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"自分らしさ"という幻想に捉われないように

 上記のnoteにおいて、今月ひらやまさんがペアnoteという素敵な企画を始められたので、今回は、その中のテーマの一つである”自分らしさ”について、noteを綴りたいと思います。


 ”自分らしさ”と聞いて、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか?ある人は、ありのままの自分でいられる時、自分らしさというものを感じるという人もいるかもしれません。またある人は、仕事や趣味に没頭している時に、自分らしさを感じるという人もいるかもしれません。さらには、本当の自分がわからないという人もいるかもしれません。しかしながら、”自分らしさ”なんてものはあるのでしょうか。

 僕は”自分らしさ”なんてものは存在しないと考えています。ここで少し、例えを挙げてみます。アイスクリームをコンビニで買う時、あなたは何故そのアイスクリームを買ったのか、説明できるでしょうか。多くの人はこう説明するでしょう。小腹が空いたからとか、アイスクリームが好きだからとか、あるいは甘いものが好きだからなど。でも、それらは本当の理由でしょうか。ひょっとしたら、昨晩にアイスクリームのCMを観たからなのかもしれない。あるいは、1週間前に友人がアイスクリームを美味しそうに食べているのを、見たからなのかもしれない。このように、人は自分の行動の本当の理由が何であるのか、正確にはわからないのです。


 近年の脳科学では、人は普段どんな服を着るかや、何を食べるか等のほとんどの行動は無意識によって事前に決められており、後から意識がそれなりの理由をつけて、自分自身で決めたのだと判断すると考えられています。先程のアイスクリームの例で述べるなら、ひょっとしたら、もっと別の理由からアイスクリームを買おうとしたのかもしれないのに、後付けで理由をつけて、自分自身でこのアイスクリームを選んだのだと考えるのです。”自分らしさ”という問題に照らし合わせて考えるなら、”自分らしさ”や”本当の自分”というのは一体何なのかということを突き詰めて考えれば考えるほど、何だかわからなくなるのです。また、一方で、本当の自分はこうであると考える人はきっと、自分自身でそう思い込んでいるだけなのかもしれないのです。

 また、人はその場その場で色々な自分を演じます。それに、日々人は変化しています。昨日の自分はおろか、一秒前の自分と現時点での自分でさえ、もはや別人のようなものなのです。また、他人から見た自分も、その他人の数だけ違うのです。それ故に、もし”自分らしさ”というものがあるのだとしたら、それはきっと、自分自身がコントロールできない無意識の部分や、その時々の状況で見せる自分、また他人から見た自分、そして自分が自分だと考えている自分、これら全てを包み込んだものが”自分らしさ”であり、”本当の自分”なのです。


 ”自分らしさ”というものを考えることは、自分の将来や理想像をある程度明確にはしてくれます。そしてそれについて考えれば、思考や感性も磨かれるでしょう。しかしながら、のめり込んではいけません。そして、自分というものを決めつけるのも良くないです。それらによって、いつまで経っても行動できなくなったり、理想像と現実とのギャップに苦しんだりすることになります。また、自分自身の秘めたる可能性を狭めてしまうことにもなりかねません。もし、”自分らしさ”について考えすぎて苦しくなったのなら、とにかくその場その場で、少しでもいいから興味を持ったことを次々とやってみてください。また、会いたい人に会ってみるのも良いかもしれません。そうすると、そのうちに新たな自分を発見できるかもしれません。”自分らしさ”という課題に悩むのではなく、”新たな自分の発見”を楽しんでみる方が面白くないですか。

 ”自分らしさ”というものは、わからないからこそ美しいのです。わからないからこそ魅力的なのです。どうか、”自分らしさ”という幻想に捉われないでください。

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