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事業戦略大学(教員1名、生徒無限大) 第12回 戦略ビジョン達成の方策を考える「考え抜くための戦略フレームワーク入門」

事業戦略力を身につけるには、理論をしっかり学び、自分で企画し、実践することによる経験知をどれだけ積むかにかかっています。実践してみないといけません。

設問1:戦略企画の中で、分析までは行ったことがあるが戦略そのものの企画の経験はない

設問2:戦略の企画の経験はあるが、実践したことはない

設問3:自分は分析だけでなく事業戦略の企画とその実践をできるだけ早く経験したい

■ 基本戦略とは何か

ここまでは事業戦略のビジョン面である「戦略ビジョン」、つまり、「将来、事業はこうあるべきだ、あるいは、こうしたい」という理想の姿、あるべき姿を、市場ポジショニングやビジネスモデル、製品。事業ポートフオリオなどで表現してきた。しかし、戦略にはもう一つの大事な側面がある。それは、その戦略ビジョンをどのように達成するかという方策、「基本戦略」である。企画力抜群で競争に勝てる戦略ビジョンが策定できたとしても、どのように実行するかという具体的な方策がなければ成果は生まれない。

そして、その方策は以下の方法で具体化すべきである。すなわち、戦略ビジョンを四つの視点で実行策にブレークダウンする。

4つの視点とは、バランスト・スコアカードの視点を活用したもので、①財務の視点、②顧客の視点、③業務プロセスの視点、④学習と成長の視点である。以下四つの視点の基本的なフレームワークに関して述べる。

20200627_事業戦略大学_図表_第12回


①財務の視点の基本戦略(財務はその性格上目標的表現になる)

財務の視点で中心となる目標は、やはり利益の最大化と資産の最適化である。この目標とする財務指標をさらに大きく二つの方向性に分けて考える。 一つは、収益拡大の財務目標であり、それはさらに顧客価値の向上の目標と商品・サービスの改善。革新の目標に展開される。もう一つは生産性の向上の財務目標で、それもさらに原価・費用の改善と資産の効率の改善という財務目標に展開される。

②顧客の視点の基本戦略

顧客の視点とは、商品・サービス面の実行日標・方策、顧客との関係性構築の実行日標・施策、ブランドイメージに関する実行日標・施策に展開される。商品・サービス面での実行日標・施策は、前に検討した、事業ドメイン、市場ポジショニングや顧客提供価値を達成するために、価格、品質、納期、機能などを具体的に企画検討する。顧客との関係性構築では、アライアンス戦略なども含めたビジネスモデルをどのように構築するかという施策を企画する。ブランドイメージについては、ポジショニングや顧客提供価値を達成させるために、コーポレートブランドや製品・事業ブランドなどのブランドに関する施策を考える。ここで取り上げた施策は互いに関係している。また施策への資源投入の優先順位やシナリオが必要であるが、ここでは、まず必要と思われるものをきちんとリストアップする。

③業務プロセスの視点の基本戦略

業務プロセスの視点は、イノベーションプロセス、オペレーションプロセス、顧客マネジメントプロセス、社会との関係性構築プロセスに分けられる。この視点の戦略としては、それぞれのプロセスの成果を向上させるために行われる実行目標・施策が入ってくる。イノベーションプロセスとは、戦略企画開発、新製品企画開発、技術開発など事業を変革するプロセスを示す。ビジネスモデルが戦略における重要課題の場合は、この視点で企画検討する。オペレーションプロセスとは、事業運営に必要なプロセスである。顧客マネジメントプロセスとは、マーケティング、営業、顧客サポートなどの顧客の価値を実現するためのプロセスである。社会との関係性構築プロセスとは、CSR(企業の社会的責任)、環境保全なども含む社会への企業貢献活動に関するプロセスを示す。

④学習と成長の基本戦略

学習と成長の基本戦略には、コアコンピタンスの構築、戦略的な技術、専門知識の創造、戦略実行のための組織風土の確立が含まれる。コアコンピタンスはビジネスモデルの核になるものであり、業務プロセスの視点や顧客の視点の課題との結びつきは強い。戦略的技術、専門知識の創造は、事業の基盤となる知識創造のための方策である。実行のための組織風土の確立には、戦略的なリーダーの育成、社員のモチベーション、そのための業績評価の方法、組織構造などの実行日標・施策の検討が含まれる。

これらの基本戦略の企画を行う際に重要なことは、事業のあるべき姿である戦略ビジョンとの関係である。その基本戦略があるべき姿を達成できるものになっているかを絶えず点検する。基本戦略策定では思考がどうしても事業内部に行きがちである。これまでの組織のしがらみや事業の制約条件を考えてしまい、その内容が過去の延長線上のものになりがちである。戦略企画のこの段階では、戦略ビジョンをつねに意識し、ストレッチした基本戦略を考えるようにしなければならない。

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