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血尿が出るくらい地獄を見てから大切なことに気づいてください、と言われた話

前にいた会社の社長は地方のオーナー企業社長で「あいつは●●だ」と社員からはリスペクトはなく、入社してから知ったがかなりの右寄りで社員総会では天皇の写真と国旗に敬礼が義務つけられていた。

これは20年近く前の話。2023年の今であればツイッターやら企業の口コミで前もってわかるところもあったらだろうからが当時はガチャ要素が強く、かつ自分たちのいる環境が普通でないのか、普通なのか?も特にSNSなかったので検証する場もなかった。

そんな現在の感覚でみるとヤバイ環境の社長は雲の上の人で、センパイの主任さんや、たまに飲む部長さんからは愚痴と、その後決まってフォローするムーブとしての建前上の社長の神格化した話を聞かされていた。経理の友達も「あいつはよくわからん飲み会の数十万円の領収書を持ってくる」とボヤいていた。

この会社いよいよ、ヤベェなと思いながら働いていた。

ところがある日、その社長とサシで飲みに行く機会があった。


待ち合わせに遅れる社長。「指定したのお前やん」と思いながらもその言葉をグッと飲み込む。行ったのは駅前のチェーン系の居酒屋。遅れたのはどこどこ地区のPTAだか教育委員会への接待があったとのこと。「ここでの好印象をつかんでおくのが大事なんや」

あれ、俺らが現場で生徒に向けて頑張ったり、マーケの人がチラシつくったりしてるのと同じで、この人、塾のスポンサーである親に直接攻め込んだり学校と敵対せず、好印象持たれるためにロビー活動してたんや、と気づく。

経理がボヤいていた、謎の使途不明な領収書はこれでは・・・
と何かがつながり出す。

話を聞けば聞くほど「まっとうな経営者戦略を実行している」と言うのも若輩者の木立君が言うのはおこがましいが、センパイたちが語る不条理な社長像とは違った、顧客維持・拡大に取り組む経営者の姿が見えてきた。

当時の私は1年目で120人くらいの教室を一人で見ていてとにかく大変だった。他の同期と比べても負荷がでかいなぁ、何で自分だけ・・と愚痴の一つでも言おうと思ったが、気が変わり、この人ならこの状況をどう解決するんだろうと思って質問をしてみた。

「今、自分の教室には120人の生徒がいます。社員一人では生徒の満足を維持するために必要な仕事と、多分もっとマーケットを開拓できるし成績を伸ばすための仕事があって、これは両立できない。どう手を付けたらいいか?」

と聞いてみた。

今の仕事と未来の仕事、それを両方やろうとしているから実現しない。時間をジュウソウ的に使え

「えっ、ジュウソウ的ってどういうことですか?」

ジュウソウ的と言われて縦走?重曹?重層?とパッと感じが変換されないで不思議な顔をしているとおもむろに、つぼ八と書かれた割りばし袋の裏に図を描き始めた。

今の仕事があるだろ、未来の仕事があるだろ。人間は8時間+αしか働けないだろ。

お前は両方をやろうとしているから上手くいかない。

俺ならこうする。今の仕事もせず、未来の仕事もせず、それをやる2人を連れてきて、彼らに働いてもらう仕事をする。

一人でやることは限界がある。

俺はこれぐらいのピラミッドを創って、1日の仕事なんだけど100人で100日分の仕事をしている。時間を重層的に走らせている。


↑こんな割りばし袋の裏に絵をかいていた。

目から鱗がポロポロと落ちてきた。
ちょうど私の世代は体罰とか封建的な縦社会がありつつも崩れてきたような移行期だったので、「フラット万歳!ピラミッドはクソ」みたいな雰囲気が若い世代ではなんか広まっていた。が、機能的な縦の役割はそれはそれでいるよなと

それからアルバイトの学生の中で優秀な人をアシスタントにして、今の仕事の事務処理の部分を任せることで最終的に140人の生徒を見れるまではなった。

ただ、その時に同時に不思議に思ってついでに質問してみた。

「どうしてこんな良い話を新卒の私に教えてくれるのですか?私から見ると部長は常にドタバタしていて体調も悪そうですし、時間を上手く使えているようには見えません。部長に教えてあげた方がよっぽど私だけではなく、みんなが助かります」

平日の夜のつぼ八は、お客さんもまばらで、別の席の漬物をポリポリかじる音だけが聞こえる中、社長の言葉を待ったのを妙に覚えている。

それはな、あの部長は次期社長候補や。社長になったら上はおらん。やから誰も教えてくれない。だから自分で気づかなあかん。今こっちから教えたらあいつが育たん。だから俺は教えないようにしている。

と、なるほどそれは一理ある。

ただどうしても大変そうな部長さんやその下で時間に追われて、お昼ご飯も食べれずに車の中でカップラーメンを食べながら運転する技を身に付けたと言っている主任のセンパイを見ていると、今聞いた話をなんとか論破して、ちゃんと社内で上手な時間の使い方や仕事の仕方を広めてほしかった。
もちろんその結果、いい部になって環境が改善して自分にも恩恵が欲しいって気持ちもあった。

若気の至りで突っ込んで聞いてみた。

「その考え方はわかるのですが、じゃあ何で私にその大事なことを教えてくれたんですか?(教えないっていった言葉と矛盾しませんか)」

それは、お前が聞いてきたからや

社長になろうが何だろうが、誰かに聞いて教えてもらうのはアリやで。

社長になったら誰かから自発的に教えてもらうことはないけど、俺は素直に聞いてきた人には教えるよ。

だけどそのことに気が付いて、素直に頭下げて教えを乞えない人は、血尿流して地獄の苦しみを味わいながら仕事する環境に身を置くぐらいまでしないと自分では気が付かないよ。と

この一夜で社長の見方と、組織や教育の在り方みたいなものがガラッと変わった。なんですが色々な理由があって私もこの会社をやめ東京で働く道を選び、部長さんも独立して今は塾をやっている。

Youtubeとかドラマ・漫画を見ていると「なんでマニュアルないんすか?研修しっかりしてないんすか」的な、(教えてもらいたいんすけど、私じゃなくて環境が悪いんですよね、だから教えてもらうの当然ですよねムーブ)をみることがあるんですが、その時にいつも、あのつぼ八で聞いた話を思い出してしまう。

いい結果が出ない時に、素直に人に聞こう。

って気持ちをいつまでも忘れないように文章にしておきます。

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