阿部としみ

数秘術家です。コロナ禍に書き溜めた数秘術をモチーフにしたファンタジー小説を連載していき…

阿部としみ

数秘術家です。コロナ禍に書き溜めた数秘術をモチーフにしたファンタジー小説を連載していきます。猫とか料理とか旅行とか水彩画とか昭和の歌謡曲とか好きです。http://www.tsukiyomi8.com

最近の記事

老いの香り馥郁と

部屋のどこからか甘い柑橘系の香りがしてきた。 オレンジも買っていないのに? 何か洗剤か化粧品の匂いだろうか? 私は首をかしげて家人に匂いがするか聞いてみたがわからないらしい。 翌日もそのかすかな甘い香りが鼻腔に感じられる。 でもいったい何の匂いなんだろう? キッチンの片隅に匂いの正体がひっそり鎮座していた。 しなびれた無農薬の国産檸檬。 使いきれずにそのまま冷蔵庫にいれてあったもので そろそろ捨てないとと思い外に出しっぱなしにしていたんだった。 そのしなびた檸檬か

    • 数秘術で読み解く2024年

      衝撃的な幕開けとなった2024年。 いろいろ思うところが多く、毎年恒例のユニバーサルイヤーナンバーリーディングが遅くなりました。 あらためまして今年もどうぞよろしくお願いします。 さて、本題の前に昨年2023年の振り返りを短く。 2023年、7の年を数秘で振り返る 昨年はユニバーサルイヤーナンバー(その年の普遍的な影響力をあらわす数字)7でした。 7は隠ぺい、疑惑、暴露、ITなどのテクノロジーが代表的なキーワードですが、まさに…といった一年だったと思

      • これを味わいたくて私は生きてる

        久しぶりに近所の川辺を散歩。 水辺ってなんかホッコリする。 そこに集っているみんなからいいエネルギーが出てる気がする。 歩きながらいつも観察が楽しみ。 今日の第一ホッコリ発見。 おじいちゃんが川向うのベンチにいる二人のおばあちゃんたちに向かい、 「元気ですかぁ?」と呼びかけた。 顔見知りの常連さんか。 するとおばあちゃんが、 「元気で~す!今おいしいもの食べてました~」と返事。 おじいちゃん、頭の上でおっきな丸を作って笑ってた。 なんてホッコリ。 今日は

        • 楽しいだけじゃダメなのか?

          「アナタ! 楽しいだけじゃだめなのよ」 その言葉にずっともやもやしていた。 半年通った水彩画教室を諸事情でやめることにした。 教室のオーナーマダムにもご挨拶に行ったときのこと。 マダムはおそらくご自身も芸術関係者と思われ。 やめることを告げてお世話になりました、というと、 「あなた上手なんだからもっと上を目指さなければ」、と言われた。 実はそこをやめても同じ先生のほかの教室にも通っていたし、絵は続けていく所存だったのだが長々説明も面倒だったので、 「でも半年間楽しか

        老いの香り馥郁と

          小説なんて書けるかいなと思っていた

          あれは中学だったか、国語の授業で小説を書く、というのがあった。 少女漫画頭だった私は、萩尾望都先生の世界観を真似しようといさんで書き出したものの、結局最後まで仕上げることができなかった。 出来の良し悪しは置いといてみんな提出してたのにね。 想定内(笑) タイトルだけはカッコよく、ドーバーの白い鳥、だったような(笑) 中2病すぎる(笑) 本が大好きだったので、小説は昔からよく読んでいたが、その挫折があったため自分で書くなんて発想はこれっぽっちも持っていなかった。 なの

          小説なんて書けるかいなと思っていた

          0ゲートからの使者「44」

          前回はこちら エピローグ いつものように6時30分にアラームがとげとげしく鳴り響き、布団からのそりと手が出て音が消された。 10分後に再び鳴り響いたスヌーズでようやく玲衣は動き出す。 いつものように洗面所に行き、洗顔をすませてからキッチンへ行く。 いつものようにコーヒーを淹れ、リビングへ移動する。 テレビをつけ、その前のソファに座ってコーヒーを飲みながら、スマホをチェックする。それが玲衣の朝の日課だった。 しかし、ついついスマホに見入ってしまうのも毎度のことではあっ

          0ゲートからの使者「44」

          0ゲートからの使者「43」

          前回はこちら 秋と春の間に 玲衣の夢の中に彼らが現れたのは、ちょうど春分の日。 満月が美しい夜だった。 夢の中で、月明りだけの仄暗い場所にひとりで立っていると、 「玲衣、玲衣……」 と、どこからか自分を呼ぶ声が聞こえた。 「誰か私を呼んだ?」 きょろきょろとあたりを見渡すが誰の姿もなかった。 なぜかとても懐かしい、胸の奥が熱くなるような声だった。 目を凝らすと、遠くにぼんやりと光が見えた。 暗闇の中、満月の光でそこだけスポットライトがあたっているように浮き上がった

          0ゲートからの使者「43」

          0ゲートからの使者「42」

          前回はこちら クリスタルの守護者 朝、いつものように半分目を閉じながらベッドから起き上がった玲衣は、足を床についたとたん、イテテテと叫んだ。足も腰も打撲のような痛みがあった。 「あれ、どうしたんだろ、嫌ねぇ、まだアラサーなのにおばあさんみたい。寝違えたのかなあ」 寝ぼけ眼で腰に手を当てながらよろけつつ洗面所に行き鏡を見ると、頭髪の中にキラリと光る白いものをいく筋か発見。 「ひぇえ、ショック! 見なかったことにしよ」 そうつぶやき、顔を洗う。 「はぁーあ、また今週も

          0ゲートからの使者「42」

          0ゲートからの使者「41」

          前回はこちら 何人もの人が重なりあって倒れていた。 ドームの壁は熱にも風にも耐えられるものであったはずだが、空気は灼熱を帯びてきていた。 玲衣は必死で身を起こし、よろけながら前方の玉座に向かった。 私の使命 私は責任を果たさなきゃ 私はやり遂げるんだ! うわごとのようにそうつぶやきながら膝をついて階段を這い上っているときに、玉座両側それぞれにある大きな縦長の2枚のタペストリーに気づいた。 左に白い虎、右に黒い猫が描かれていた。 「ああ! イン! ヤン! こんなと

          0ゲートからの使者「41」

          0ゲートからの使者「40」

          前回はこちら コード 大きな扉が開かれ、大広間に人々がたくさん集まっているのが見えた。 皆、SF映画なのか古代ローマなのかわからないような服装をして口々に何かを大声で話していた。 前列に白く細長いテーブルが置かれ、有識者らしい人物がすでに何人か着席していた。その三席開いたところに三人は慌てて腰を下ろした。 それを待っていたかのように議長らしき男性が話し出す。 難しい議論が続き、玲衣はなんのことなのかさっぱりわからずにいたが、後方の大きなスクリーンに映し出されていた映像

          0ゲートからの使者「40」

          0ゲートからの使者「39」

          前回はこちら 0ゲート 「玲衣がどうやら記憶を取り戻してきているようよ」 玲衣の無意識である夢の世界を担当しているヤンがそう告げると、スーサが静かにうなずいた。 「いよいよ、でしょうか」 「いよいよね」 テラスとスーサはお互いを見つめたままうなずきあった。 その夜、夢かうつつかわからない状態で玲衣はベッドに横になっていた。 何者かの気配がベッドサイドにやって来たのを感じた。暗闇の中で目をこらすと、それはインとヤンだった。 「ん……? イン? ヤン?」

          0ゲートからの使者「39」

          0ゲートからの使者「38」

          前回はこちら 第6章 0ゲート 魂の記憶 三寒四温とは言うものの、3月に入り寒い日々が続いている。その夜は凍てつく空に満月が冴え冴えと浮かんでいた。 玲衣は今、深い眠りの中にいて、ある夢を見ていた。 待合室と思しき白い部屋の一角に何人かの人が腰かけている。自分もその中で何かを待っていた。 ある契約に基づいて何かを一緒に果たすグループらしかったが、そこにいる人たちはまるでホログラムのようだった。 ひとり、ふたりと呼ばれては、ガイドとおぼしき人物と共に部屋を出ていく。

          0ゲートからの使者「38」

          0ゲートからの使者「37」

          前回はこちら 先週のことだった。 瀬田さんの快挙の報告からテラスたちとこんな話となった。 「占い嫌いと言っていたのに瀬田さん、私の数秘のちょっとしたリーディングは覚えてくれていたみたいなの。それで婚活するようになって未来の旦那様に出会えたなんて、瀬田さんすごいよね」 「前にも言ったけれど、人は信じたいように信じるものよ。瀬田女史の中で、変わりたいという気持ち、今が変わるチャンスではないかという直感がそのタイミングを引き寄せたのよ。まあ、瀬田女史の立派なところは自分の直

          0ゲートからの使者「37」

          0ゲートからの使者「36」

          前回はこちら 十和子 「ねぇ玲衣、聞いてるの?」 十和子からの電話に適当に相槌を打ちながら玲衣は考え事をしていた。 あと一か月足らずでテラスとスーサのレクチャーが終了してしまう。 数秘術や数を通じてのこの森羅万象への理解はまだまだほんの入り口で、二人が去った後、どうしたらいいかと考えを巡らしていたのだった。 インやヤンとも夢の中でおしゃべりができなくなってしまうかもしれない。そして本当は考えたくないが、ひとりになった自分はどうなるのか、ついつい考えてしまっていたのだ

          0ゲートからの使者「36」

          0ゲートからの使者「35」

          前回はこちら 魔法の眼鏡 カレンダーを見て、2月も残すところあと数日と気がつき、玲衣は驚いた。 しかし、まだ外に出ると北風が冷たい。 久しぶりに川辺を歩く。 陽だまりの中、水鳥たちが頭を真っ逆さまに水に突っ込み餌を物色しているのをぼんやりと眺めていた。 土手の並木道には、犬を散歩させる人、ジョギングで走り去っていく人、釣り糸をたれる人、ベビーカーに乗せた赤ちゃんに話しかけながら歩く人、ベンチに腰掛け世間話をする人…… それぞれ思い思いに川辺の時間を味わっていた。

          0ゲートからの使者「35」

          0ゲートからの使者「34」

          前回はこちら LOVE 「今年はボッチか……」 スマホに上がってくるバレンタインのチョコレートの数々を見ながら独り言を呟く。 「まったく厄介な行事だよね。所詮お菓子会社のプロモーションなのにみんなまんまと乗せられちゃってさ」 去年まではバレンタインは玲衣の中で一大イベントの一つであったのに、事情が変わると嫌味の一つも言いたくなる。でも、そう言った後で、ふっとスーサの顔が浮かんだ。 もしチョコをプレゼントしたらスーサはどんな顔をするかな で、おそらく横からテラスが

          0ゲートからの使者「34」