文化通信の星野さんの記事を読んだ感想の感想

 文化通信の星野さんによる以下の記事を読んだ感想の感想です。
“ドイツモデル”からみる出版業界の将来 各社が問われる「マーケットイン」の姿勢とは

 書店営業をやったことがあれば「この店で絶対にこれ売れるよ!」と思っても、「ウチじゃ売れませんから」などと言って仕入れてもらえなかったという経験は必ずあると思います。「いや、だから、絶対売れるって、間違いないって」とは、なかなか伝えられませんが。

 何が言いたいかというと、「出版社は読者が欲しい本を知らない」だけではなく「本屋も読者が欲しい本を知らない」んです(書店からは怒られそうですが、読者が書店に感じる不満の多くは「品揃え」です)。書店が出版社より読者に近い場であることは確かですが、だからといって全てをお見通しというわけではないです。久禮さんの『スリップの技法』にはお店にやってくるお客さんのニーズをどうやって把握し理解するかという話が書かれています。読者のニーズを知るために、出版社も書店も、とても苦労しています。

 小売もメーカーも流通も「消費者の声を聞こうよ」というのが、出版業界における「マーケットイン」の方向性であって、書店からの仕入れが全て正しく出版社からの働きかけが全て間違っているとか、そういうことではありません。そういう風に考えたほうが分かりやすいのは確かではありますが。

 蛇足ですが、実際には「読者も自分が読みたい本を知らない」ことが多いです。だから、店頭展開とか販促とか宣伝とかクチコミが重要なんです。「うぉおおお、この本を今まで知らなかったとは、なんという不覚!!!」「この本のことを教えてくれてありがとう! オレの読みたい本はこれだった!!!」みたいな出会いをどこでどうやって作るか。その際に「店頭」は接点(タッチポイント)として非常に有効なんです。書店営業が大事という話はこのあたりでつながります。

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