から個人的に好きだったかどうかという意味)。
そんな中、初めて自分がもともとめちゃめちゃ好きだったバンドが移籍してきたのだ。
「KICK IT OUT」に脳みそ蹴っ飛ばされて結婚式の二次会の入場曲に流させてもらったのも、今となってはもうだいぶ前のことだ。

担当マネージャーとは当時面識なかったけどいきなり電話をかけて、「グッズ作る人決まってないなら是非僕にやらせてください!」と直談判しに行った。当時のマネージャーは「なんか面白いやつがいる」とでも思ってくれたのだろうか、「じゃあやってみる?」という話になった。今思い出しても、本当にありがたい。

当時の僕のFacebookには、その時のことを「神様に会ってきた」と記している。
僕のルールではロック界は八百万の神々制なのだが、BOOM BOOM SATELLITESのお二人は、間違いなく僕にとっての神様だった。

僕はグッズ作り担当なので、自分の出番はそんなに多くない。でも時折お会いして話をすると、二人の性格や人となりが見えてくる。


BOOM BOOM SATELLITES 25th Anniversary BOOK『ブンブンサテライツ』<タワーレコード・中野ミュージック限定発売>

先日発売されたこのBOOM BOOM SATELLITES初となる単行本を読むと、中野さん、川島さんという二人がどういう人だったのか、その関係者の言葉を通じて浮かび上がってくる。
その中身は是非この是非読んでみてほしいので敢えてここで細かくは説明しないけど、僕の印象は多くの関係者の皆さんからの見え方とはちょっと違ってもいたようだ。
二人とも純粋で、音楽にストイックで、職人気質で、普段は優しく物静かな語り口だった。それはそれ間違いではないのだけど、あの本を読んでみると、もっともっとたくさんの側面があったようだ。

音楽に対してストイックというのは、ミュージシャンだしある意味当然とも言える。
ただそれは音楽だけにとどまらず、自分たちが関わるあらゆるクリエイティブ全てにおいて、そうだったのではないかと思う。それはCDのアートワークや、HPのデザインとかもそうだろうし。
だから僕が作るグッズの監修も、眼光は鋭かった。デザインはもちろん細かい色味や感触、素材の具合なども全てにおいて妥協はなかった。だから気を抜けなかったし、その代わり僕も常に全力で良いものを作ろうとしていた。

しばらくして僕が体調を崩してしまったこともあり、担当を変わることになった。とても悔しかったし残念だったけど、でも会社員としては仕方のないことでもあったと思う。
そうこうするうちに、川島さんの二度の脳腫瘍の再発ということを経て、いても立ってもいられなくなり、自分の上司に再び担当をやらせてほしいと直訴した。その結果、裏方としてという条件付きではあったが、ものづくりを支える側として再び担当をさせてもらえることになった。

いざ再び担当に舞い戻ったら、裏方のくせして色々動きまくった(正規の担当がいたのに申し訳ない)。
なぜなら、僕は当時自社のグッズ担当の中で、一番ブンブンのことを、そしてブンブンファンのことを理解しているという自負(完全な僕の思い込みなのだけど)があったからだ。

グッズづくりの醍醐味は、アーティストが作りたいものを実現するだけでなく、アーティストの世界観を曲や映像ではなくモノで表現するというところにあると思う。
だから例えば
・いつか再び元気になって夏フェスの大きなステージに立ったときのフラッグのように使えたら素敵と思ってめちゃでかいバスタオルを作ったり、
・二人が料理好きという趣味を生かして、ストイックなロックユニットとしては一見異質のエプロンを作ったり、
・歴代のブンブン作品タイトルを列記したヒストリーTシャツや最後の作品となった「LAY YOUR HANDS ON ME」のジャケットを再現し購入者の名前をクレジット表記したオンリーワンのTシャツを作ったり(これはご家族にもお送りしたな、届いただろうか)、
そういう形を通じて彼らの活動やアイデンティティ、価値観、さらにはこの世にいた軌跡のようなものを具体化することを試みていた。
あくまでもお二人あってこそのもので僕はそこを汲み取って形にする一過程を担っていただけなのだけど、でもそこに少しばかりでもなにかお役に立てることがあったのならば、本当に光栄なことだと思う。

それでも現実は残酷で、川島さんの病状は進行していき、やがて活動の継続も困難になっていった。
いよいよという時期にマネージャーにその話を聞いて、悲しくてたまらなくなってその日会社の帰りに一人で飲んで帰って、家でうちの奥さんの前で泣いたことを覚えている。

そして川島さんが旅立たれ、ブンブンの活動も終了し、僕とブンブンの関わりも終わった。

その後、こんな企画を去年実施できたのは、一時期だけでもブンブンに関わっていた者としてありがたかった。何より、ファンの方々が喜んでくれていたのが本当に嬉しかった。

先にも書いたように、僕の中野さん、川島さんの印象は、近しい関係者の方たちと必ずしも一致しない。それは僕がそこまで深い関係でなかったからだし、もっと長い期間あるいは深い立場で関わっていれば、また全く別のものだったのだろうと思う。
ただ、二人とも、本当に笑顔が素敵で優しい人なのだ。
そういう意味で、僕の中での二人の印象はタワレコのポスターのイメージそのまんまだ。


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話を冒頭のTHE SPELLBOUNDに戻す。

ライブは本当に素晴らしかった。
相変わらずほぼノンMCだけど、バンドにとってはそんなものは不要。
リリースパーティーのメインとなる「すべてがそこにありますように。」は「KICK IT OUT」「Dive For You」らと遜色ない名曲だし(MVのライティングが最高すぎる)、

BOOM BOOM SATELLITESカバーとなる「STAY」を聴けたのもグッときた。

ちなみに僕は、THE SPELLBOUNDの曲で言うと、「A DANCER ON THE PAINTED DESERT」も好きなんである。
BOOM BOOM SATELLITESの叙情的な色気の強さと、THE NOVEMBERSのシューゲイザーっぽさが絶妙にマッチした、この二人でないと作れない世界観だと思う。

本当に素晴らしい2時間弱の時間だった。
そして改めて、この二人はもう次の歩みを始めていることを実感した。
思い出は美しいが、思い出の中だけで生きていくことはできない。思い出は新たに作るものだ。

BOOM BOOM SATELLITESと出会って、確実に僕の人生は変わった。
本当に、心から感謝している。
ファンとしても、あるいは少しだけでも関わったものとして、冥利に尽きる。

そして同時に今THE SPELLBOUNDのファンとして彼らの音楽を追い続けられることも、誇りに思う。
いつまでも素敵な音楽と、素晴らしい景色を。
それと出会わせてくれる彼らを、これからも追いかけていくんだ。

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