0ゲートからの使者「40」
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コード
大きな扉が開かれ、大広間に人々がたくさん集まっているのが見えた。
皆、SF映画なのか古代ローマなのかわからないような服装をして口々に何かを大声で話していた。
前列に白く細長いテーブルが置かれ、有識者らしい人物がすでに何人か着席していた。その三席開いたところに三人は慌てて腰を下ろした。
それを待っていたかのように議長らしき男性が話し出す。
難しい議論が続き、玲衣はなんのことなのかさっぱりわからずにいたが、後方の大きなスクリーンに映し出されていた映像を見て息を飲んだ。
それはぶくぶくと緑色の泡沫を不気味に吐き散らす太陽だった!
何か大変なことが太陽に起きているらしい。
玲衣は全く事情が飲み込めなかったが、周囲の緊迫した雰囲気から事の重大さが伝わってくる。
そしてどうもテラスとスーサと玲衣の三人は、その案件についての専門家のようだった。皆が意見を求めている。
テラスとスーサが応答するのを玲衣は黙って聞くだけだったが、ところどころ理解したのは、この太陽はもうじき消滅するかもしれないとのこと。
玲衣はぎょっとした。
今、誰かが核融合って言った?
まさかこの太陽が核爆発してしまうの?
ブラックホールがどうしたこうしたって?
宇宙のバランスが崩れるだろうって?
そんな恐ろしいこと!
ああでもこれは夢、これは夢だから
自分自身に言って聞かせるけれど、とても夢とは思えないリアリティだった。
専門家たちはありとあらゆる対策を講じていた。
誰かが、「もう話し合っている時間はない!」と大声で叫んだそのとき、ドーンと大きな振動がドームに響いた。あちこちで悲鳴が上がった。
スーサがブレスレットを慌てて開き操作した。
「もう猶予がありません! 予想時間よりだいぶ速まっています!」
スーサの声を受けてテラスが叫ぶ。
「すぐに脱出しましょう! もう一度衝撃波が来たらここはもう、持ちません!」
まるで映画のような光景が目の前で繰り広げられていた。
玲衣は何がなんだかわからないまま、走り出した二人の後を追った。
地響きが聞こえ、床が地震のように揺れ出した。
テラスが振り返り二人に向かって叫んだ。
「後は頼んだわよ!」
「レイ、では計画通りに!」
スーサの言葉にレイは焦った。
「エッ! 何? 何? 何すればいいの!?」
スーサは一瞬いぶかしげに玲衣を見つめたが、その黒い瞳がハッと見開かれすべてを理解したという表情になった。
「レイ、いいですか。このドームごとパラレルワールドに次元上昇することになっているのです。私とテラスはそれぞれの任務を果たします。レイの任務はあの玉座の両脇のオベリスクにある鍵穴にそのクリスタルを差し込むことです。それがイグニッションになります」
スーサが指さした先には二つの赤い玉座が並び、その両脇に大きな透明のオベリスクが見えた。
玲衣は思わず胸のペンダントのクリスタルをぎゅっと掴んだ。
「次にコードを入力する必要があります。それはレイにしかわからない数字です。4桁のコードです」
「そんな! 私、そんな数字知らないわ、これは夢の世界でしょ、私には無理よ」
「レイ! スーサ! 何をしているの! 急いで!」
テラスが皆を誘導しながら叫んでいた。
スーサの黒い瞳がじっと玲衣を見つめた。それはいつも知っているスーサの瞳だった。
玲衣の頬を両手で力強く挟み、
「君にはできるよ、玲衣」
そう言い残し、スーサは走り去った。
ドーン!とまた凄まじい音が鳴り響き、ドームの壁が振動した。
玲衣はよろけて倒れた。
その瞬間、これは夢ではなく未来生の記憶だと玲衣は唐突に思い出した!
どういうわけか現代の玲衣が遥か未来のレイとして今ここにいることを理解した。
どうしてなどとこの状況下では考える猶予がなかった。
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