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NCニュースの読み方 #19 「労働時間でははなく達成した仕事で評価すれば残業は減る」 (2006年1月30日)

 1月19日付けの日経産業新聞によれば、新日鉄ソリューションズは深夜残業(午後10時以降の残業)と休日出勤を全面的に禁止した。もちろん、深夜や休日の勤務が避けられないシステム監視担当者などは除外されるが、それ以外の管理職と一般社員の約2100人は原則としてこのルールを守らなければならない。仮に、顧客との関係で深夜残業や休日出勤をせざるを得ない場合には、上司の事前許可が必要となる。

 狙いは、長時間勤務に歯止めをかけ業務効率を改善することにある。労働時間の短縮は、一時的にパフォーマンスの低下を招くかもしれない。しかし、長期的には生産性が高まり、収益性や成長性が向上することが期待されている。

 このITプロフェッショナルの労働時間が長いことは周知の事実だ。本誌の12月26日号の特集によれば、1ヶ月当たりの所定時間外労働(残業)時間は48.2時間。「毎月勤労統計調査(平成16年度)」の社員5人以上の企業に勤める一般労働者の所定外労働時間が10.7時間なので、この業界は全産業平均の4倍以上の残業をしていることになる。また、1月18日に(独)情報処理推進機構(IPA)が発表した「第27回情報処理産業経営実態調査報告」によれば、情報処理産業の1人当たり年間所定内労働時間は1810時間、年間残業時間は298時間であり、これを全産業平均(毎月勤労統計調査)と比べると、所定内労働時間で118時間、残業時間で174時間、合計292時間も長く働いていることになる。仮に1日の労働時間を10時間とすれば、年間に1ヶ月も長く働いているのだ(表参照)。

 (社)日本情報システム・ユーザ協会の細川泰秀専務理事によれば、この業界の残業には3つのタイプがある。「ダラダラ残業」「ボロボロ残業」「ムリムリ残業」である。ダラダラ残業は主に成果主義になっていないことが原因で発生する習慣的な残業である。ボロボロ残業はスキル不足が原因で発生し、ムリムリ残業は当初から無理な工期を設定したために起こる残業である。

 この3つのタイプの残業の中で、すぐに無くすことができるのはダラダラ残業だ。まず、労働時間で人を評価するのではなく、どれだけ仕事をしたのかで評価しなければいけない。つまり早く帰る人は限られた時間で密度の濃い仕事をしているのだから、能力がある(生産性が高い)のだと認めることが必要だ。そして、短いサイクルでデッドラインを決めて作業を進めることも重要である。新日鉄ソリューションズのように深夜残業や休日出勤を禁止するのも効果的だ。仕事にデッドラインがあり、残業を禁止すれば、仕事を効率よく進めざるを得ない。人は窮地に立つと成長する。今まで2時間かかっていた仕事が1時間でできるようになる。さらに追い込まれれば30分でできるようになるかもしれない。こうした訓練が生産性を向上させるのである。

 他業界ではあるが、トリンプ・インターナショナル・ジャパンの「残業禁止」や「がんばるタイム」、「早朝会議」はこのよい事例である。また、XPなどのアジャイル・ソフトウェア開発が目指す方向とも一致している。こうして生産性が向上すれば、時間的、精神的な余裕ができ、スキルアップをはかる時間も生まれ、ボロボロ残業も無くすことができるだろう。

 重要なことは、単に深夜残業や休日出勤を禁止したり、ノー残業デーを設けることではない。集中して仕事をする環境をつくり、限られた時間でどれだけ仕事をこなしたのかを評価できる組織にすることこそが重要なのである。

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