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勘所6:正しい意思決定がなされているか

事業戦略大学(教員1名・生徒無限大)「事業戦略の勘所コース第6回」 

もし「経営において最も難しいことは何か?」という質問があつたら、私は迷わず「意思決定」であると答えるだろう。

日本の企業が今鍛えなければならないのはこのビジネス上の意思決定のスキル能力だと思う。既存事業と比べて新規事業ではとくに、大小さまざまな意思決定を行わなければならない機会が多い。


経営者やリーダーの仕事の中で、意思決定はさほど時間を要さないが、極めて重要な仕事である。ここでの意思決定とは、実行に移され結果を生み出すものである。そうでなければ意思決定とは言えない。その意味で意思決定は、その対象に対し一貫性ある原則的な考えを用いて正しく行わなければならない。それでは意思決定に際して何が必要かをまとめておく。

①意思決定の対象をきちんと分類し、意思決定の考え方や方法を使い分ける
意思決定の対象はいくつかに分類して、その特性に合わせて考え方や方法を使い分ける必要がある。

意思決定対象の分類のうち、主要なものは以下のように分けられる。

a 事業に大きな影響を与えるもの

b 日常業務に関わるもの

c 頻繁に発生するもの

d めったに発生しないもの

という分類である。


意思決定対象が、 a事業に大きな影響を与えるもので、d めったに発生しないものであれば、プロジェクトチームをつくり、関連する情報を分析して意思決定の目的や成果を徹底的に考え抜き、その結果に基づいた意思決定をする。意思決定対象が、 a事業に大きな影響を与えるもので、 c 頻繁に発生する対象であれば、重要な原則や価値基準を決め、2度目からの意思決定はその原則や価値基準を使えるようにし、意思決定のスピードと精度を高めていく。

②意思決定のための前提条件を明確に決める


意思決定の前提条件や範囲が曖味で、情報も整理されていないために、意思決定が混乱することがよくある。そのため、意思決定に際しては、前提条件や範囲を明確にしておくべきである。しかし、その前提条件や範囲を決定するのも容易ではない。それらの決め方によつて意思決定も大きく変わる可能性があるからである。


とはいえ、前提条件や範囲を明確にすれば、意思決定が効果的かそうでないかが明らかになる。また、前提条件や範囲が変わったときに、意思決定自体を変更する必要があるかどうかも把握できる。


③正しい意思決定をするために徹底的に議論をしつくす


意思決定が、妥協の産物であったり、何か特定のことにだけ都合がよかったりしないよう、厳しい議論を尽くさなければならない。それは、意思決定が、その目的や日標に対して正しくなければならないからだ。厳しい意思決定ほど犠牲が伴うものである。ついつい正しいことを避け、楽な方へ行きがちである。それを防ぐために厳しい議論をする規範と風土を持たなければならない。


④意思決定を実行に移すための仕掛けを意思決定プロセスに組み込む


意思決定が意思決定だけで終わることは多い。しかし、実行が伴わない意思決定は無意味である。従って、意思決定のプロセスの中に、実行を担保する仕掛けが必要である。


⑤意思決定の結果をフィードバックする仕組みや仕掛けをつくる


経営トップによる意思決定を評価するためのルールや仕組みを持つ企業はあまりない。事業戦略が正しかったのかを評価するルールや仕組みを持つ組織もほとんどない。その結果として、意思決定や戦略のレベルアップがなかなか図れないのが現実である。


経営者は、自分たちの意思決定や戦略がどのくらいの成果を生み出したかのフィードバックを得る仕組みを持つべきである。

たとえば、前に紹介したバランスト・スコアカードは、意思決定や戦略といった抽象的になりがちだが極めて重要なものを、管理しやすい具体的な目標や指標、アクションに変え、意思決定や戦略の正しさを、計画。実行・評価段階で、検証できるようにするツールである。


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