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ブランドの役割とは何か?

本題に入る前に。

先日、久しぶりにスーツを着て会社に行き、移動中に電車に乗ることがありました。前の席が空いたので、隣に70代位の夫婦が立っていたので、席に座るように促したら、「仕事をしている人こそ、疲れているんだから座りなさい」と、逆に強く促され、圧倒されて思わず座ってしまいました。
日本の70代はとてつもなく元気だなぁと思った今日この頃です。


さて、本題に入ります。

前回は、「何のためにブランディングするのか?」いわゆるブランディングの目的を中心に見てきました。今回は、ブランドの役割について考えてみたいと思います。

ブランドの役割とは、しいていうならば「購買の意志決定に必要な補完情報。意志決定に必要な補完情報があれば、消費者は購買行動で「リスク回避」と「探索コストの低減」というメリットを受けることができるのです。
※「リスク回避」は後ほど詳しく触れます。

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上の図を見ながら、もう少し分かりやすく説明しますね。

例えば、お店の場合で考えてみます。顧客があなたのお店に初めて行く場合、あなたのお店のことを一部だけ知っているか、もしくは全てを知らない状態です。そこで「行こう」という意志決定ができるまで、あなたのお店の情報を集めようとするはずです。

すなわち、顧客があなたのお店に行くためには、行動を起こす意志決定のための情報が必要となるのです。

美容室の例でいうと、少しでも来店する見込みのある消費者がチラシなどを見たとき、「このお店は私に合うヘアスタイルにしてくれるのかしら?」
「スタッフの対応はどうなのかしら?」「すてきなお店だったらいいのに…」と考え、さらに情報を集めるためにホームページを見たり、店の前を通り過ぎるふりをして確認したりして、「行こう」という意志決定に至ります。

様々な情報を集めても、それでも友人や知人に紹介されなければ、その人は行かないかもしれません。消費者は「リスク回避」を意識的・無意識的に考えて、意志決定に至るのです。

回避したいリスクとは、以下のような種類があります。

【機能的リスク】
購入した製品が、購入者が期待した機能を果たさないのではないだろうか?

【身体的リスク】
購入した製品が、使用者や周囲の人々の健康や身体に危害を加えるのではないだろうか?

【金銭的リスク】
購入した製品の提供する価値が、支払った価格に見合わないのではないだろうか?

【社会的リスク】
購入した製品が、社会的な迷惑をもたらすのではないだろうか?

【心理的リスク】
購入した製品が、使用者の精神・心理に悪影響を及ぼすのではないだろうか?

【時間的リスク】
選択の失敗などにより他製品を探索するという機会費用が発生するのではないだろうか?

出典 : ケビン・レーン・ケラー『戦略的ブランド・マネジメント』


「このお店に行ってみよう!」と消費者が意志決定をするには、「リスク回避」するために事前に情報を得なければなりません。シャンプーや飲料などの日用品や低価格商品の場合、カテゴリー内で商品の種類が多く、購買の意志決定のための選択肢が複雑となるので、よほどこだわりのある人でなければ、いちいちその情報を得るのが面倒に感じるはずです。

つまり、消費者は、購買の意志決定に関わる情報の補完があれば、「探索コストの低減」、いわゆるお店を探す手間が省けることができるのです。
だから、大手メーカーは大量にテレビCMなどを投入し、ブランドについて知ってもらい、どれが望む商品であるかという意志決定をしやすくしているわけです。
※以前は、テレビCMが最大の認知媒体ですが、今はそうとも言えませんが。

ブランドによる信頼関係が成立するには、ブランドが約束・保証しているブランド・プロミスが、品質において達成されていることが暗黙の前提となります。飲食店、美容室、マッサージ業などのように、一度入店したらよほどのことがない限り、サービスを受け終わるまで滞在せざるを得ないような業種の場合、消費者にとっては、「リスク回避」のための情報をより慎重に調べる可能性が高いといえるでしょう。

こうした業種の場合は、情報量というよりは、技術やサービスなどの「機能的価値」の質、価格、そして様々な「情緒的価値」など、情報の中身が重要となるのです。

情緒的価値は、例えば、スタッフの対応や店の雰囲気など、比較的言語化しやすい情報や、「何となく楽しそう」、「いい気分になりそう」、「何か私のことを分かってくれそう」などの、言葉になりにくい嗜好性や体感性、自己同一性があります。さらに、「リッチな気分を味わえそう」、「非日常的な雰囲気が味わえそう」など、その店が持っているステータス性や世界観が影響することも充分にあり得ます。

もちろん、一度でも来店した場合は、この来店に至る意志決定のための情報がほぼ埋まりますから、あとは商品やサービス、対応などの質に判断基準が移っていきます。

今回は、ブランドの役割について考えてきました。

次回はいよいよ、「そもそもブランドとは何か?」という本質的な問いについて踏み込んでいきたいと思います。

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