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国債で日本がつぶれる?

「国の借金過去最大 財政状態が一段と厳しく」などの新聞記事の見出しで、巨額の国債残高が発表されるたびに、真面目な国民は、これから一体どうなってしまうのだろうかと、不安に駆られる。

しかし、国債は国の借金ではなく、政府の国民からの借金である。つまり、国家という枠組みの中での、内々の貸し借りとなる。

令和5年12月末における、国庫短期債券(T-Bill)を除く、国庫債券(国債)の
残高は1,081兆円である。
国庫短期債券は、財政資金調達のために発行される1年以下の短期債券であり、1年以内に償還されてしまうため、国債残高の問題対象外である。

すなわち、政府は国庫短期債券を発行して資金を調達し、年度の政府支出を賄う。翌年度に税金を徴収して、その金で前年度の国庫短期債券を償還する。
しかし、税収で償還できなかった国庫短期債券部分が、新規の国庫債権(国債)として発行されることになる。

国庫債権(国債)残高1,081兆円の内、約54%(581兆円)を日本銀行、金融機関である銀行&生保が約29%(318兆円)、年金関係で約8%(85兆円)、海外が約7%(72兆円)、家計が約1%(14兆円)、その他約1%(10兆円)を、それぞれ保有している。

国債残高の半分以上を、政府と一心同体の日銀が保有しており、また、安定保有者である年金を含む金融機関が37%を保有しており、両者を合わせると残高全体の91%を占めている。

国債残高が多いと言っても、政府の発行した国債を日銀が持っており、その分581兆円を相殺すると、政府セクター以外の民間セクターの保有分は500兆円となる。
令和5年における内閣府発表による実質GDPは約559兆円であり、ネットの国債残高のGDP比率は89%となるため、国債残高はGDP以下となる。

政府の発行した国債を、日銀が市中銀行から買い取る時、日銀の仕訳は、「(借方)国債 581兆円/(貸方)当座預金 581兆円」となり、日銀が市中銀行に581兆円の通貨を供給したことになる。
つまり、日銀による国債の買いオペレーションによって、民間セクターに通貨が供給されたのである。

政府セクターにおける連結仕訳によって、「(借方)〔日銀が回収した〕国債 581兆円/(貸方)〔政府が発行した〕国債 581兆円」によって、発行分と回収分を相殺する。

日銀の買いオペレーションの後でも、依然として民間セクターには500兆円の国債が保有されている。この500兆円の内8割以上が、金融機関や年金機構により安全資産として保有されている。

ここ2~3年の予算ベースでは、歳入に占める新規国債の発行による収入額は35~37兆円で、歳入の31~32%を占め、一方、歳出では利払いと償還を含めた国債費が24~28兆円で、歳出の23~25%を占め、その結果、毎年10兆円程度、国債残高が増加している。
財務省は国債残高を増加させたくない。

このため、財務省や財務大臣が、国会で質問に対して、「これ以上の国債残高増加は市場の信認を損なうことになる」などと答弁している。
しかし、なぜこれ以上の国債残高の増加が、市場の信任を損なうことになるのか、客観的証拠が示されないため、必ずしも国民からの理解が得られているわけではない。

「国の借金」1286兆円、23年12月末時点 過去最大 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

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