見出し画像

超高速開発に期待するもの (2014年12月)

 我が国の情報システム開発の多くが、契約は定額請負方式、開発はウォーターフォール型で行われている。特に大規模な情報システムの場合にはそのほとんどが、このスタイルである。これには大きな問題が2つある。
 
 第1に、要件定義からシステムの完成までにかなりの期間を要するため、システムが完成した時のユーザ・ニーズが開発着手時から変化しているという問題がある。
 
 第2に、もし要件定義に間違いや誤解があった場合、ユーザがそれに気づくのは受入れテスト時、あるいは実際に利用を始めてからになることが多いことである。この間違いを修正するコストは、有名なBoehmの研究(注)によれば、要件定義時と比較して、受入れテスト時だと30~70倍に、システム稼働後だと40~1000倍にもなってしまう。
 
 超高速開発は、こうした問題を解決する一つの方法である。開発期間が極めて短いことによってユーザのニーズが変化して仕様変更が生じるというリスクを小さくできる。また、要件定義に仮に間違いや誤解があったとしても、その修正に要するコストや時間はウォーターフォール型開発に比べてかなり小さくなることが期待できる。また、変化の激しい社会において、ビジネスチャンスをしっかり掴むためにも超高速開発は有効だろう。そもそも、必要な情報システムを短期間で入手できることがユーザ企業にとって大きなメリットになるだろう。
 
 超高速開発の普及によって、日本の情報システム開発の世界が根底から変わることを期待している。
 
(注)Barry W. Boehm, “Software Engineering Economics” Prentice Hall (1981)
 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?