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「姑息なマーケティング」でモノが売れる世界を、僕はいいとは思わない

いま僕は「No.1表記」の存在を問題視しています。

・売上No.1
・満足度No.1
・オススメしたい度No.1
・信頼度No.1

などなど。こういった表記を広告や商品紹介のサイトでよく見かけると思います。もちろん、そういう表記自体はいいと思うのですが、こういった表記がお金さえあれば買えてしまうことが問題だと思っているんです。

「No.1」は魅力的なワードです。消費者も飛びつきやすい。そういうワードが「お金で買えてしまう」というのはどうなのか……?

今回のnoteでは、

・「No.1表記」売買のカラクリがどうなっているのか?
・なぜ「No.1表記」が量産されてしまっているのか?
・今後どうなっていくのが望ましいのか?

といったことについて書いてみます。

「No.1」が捏造されている

実は、メーカーや販売会社に対して「No.1」を売っている業者がいくつかあります。

その業者はクライアントから依頼があると、特定の商品が1位になるように、うまーくアンケートを作ります。

たとえば、クライアントの商品の人気が実際は2位だったとします。そういうときは、1位の商品を選択肢から外したうえで「この商品のなかで好きなものを選んでください」と聞いたりする。すると、クライアントの商品が1位になります。

ようするに、これ、No.1の捏造です。

あたりまえですが、No.1という実績は、簡単に作れるものではありません。企業努力を重ね、商品を磨いていって、ようやく勝ち取ることができるもの。だからこそ価値があるわけです。

消費者も「これがNo.1なんだな」「価値があるものなんだな」と思って、その商品を買います。その表記がお金で買えてしまうというのは、やっぱり消費者を騙していることにつながると思うのです。

どのようにNo.1が捏造されるか?

「No.1」の作り方はいろいろあるようです。

さっき言ったように、本当の1位を選択肢から外してしまうのもひとつ。あとは、うまく1位になるように「売上」ではなく「知名度」や「満足度」「人気度」「まわりにオススメしたい度」を聞いたりするのもよくある手法です。

また最近は「WEBサイトのイメージ調査」といった、商品・サービスの価格や品質とは関係ない比較軸でNo.1表記を取ろうとするアンケートも多いそうです。

他にも、母数をすごく少なくしたり、アンケート対象をかなり偏らせたり、1位になった瞬間に調査終了、という手法もあります。たとえば「60代男性」の「◯月◯日〜◯月◯日」の1位を取る、というように、対象や期間をかなり限定して1位になるように仕向けるわけです。

しかも、そのアンケートの方法自体は小さく書きます。そして「No.1」だけをとにかくでっかく表示する。

そうやってNo.1を「作って」いくのです。

モラルハザードが起きやすい仕組み

No.1を売る業者は、ブランドやメーカーからお金をもらってアンケートを実施します。それ自体はおかしいことではありません。ユーザー調査だから別に「悪」ではない。

問題は、ユーザー調査をする「目的とその手法」です。

No.1を取ることを目的に、恣意的な形でアンケートをとることがおかしい。

しかもNo.1を売っている業者は「No.1を裏づけることができたらお金をもらいますね」という成功報酬型のモデルになっているところもあります。業者はなんとかして成功報酬を得たいので、あの手この手でNo.1を取りに行く。

これはモラルハザードが起こりやすい仕組みです。

クライアントの商品をNo.1にするために、選択肢をいじったり、質問をいじったり、もしくは答えの抽出の仕方をいじったりし始めてしまう。

そういった手法がまかり通ると、中長期的に見れば、ユーザーが信頼するNo.1表記全体の評価を下げることにもつながってしまいます。

消費者は「権威性」に弱い

No.1表記の問題は最近、新聞やテレビでも取り上げられていて、社会問題になりかけています。

こうしたNo.1表記が増えた原因は「D2C(自社のECサイト等を通じて直接販売すること)」のビジネスモデルが増えたことと関係がありそうです。

D2CはWEBを使った「広告」や「ランディングページ(LP)」が販売の生命線。みんな広告やLPの表記を改善して、コンバージョンレート(購入率)を上げようと必死になっています。

コンバージョンレートにインパクトを与える重要な要素のひとつが、商品に「権威性」を持たせることです。

GoogleもSEOにおいて「E-A-T」というものを重視しています。(それぞれ「Expertise:専門性」「Authoritativeness:権威性」「Trustworthiness:信頼性」の頭文字をとったものです。)

消費者は権威性や信頼性のあるものに惹かれます。

今はモノが氾濫しているので、特に考えもせずに「1位なんだし、これを買おう!」となりがちです。「1位って書いてあるけど、どういう調査をやったのだろう?」「設問項目は何だったのだろう?」というところまで、ほとんどのユーザーは気にしません。

意識的にも無意識的にも「No.1」が選ばれてしまう。それはNo.1という表記に権威性と信頼性があるから。

そこがお金で操作されてしまっているのです。

規制はどうなっているのか?

こういった表示に対して、法的な規制はあるのでしょうか?

たとえば景表法には「No.1表記するときは、根拠をしっかり明示しなさい」ということが書いてあったりします。

具体的には、

No.1表記をする場合には ①そのNo.1となった事項を客観的に裏付ける資料を準備すること ②その資料の範囲内で表示すること

といった内容が書いてあります。

そういう規制があるにはあるのですが、No.1を売る業者はその規制に引っかからないように、うまくやる方法を知っています。

メーカー側は「No.1」の表記をしたい。だけど、法律的には明確な根拠がないとダメということになっている。そういうなかで、うまくその根拠を作ってくれて、No.1を売ってくれる業者が出てきた。(もちろんその「根拠」というのは見せかけであって、根拠にすらなっていないのですが……。)

ここでうまく「需給」が一致してしまっているのです。

では、どうすればいいのか?

こういう現状に対して、僕らは何ができるでしょうか?

まず、消費者としてできることは「No.1を疑う」ことでしょう。

「第一位」「No.1」などの表記を見かけてもすぐに飛びつかず「それがきちんと検証されたものなのかどうか?」「本当に価値あるものなのかどうか?」を見極めるクセをつける。

なかなか難しいとは思うのですが「No.1を安易に信じない」というのが、ひとつ対策としてはありそうです。

もうひとつはきちんと検証された「No.1」が広まることだと思っています。

「No.1に反応しやすい」という人間の特性は簡単に変えられるものではありません。であれば、メーカー側がきちんとした情報を出すことが解決策としては有効です。

明確な根拠のある正真正銘の「No.1」が広まれば、捏造されたNo.1に騙されるようなことは減っていきます。

手前味噌にはなりますが、僕らのやっている商品比較サービス「mybest」では、それぞれのジャンルに専門性を持った人が、ものすごくコストをかけて商品を検証しています。

実際にモノやサービスを買って、試して、本当に消費者にとっていいものは何かを日々検証している。お金や労力、時間をかけて、正真正銘の「No.1」を生み出しています。

僕らのもとにも、代理店などから「お金を払うから、この商品を1位にしてくれませんか?」と連絡が来たことはありますが、もちろんそういうものは、すべて断ります。そういう目先のお金に手を出すことで、すべての信頼が崩れることがわかっているからです。

(mybestでも「No.1」のエンブレムを売ってはいますが、もちろん企業側から「No.1にしてほしい」といった依頼を受けて売るようなことはありません。きちんと検証して、その結果1位になった商品の企業に営業して、僕らの考え方に共感して買ってもらっています。)

悪貨が良貨を駆逐する

No.1を捏造する業者は、安いところだと数十万円ほどで請け負っているそうです。

そういう業者が増えると、僕らみたいにコストをかけて本気で検証してNo.1を売っている会社が駆逐されてしまいます。

裏事情を知らない消費者からすれば、「業者が恣意的に作ったNo.1」と「mybestのNo.1」は同じくらいの信頼度に見えるでしょう。

これだとメーカー側も「商品を良くするよりも、No.1表記を買ったほうが低コストでいいよね」となってしまう……。

それでは僕らも困りますし、消費者にとってもいいことではないと思うのです。「悪貨が良貨を駆逐する」という言葉がありますが、まさにそういうことになってしまう。

mybestの「No.1」は価値が高いはずだ、という自負があります。

そういう正真正銘の「No.1」が広まることが、捏造された「No.1」を駆逐する一助となるはずだと信じているのです。

(こうした思いに共感していただけたら、ぜひ1位を獲得した企業にはそのエンブレムを買っていただきたいです!!)

商品開発をがんばる会社が損をする

捏造されたNo.1の蔓延を放置していると、正直者がバカを見る世界になってしまいます。

マーケティングに力を入れる会社は、広告にかなりのお金を突っ込みます。No.1表記をうまく使って上手な見せ方をすれば、その商品はインターネット上でめちゃくちゃ売れます。

一方で、商品開発をがんばっている会社は、広告に使えるお金が少なくなりがちです。高い開発費や原材料費を使っているにもかかわらず、マーケティング的な見せ方がうまい商品よりも売れないため、苦しくなっていく。

今、D2Cの世界ではOEM(外部に委託してモノを生産する手法)を駆使すれば、それっぽい商品が比較的かんたんに作れてしまいます。

だからみんな、外側のコンセプトやデザインをいかに尖らせるかといったことに注力しがちになります。

本来は、商品自体の性能や効果などで勝負すべきなのに「いかにうまく見せるか?」で差別化しようとしている。見た目やコピー、マーケティングの勝負になってしまっているのはおかしい。

これが進むと、真面目にやっているメーカーと消費者が損をする格好になります。それは社会的にもマイナスだと思うのです。

適正な競争を起こすために

僕らマイベストの裏テーマは「各産業で適正な競争を起こす」ことです。

たくさんのモノやサービスが溢れるなかで、僕らは消費者に「選択の基準」を示します。消費者が正しい選択をできるようサポートする。かつ、その選択のコストが限りなく低くなるようにします。

すると、メーカー間でも適正な競争が起きるようになると思うのです。

たとえば、洗剤を選ぶのはめんどくさい行為です。どれがいい洗剤なのか、すぐにはわからない。でも、mybestを使ってもらえれば、すぐに自分にとって最適な洗剤がわかります。能動的な選択をしない人でも、mybestを見ることでいい商品を選ぶことができる。

そうなると、マーケティングばかりにお金を使っているような洗剤は売れなくなり、みんなが「いい洗剤を作ろう」と思うようになって開発競争になるでしょう。すると「適正な競争」が起こって、洗剤のイノベーションにつながると思うのです。

このようなイノベーションが産業全体で起これば、みんなの生活はより豊かになるでしょう。大げさかもしれませんが、それが結果的には、人類の進化のスピードを早めることにもつながっていくと考えています。

マイベストは、2023年10月1日の「ステマ規制」開始に先立ち、ステマへの対応方針を明確化する「広告掲載ポリシー」を公開しました。

消費者・ユーザーの信頼を裏切るステマ広告や不当な表示を排除し、インターネット広告業界の健全化に貢献していくことを宣言します。


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