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娯楽映画研究家「ブギウギ日記」PART7

第20週 ワテかて必死や 2月12日〜16日


ワテかて必死や #1

今週は櫻井剛脚本。1948(昭和23)年「#東京ブギウギ」が大ヒットして、スズ子は大忙し。楽屋では山下が愛子の面倒を見ているが、愛子は手が負えないほど元気。山下としては早く第二弾が欲しいところだが、羽鳥善一は映画・レコード・舞台の依頼が殺到。

てんてこ舞いの忙しさで新曲に手をつける余裕がない。催促に来る人々に「信じてお待ちください」と強い口調の羽鳥。山下にもつい「信じて!」と声を荒げるが「お待ちください」と微笑むのがおかしい。

実際、1948年の服部良一先生は多忙を極めていたが、笠置シヅ子のために、3月から4月にかけて「さくらブギウギ」「ヘイヘイブギー」「恋の峠路」を提供。映画『舞台は廻る』『春爛漫狸祭』など笠置シヅ子出演の映画音楽も手がけている。「#ブギウギ」ではおそらく次は「ジャングルブギー」誕生だろう。

一方、妊娠中のスズ子を「腹ボテ」と書いた鮫島記者が、今度は「コブ付き」と嫌な表現でスズ子の記事を書いて、さらには「夜の女たちをどう思うか」の取材。「娘さんが、彼女たちのような生き方をしても構わないんですか?」の挑発にスズ子は「この子には胸を張って生きてほしい」ときっぱり。

「生きるためにしていることを他人はとやかく言えませんへん」と持論を展開。これが思わぬ波紋を呼ぶことになる。ガード下の靴磨き少年・達彦(蒼昴)も登場。インチキをして強かに生きているが彼も必死。病気の母親を支えるために靴磨きをしている。

この時代、上野には戦災孤児が浮浪児となり、生きるために必死だった。達彦も病気の母を支えるために働いていた。達彦が「東京ブギウギ」を口ずさむと「お母ちゃんその歌嫌いなの」と母親。

今週は、こうした敗戦後の人々とスズ子のドラマ。ある日、スズ子の楽屋に、有楽町の街娼のリーダー、ラクチョウおミネ(田中麗奈)が猛烈な勢いでねじ込んでくる。「しらばっくれるんじゃねえよ、バカにしやがって、あたいら甘く観たら承知しないよ」

鮫島の記事を読んでの猛抗議。田中麗奈のエネルギッシュなキャラクターが強烈。これも史実で、ラクチョウのお米という街娼のリーダーが、笠置シヅ子のファンとなり、会いたがっていると聞いた笠置は、彼女たちとの交流を始めた。それが今週のテーマ。

2月24日(土)
徳島県板野郡北島町立図書館・創世ホール 佐藤利明講演会「笠置シヅ子ブギウギ伝説」開催
14時開場。14時30分開演。入場無料。
笠置シヅ子さんと服部良一さんの音楽人生を昭和のエンタテインメント史と共に語ります! ぜひ、いらしてください!

3月22日(金)書泉グランデ
#ブギウギ」脚本・足立紳さんと、「#笠置シヅ子ブギウギ伝説」佐藤利明が、「ブギウギ」ファイナルに向けてのトークイベントを開催します!

ワテかて必死や #2

ラクチョウのおミネ篇。「真相婦人」に鮫島記者が書いた記事に激怒したおミネが楽屋に乗り込んできて啖呵を切る。スズ子は「夜の女の味方」という切り口の記事。「あたいら甘くみたら承知しないよ」「あんた、どうやったら、あたいらを守るっていうの?」

田中麗奈がイイ。『肉体の門』のボルネオ・マヤも少し入っている。朝ドラで「パンパン」が飛び交い、戦後の「闇」にスポットを当てる。スズ子は圧倒されて自分の意見も言えない。泣き出す愛子を抱き抱える。そこでおミネの態度が少しだけトーンダウン。

今日は久しぶりに秋山美月(伊原六花)が訪ねてきて、USKの仲間たちの近況を話す。リリーは酒造会社の御曹司と結婚。あの頃の仲間では秋山だけが現役。鮫島の「コブ付き」記事を見て、悲しみのどん底にいると思ってたスズ子が「東京ブギウギ」で日本中を励ましているに感動。自分も頑張ろうと思ったと。

ゴシップ記事は「罪」だけでなく「功」もある。ここから終盤までの「#ブギウギ」は、僕が「ブギウギ伝説」を執筆したのと同様、当時の雑誌や新聞記事、笠置シヅ子さんの座談会などでの発言がベースに。というのも笠置さんの自伝は昭和23年に刊行されているので、それ以降についてはメディアの記事やレコード、映画の記録、そして服部良一先生の自伝によるところが大きい。なので鮫島の雑誌記事のみたいなものから「真実」を精査してエピソードを綴っていくことになる。

その中でもおミネのモデルとなった「ラクチョウお米」と笠置さんの交流は、敗戦後、一人で生きていかねばならなかった女性たちの物語を伝えてくれる。スズ子は、おミネともう一度会って納得するまで話したい。しかし山下も佐原も制止する。

それでも思い立ったら即行動のスズ子。山下に「半端な気持ちではおられへん。あれからずっとモヤモヤしてますねん。」と告げて夜のガード下へ。ここからは、田村泰次郎原作「肉体の門」とその映画化でお馴染みの世界が展開。カラフルな衣装の「夜の女たち」。

女たちに取り囲まれて「ヤキを入れてやる」と凄まれる。しかし「東京ブギウギ」の福来スズ子と知ると、女たちが急に華やぐ。ファンなのである。でも本物かどうか。「歌って見せてよ」歌い出すが緊張のあまり声がうまく出せない。「全然違うじゃないか」

ツッコミに対するスズ子のリアクションがいちいちいい。ちょっとした受け、ボケ、意を決する表情。緊張と決意、そして戸惑い。趣里の芝居、本当にいい。そこへ、おミネ登場。「わざわざ乗り込んで来るなんて、いい度胸だね」続きはまた明日!

ワテかて必死や #3

ラクチョウおミネ(田中麗奈)の部屋に連れ込まれたスズ子。「誤解を解きたいんです。ワテはあんたさんらを決して見下しているわけではありまへん」立場が違うとおミネ「じゃ、あんた好きでもない男に抱かれたことはあるのかい?」

田中麗奈が片膝立てて、実に迫力がある。「肉体の門」のボルネオ・マヤみたい。戦争で何もかも失った女たちが、生きていくためには街娼になるしかなかった。「誰かが勝手に初めて、勝手に負けた戦争だろ? こんな女にしたのは誰だい?」

菊池章子の「星の流れに」が大ヒットしていた頃。この歌の「こんな女に誰がした」のフレーズは、彼女たちの気持ちでもあった。「そんな汚い世間に持ち上げられて、お気楽に歌っているあんたとは立場が違う」とおミネに言われて、スズ子が檄する。

「お気楽て、ワテの気持ちなんか、何もわかってへん。死に物狂いじゃ!」「お母ちゃんが死んで、戦争で弟が死んで、しまいに大切な人が結核で死んでしもうた」「いまだに、あの人の丹前、抱いて寝てるわ」心情を吐露するスズ子。女たちは黙って聞いている。

だけど、愛助が残してくれた愛子がいる。何がなんでも育てなければならない。娘を守るためには「寂しい」なんて言ってられない。辛くても、へこたれても、笑って歌い続けなければならない。「ワテかて必死や!」本当に趣里が素晴らしい。

自分は何のために「歌い続けるのか?」。何のために生きるのか? 福来スズ子のアイデンティティーの発露である。その言葉におミネたちは、スズ子も自分と同じだと理解する。このシンパシー、和解が絆となっていく。見事な展開である。

同時代を描いた最近の大作映画には、この「時代感覚」が欠落していた。「ブギウギ」では敗戦後の人々の強さと逞しさがイキイキと描かれている。個々のドラマにはそれぞれ悲しく辛いものがある。しかし象徴として時代を描くことの意味が、ここにあるのだ。

そしてガード下の靴磨き・達彦(蒼昴)がボス格の少年たちに「ショバ代寄越せ」と殴られて売上を巻き上げられてしまう。「何してんじゃ、あんたら!」とスズ子の啖呵。かっこいい。怪我をした達彦を家まで送っていく。そこでスズ子は、達彦の病気の母が、少女時代からの親友・タイ子(藤間爽子)だったこと知る。

しかしタイ子は「スターさんには関係あらへん、施しを受ける義理はありません」とスズ子を拒む。走馬灯のように蘇るタイ子との想い出。ここにも戦争で運命が狂ってしまった「女」が…

ここでタイ子を演じている藤間爽子が、戦後の娯楽映画には欠かせなかった女優・藤間紫の孫であることが大きな意味を持ってくる。藤間紫さんは敗戦の時に、相当な苦労をした。「徹子の部屋」などで語っていた話が、記憶の片隅から蘇る。それが重なるのだ。

今日は、まさに菊池章子の「星の流れに」の世界。歌は流れなくても、その主題とリンクして、メロディーが、歌声が聞こえてくる。「こんな女に誰がした」のフレーズが聞こえてくる。「ブギウギ」はきちんと敗戦後の人々を描こうとして成功している。

残念ながら『ゴジラ−1.0』にはなくて、「#ブギウギ」にはあるのは焼け跡の人々のエネルギー。井上ひさしが「ひょっこりひょうたん島」主題歌で「泣くのはいやだ 笑っちゃおう すすめ〜」と書いた意味。それは敗戦後の人々の生きるモチベーションでもあった。

少なくとも、僕は「ひよっこりひょうたん島」の歌に、それを感じる。何もかも失い、絶望のなかにいて、つらいけど、生きるための「笑っちゃおう」だった。その象徴が「東京ブギウギ」なのだ! 

歌のチカラは大きい!

だから戦後の娯楽映画では、焼け跡のシーンに象徴として「東京ブギウギ」が流れ続けてきたのだ。(まぁ、ゴジラの設定の頃にはまだこの歌が出来る二ヶ月前なのだけど・笑)

いくらVFXが素晴らしくても、田中麗奈に「ふざけるんじゃないよ!」と叱られちゃうぞ(笑)

それほど、今日の「ラクチョウおミネ」たちの怒り、悲しみは大きかった。菊池章子の「星の流れに」が脳内でずっと流れていた。やっぱり「#ブギウギ」が優れているのは、そういうところなのだ。

3月22日(金)書泉グランデ

#ブギウギ」脚本・足立紳さんと、「#笠置シヅ子ブギウギ伝説」佐藤利明が、「ブギウギ」ファイナルに向けてのトークイベントを開催します!

ご予約はこちら↓

2月24日(土)

徳島県板野郡北島町立図書館・創世ホール 佐藤利明講演会「笠置シヅ子ブギウギ伝説」開催

14時開場。14時30分開演。入場無料。

笠置シヅ子さんと服部良一さんの音楽人生を昭和のエンタテインメント史と共に語ります! !

昨年、編集者から「笠置シヅ子さんの本を書きませんか?」と依頼されて、まず考えたのが「敗戦後のエンタテインメントの熱気」をいかに再現するか? ブギの女王が生きた時代を描くと言うことは、時代の空気を読者に伝えることでもあるので。ぜひ、ご一読ください!

ワテかて必死や #4

スズ子はガード下の靴磨きの少年・達彦の病気の母が、幼馴染のタイ子(藤間爽子)と知って、なんとかしてやりたいと行動する。タイ子に「施しはして欲しくない」と拒絶されたものの、達彦は「でも俺は好きだよ『東京ブギウギ』」とスズ子に心を開く。

父が戦死しても、母・タイ子が病気になっても、親戚や周りの人は誰も頼りにならなかった、と達彦。スズ子は「おばちゃんを頼りにして」「心の友だったから、助けるのは当たり前や」。この「当たり前や」が幼い頃からのスズ子の行動原理でもある。

タイ子はなぜ「東京ブギウギ」が嫌いなのか?それが後半に明らかになっていくが、今日もスズ子は即行動。ラクチョウおミネに相談。「貧乏して病気して、変わっちまった自分を見てほしくない」のだろうとタイ子の気持ちを理解しているおミネ。

そこでおミネが思いついたのは、達彦の靴磨きに「夜の女たち」を並ばせること。商売は大繁盛。しかし例の悪ガキたちが「ショバ代払え」と難癖。そこでおミネ「ここいらは、確か、黒川組のシマだったはずだがね。組長に話は通しているんだろうね」とシメる

やー、田中麗奈かっこいい! かつて寅さんの撮影現場で不良少年たちがウロウロして迷惑だったときに渥美清さがスッと近寄って、一言二言、不良たちに話しかけると、彼らは平身低頭、その場から立ち去ったというエピソードを思い出した。おミネの貫禄!

しかしタイ子は、そんなスズ子の気持ちも拒む。「手助けなんてやめて、他人のあんたには関係ない」頑ななタイ子にスズ子は、幼い頃のタイ子との日々を一方的に語り出す。「一年生、転校してきたワテに始めて声をかけてくれて、それからずっと大好きや」

走馬灯のように幼い日々が蘇る。「タイ子ちゃんは、優しい、優しい子やったわ」「そんな言うたら、ますます惨めやわ、うち、もうボロボロや」タイ子の母は空襲で亡くなり、夫は戦死。達彦を抱えて行商で暮らしてきたが病気になり、どん底の暮らし…

「こんな不幸のどん底にいるのに、どこにいたかて聞こえてくるんやあんたのブギウギが」「地べた這いつくばっているのに、夢叶えたスズちゃんと私は天と地や」焼け跡の人々を励ましていた「東京ブギウギ」が、タイ子には現実を突きつける残酷な歌だった。

これも見事なシナリオ。戦後の混乱期、何もかも失った人々に元気を与えた復興ソング「東京ブギウギ」という表層的な捉え方ではなく、タイ子のように傷ついた人もいた。という描写は「歌と音楽」「パフォーマー」をテーマにしたドラマのさらなる深みに。

さぁ、これからどうなる?いよいよ明日は「ジャングル・ブギー」誕生か?なのに、あと15分で、どう決着するのか?と明日がますます見逃せない。

3月22日(金)書泉グランデ

「#ブギウギ」脚本・足立紳さんと、「#笠置シヅ子ブギウギ伝説」佐藤利明が、「ブギウギ」ファイナルに向けてのトークイベントを開催します!

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2月24日(土)

徳島県板野郡北島町立図書館・創世ホール 佐藤利明講演会「笠置シヅ子ブギウギ伝説」開催
14時開場。14時30分開演。入場無料。

笠置シヅ子さんと服部良一さんの音楽人生を昭和のエンタテインメント史と共に語ります! !


昨年、編集者から「笠置シヅ子さんの本を書きませんか?」と依頼されて、まず考えたのが「敗戦後のエンタテインメントの熱気」をいかに再現するか? ブギの女王が生きた時代を描くと言うことは、時代の空気を読者に伝えることでもあるので。ぜひ、ご一読ください!

ワテかて必死や #5

タイ子の「夢叶えたスズちゃんとうちは、天と地やなんで、こうも違うてしもうたんやろ、ほんまに惨めで恥ずかしい」に、スズ子はきっぱり「恥ずかしない!」。このパワー。今日の滑り出しは感動的。

スズ子はタイ子を「ほんますごい」と達彦を立派に育て上げたことを褒める。褒めることこそ最高のメソッド。「そもそもワテが歌手になったのもたいこちゃんのおかげや」「義理返させてや」と幼い頃のエピソードがここでリンク。これぞ「お節介」のチカラ!

タイ子の顔が明るくなる。「おおきに、達彦」「おおきにスズちゃん」「こちらこそおおきにや」。「お節介」に「おおきに」この力で二人の友情が蘇る。いいなぁ。アバンタイトルの三分間ベタだけど感動的。花登筺ドラマの世界!

一方、羽鳥善一は山のような仕事を前にウンウン唸っている。ああ、わかるわかる。この気持ち(笑)「青春群像劇か。未来だ希望だって言われてもなぁ」と(おそらく)今井正監督の「青い山脈」主題歌か?「僕は目の前のことでいっぱいなのに」と本音。

スズ子はラクチョウおミネにタイ子のことを報告。おミネの「誰だって、どこからだって、やり直せるはず」のセリフがいい。彼女の夢は「夜の女たち」の更生施設、職業訓練所を作ること。これも史実。笠置シヅ子さんはその夢への協力を惜しまなかった。

おミネの「あんたに出来ることは歌うことだよ」でスズ子は奮起。羽鳥宅へ押しかけ「来週のリサイタルの新曲を!」おミネたちの話に。「みんな必死に生きてます!」ここで羽鳥がピンときて、「こだわりの強い」映画監督から来た歌詞を探す。キタキター!

この監督とはもちろん黒澤明のこと。新作『酔いどれ天使』の劇中歌をどうしても笠置シヅ子に歌って欲しいと自ら作詞。黒澤監督は、死病に取り憑かれた三船敏郎との対比として、笠置のエネルギッシュなパワーが欲しかった。それが「ジャングル・ブギー」である。

「ブギウギ」世界線では、羽鳥善一は忙しくて、この歌詞をほったらかしにしていたが、スズ子のパワーで思い出して、「来たー!」とあっという間に作曲。取り憑かれた天才の底力!草彅剛だからこそ、数秒で表現できてしまう。いいねぇ。で、名曲誕生!

日帝劇場「福来スズ子リサイタル」でいよいよ新曲発表。スズ子のジャングル・ファッションに、山下は「赤ん坊の母親がする格好やおまへん」「こんなん着こなせるのはワテしかおらん」スズ子の返しもいい。ほんまや!

ステージ所せましと歌い踊る、スズ子の「ジャングル・ブギー」趣里の表現がいい。笠置シヅ子とは全く違うけど、やっぱり彼女に見えてくる。服部&笠置のブギのなかでも頭抜けた名曲の再現。朝から心踊る。客席にはおミネと仲間たち。そして達彦とタイ子。

歌い切った後、タイ子とスズ子のアイコンタクト。二人の表情が感動的。やー、今週の展開で、どんな形で「ジャングル・ブギー」が生まれるかと思ったら、羽鳥善一マジックで、わずか数十秒で曲が完成して、最高の形で着地した。これぞ音楽のチカラ!

来週は再びタナケン登場! 『歌うエノケン捕物帖』撮影現場の再現!渡辺邦男監督の役にはレ・ロマネスクのTOBIさん。そういえばマネージャーさんが正月の「新春!ブギウギ映画祭」での『歌うエノケン捕物帖』を観に来てくれたのは、そういうわけだったのか!

来週末! 2月24日(土)

徳島県板野郡北島町立図書館・創世ホール 佐藤利明講演会「笠置シヅ子ブギウギ伝説」開催

14時開場。14時30分開演。入場無料。

笠置シヅ子さんと服部良一さんの音楽人生を昭和のエンタテインメント史と共に語ります! !

そして、3月22日(金)

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第21週 あなたが笑えば、私も笑う  2月19日〜23日

あなたが笑えば、私も笑う #1


タナケン映画編。昭和24(1949)年、愛子(小野美香)は二歳。そのイタズラぶりは「突貫小僧」クラス(笑)。障子をビリビリ破り、台所では小麦粉大散乱。スズ子は愛子を溺愛しているので、叱るけど「ごめんなさい」の可愛い一言で帳消しに…

ラジオから「ジャングル・ブギー」が流れ、ブギの女王の時代が到来。タイ子と達彦がやってきて「うちな、大阪に戻ろう思うてんねん。生まれ故郷で一からやり直したい」と女中務めをすることに。シングルマザーとなっても二人の友情は変わらない。

別れ際にスズ子は、困ったことがあったら、なんでも言うてや、とタイ子に声をかける。この言葉が何より。さくらが寅さんにかけ、寅さんがマドンナにかける「優しさ」と同じ。櫻井剛脚本は、先週と打って変わって平穏な日々を綴る。これもいい。

羽鳥家では、善一が子どもたちの合唱団に大ヒット「青い山脈」を歌わせてご満悦。「軽やかなリズムに親しみやすいメロディー」と自画自賛。麻里に言わせれば「青い山脈」が売れて仕事が殺到「忙し過ぎてうんざりしてるのよ」とクール(笑)

これもまた平和な描写。しかしカツオくん、大きくなったなぁ。そしていよいよ「条映撮影所」で「タナケン・スズ子のドタバタ夫婦喧嘩」クランクイン。台風娘の愛子は現場に連れて行くことに。これが大騒動のきっかけとなるのは明らか。
史実ではエノケンとの映画初共演は昭和23年の大映『びっくりしゃっくり時代』(島耕二)で、この年エノケンがプロダクションを設立して昭和24年の正月映画として制作するのが『歌うエノケン捕物帖』(渡辺邦男)。今回はこの映画がモデル。

昭和20年代の笠置シヅ子出演作の95%は、服部良一音楽なのだが「#ブギウギ」世界線ではどうも違うみたい。スズ子は大阪弁のおかみさん、タナケンは江戸っ子亭主。稼いだ金をすぐに呑んでしまい大喧嘩。映画のエッセンスを再現している。
タナケンはスズ子の芝居を褒めてくれるが、スタッフに預けていた愛子が怪我をして大騒ぎ。撮影が中断となる。遺影の愛助は「スズ子さん、きっとそのこと一緒なら、何があっても大丈夫や」というが前途は多難…

波乱万丈の展開が続いていた「ブギウギ」だが久しぶりにのんびりと楽しい(今日のうちは・笑)史実と脳内を行ったり来たり。映画監督役にレ・ロマネスクのTOBIさん、消え入るような声でOKを出すのがおかしい。タナケンに突っ込まれていたけど。

あなたが笑えば、私も笑う #2


条映撮影所での「タナケン・スズ子のドタバタ夫婦喧嘩」撮影は続く。しかし、このタイトル、もう少し昭和20年代ぽくして欲しかった(笑)「歌うエノケン捕物帖」「エノケン・笠置の極楽夫婦」「エノケン・笠置のお染久松」みたいな感じに(笑)

友人の下村健さんも昨日書いていたが「歌うエノケン捕物帖」は新東宝=エノケンプロ作品だけど、太泉撮影所で行われた。もちろんミュージカル仕立て。ドラマでは「歌を忘れたスズ子」を描くため、単なる喜劇映画にしているのが勿体ない。
「ブギの女王」とエノケンの組み合わせで「歌と笑い」を全面にした音楽喜劇映画を服部良一音楽で連作。それがさらに笠置シヅ子人気を高めたので。ドラマでは、愛子を現場に連れてきたことで撮影が停滞。タナケンに厳しいことを言われてしまう。

スズ子とタナケンの芝居。なかなか楽しい。でも愛子を気にして気もそぞろのスズ子。監督(TOBI)のダメ出しを受ける。この監督、消え入るようなか細い声(笑)なので、助監督が代弁。実際、こういう監督もいた。一方、ゴシップ記者の鮫島が、思うように声が出ずにイライラしている茨田りつ子の前に現れて「福来スズ子は歌を捨てるつもりです」「歌しかない茨田りつ子はかわいそうだって」と有る事無い事言って挑発。「何がいけないの?それでいいじゃない」「ブギーも終わりよ」

その一言が脚色されて「真相婦人」に掲載される。スズ子は鮫島の出鱈目と知りつつ、りつ子の真意が知りたいので「茨田さんに逢いに行こうかな」しかし、撮影遅延でそれは無理。といった、鮫島の悪意から不必要な軋轢に…

しかもタナケンは、芝居に身が入らない鈴子に対して厳しい目。で、撮影所に鮫島が現れ、愛子を見て「小さいのに現場に連れ出して、かわいそうに」と悪意の一言。しかも「茨田りつ子は明らかにあなたを挑発しています」とスズ子を挑発。やだねー

スズ子は、この時点で芸歴22年のベテラン。芸の世界の厳しさを知っているのに、現場に迷惑をかけたり、ゴシップ記者の挑発に乗ってしまったり。ドラマだからけど、笠置シヅ子さんはこういう部分はプロに徹していて、厳しい人だったという。
「こちらで対談の場を作りましょう」スズ子はまんまと鮫島の口車に乗ることに。鮫島も「腹ボテカルメン」からの付き合いなのにもうちょっとスズ子の心に入り込んで取材すればいいのに(笑)で、明日は「ブルースの女王」VS「ブギの女王」対談へ…

今週末 2月24日(土)
徳島県板野郡北島町立図書館・創世ホール 佐藤利明講演会「笠置シヅ子ブギウギ伝説」

14時開場。14時30分開演。入場無料。
笠置シヅ子さんと服部良一さんの音楽人生を昭和のエンタテインメント史と共に語ります!

あなたが笑えば、私も笑う  #3

ゴシップ誌「真相夫人」の記者・鮫島(みのすけ)の態度、いちいち不愉快。まぁ、それがキャラクターで演出の狙いなのだけど(笑)スズ子は誤解を解くために、りつ子との対談に(結果的に)望む。ここで何か発展があればイイのだけど…

憮然としたままのりつ子、ヒートアップするスズ子。二人とも鮫島の挑発に乗せられてるだけで、顔を合わせているのに進展なし。うーん。ドラマが前に進まず停滞。対談は失敗、このシークエンスも失敗のような気がする。鮫島の嫌な態度、鼻につきますなぁ。

りつ子はスズ子が「ブギの女王」と持て囃されていい気になって「歌を忘れ」て映画に夢中になっていることに立腹。「そんなんじゃ、あっという間に忘れられて終わりよ。ブギの人気なんてすぐに終わるわ」「ブギが終わりいうんが、気に食わへん」

この世界線では「東京ブギウギ」「ジャングルブギー」の二曲しか出てないし(笑)「映画にうつつを抜かして、歌を忘れている」というロジックに説得力がないなぁ。史実ではエノケン・笠置映画は「ブギのリズム」に溢れているからこそなのに…

「二大女王の泥試合」「歌を捨てたブギの女王はもう終わり」と鮫島の悪意に満ちた見出しが踊る「真相夫人」。クランクアップの日。タナケンが楽屋に来て「君、大丈夫かい?」と気遣う。りつ子との誤解が解けないことを嘆くスズ子。

タナケンは「続けるしかない」「邪魔されようが、誤解されようが、芸で伝えるしかない。生き方で伝えるしかない。歌手も役者も」それは母親も同じ。愛子に「お母さんのこと好き?」頷く愛子。「一番近くで君を見ていた彼女は、君を認めている」

戦前から噂話やゴシップのなか、それをモノともせずにトップであり続けてきた喜劇王の言葉。これはいい。芸歴20年のスズ子は、それを十分わかっていると思うのだけど…今週は折角の「エノケン映画」再現なのになぁ(笑)

ラストカットの撮影。スズ子とタナケンが「恋はやさし」の替え歌で仲直り。「歌うエノケン捕物帖」ではこれが服部メロディーの連発で「アイレ可愛や」で夫婦喧嘩、「東京ブギウギ」で悪党退治。「ヘイヘイブギー」で仲直り。といった演出だった。

しかししかし、いくらなんでも、昭和24年、ブギの女王と喜劇王の競演映画なら、当然、羽鳥善一が音楽を担当するはずなのに。「恋はやさし」かぁ(笑)で、これでクランクアップ。最後だけTOBI監督「カット!OK」と大声。今まで声を発さなかった監督。これが一番喜劇的(笑)

スズ子は「ブギの女王」健在を証明すべく羽鳥に新曲を依頼。羽鳥はブギが続いたから「そろそろ毛色を変えた方がいいな」「ブギで勝負したいんです」。このロジックもなぁ(笑)史実では「東京ブギウギ」「さくらブギウギ」「ヘイヘイブギー」と、「猫も杓子もブギウギ」と立て続けのなか「ジャングル・ブギー」が登場。

同時に映画も連作されていて、空前のブームに拍車がかかったので。映画に出ることが歌を忘れたことになるわけではないのに。娯楽映画研究家は、そこに拘ってしまう(笑)

ともあれ、そこで羽鳥善一は、今週のサブタイトルにある「ヘイヘイブギー」を作曲、スズ子が歌うのが今週末に向けての展開だろう。スズ子もりつ子も視聴者も鮫島に振り回されすぎたので、期待してまっせ!

https://www.cataloghouse.co.jp/yomimono/otonakayou/024/

あなたが笑えば、私も笑う #4

スズ子は羽鳥に「ブギで勝負したい」と新曲を依頼。りつ子から「ブギの人気なんてすぐに終わりよ」と言われて発奮してのこと。羽鳥「その喧嘩、買おうじゃないか」と幡随院長兵衛みたいなことを(笑)映画に出たから歌を忘れたわけじゃないのに。

今、僕らが笠置シヅ子さんのパフォーマンスを味わえるのは昭和20年代に25本も出演した映画のおかげ。その95%を服部良一先生が手掛けている。「笠置シヅ子ブギウギ伝説」を執筆できたのも、映画あればこそ。なのでどうにも違和感が(笑)
鮫島のいやらしさは今日も全開。通算100回目なのになぁ。僕らが話題にするから、あんたも、福来スズ子もスターでいられる」と鮫島。「客なんて一人でもいいのよ、たった一人でも一生忘れられない歌、聞かせてあげるわ」これはイイ。

でも、いくらゴシップ記者だってインテリだし、これくらいのことはわかるはず。1980年代のテレビレポーターじゃないんだから。「あなた聴きにいらっしゃい。招待するわ」りつ子の迫力に気圧されて鮫島は退散。良かった。二度と来るな!
りつ子はスズ子を訪ねて「ごきげんよう」「この度はごめんなさい」素直に謝る。「愛子ちゃん、元気だったかい。会いたかったよ。はい、飴っこ」「この子の顔見たら、少し落ち着いたわ」りつ子は戦後、スランプだったことスズ子に打ち明ける。

ここで二人は和解。最初から会って話をすれば良かったのに(笑)羽鳥は「え?仲直りしちゃったのかい?」とびっくり、で出来たのが予想通りの「ヘイヘイブギー」! 史実では「ジャングルブギー」より前の曲だけど…

https://www.cataloghouse.co.jp/yomimono/otonakayou/024/

ある日、青森弁の家政婦・大野晶子(木野花)がスズ子を訪ねてくる。仕事と育児の両立が大変なスズ子のために、りつ子の気遣い。これは良いなぁ。木野花さんが出てくるだけで、画面がぎゅっと引き締まる。いよいよ明日は「ヘイヘイブギー」!

あなたが笑えば、私も笑う #5


今週は、少し息切れ気味。スズ子とタナケンの映画は、決して「ブギの女王」が歌を忘れることになるわけではないのに。史実との矛盾に少し戸惑った。りつ子のせめてもの思いで、青森出身の大野晶子(木野花)が家政婦に。初日の朝6時に…

スズ子が愛子とぐっすり寝ていると、台所からお味噌汁の具を包丁で切る音。「味噌汁」の良い匂い。しかし「なんで?」晶子の心づくしの朝食を味わい、愛子を置いて初めて仕事に。「タナケン・スズ子のドタバタ夫婦喧嘩」試写。なんてタイトルだ!

タイトル文字が木札に描かれているのは、「エノケン・笠置のお染久松」の本歌取り。劇中の映画台本のキャスティングが気になる。あきれたぼういずのメンバー、高杉妙子、清川虹子のもじり名前が印字されてたりして(笑)

試写室には、TOBIさんの「ささやき監督」(笑)タナケン、スタッフの面々。ラストの「恋はやさし」のオペレッタ場面。今までのステージ再現のクオリティとはちょっと違う。コント的な「ドラマ内映画」。喜劇王の芸を発揮とは言えないなぁ。

タナケン「福来くん、みんな君のおかげだよ」「皆さんのおかげです。ほんま、おおきに」(え〜?)。「新春!ブギウギ映画祭」に来れば良かったのに。で、スズ子はコロンコロンレコードの打合せは、山下に任せて帰宅。試写の間も愛子が気になって帰宅。

晶子になついて良い子になってお留守番の愛子。あの障子紙も、お花の障子紙を貼ってリペア。愛子が手伝って得意気。成長したね。まだ二歳なのに… 感動するスズ子。今日はスズ子の「子離れ」成功。実際、笠置さんは相当厳しい人だったそうで…

女手一つで愛娘のヱイ子さんを、どこに出しても恥ずかしくない育て方をされた。(厳しいお母さんだっとご本人から伺いました)朝ドラのヒロインなので「サザエさん」的に良い意味で成長しないスズ子(笑)

これまでの20週で積み上げてきたものが、今週はあまり感じられなくて(個人の感想です)。でも晶子の一人で頑張ってきたはんでワタシがいます。頼ってけ」の言葉に、素直に「よろしいですよね。頼って」と心を許して甘えるスズ子。これはイイ場面。

夜、愛子を寝かしつけ、譜面手にアカペラで「ヘイヘイブギー」を歌うスズ子。しみじみ藤浦洸の歌詞の良さを実感。「スズ子が笑えば、愛子も笑う」「愛子が笑えば、スズ子も笑う」母と娘の絆のうた、として演出。そこへ服部隆之さんアレンジの演奏。

これはグッときた。祖父へのリスペクトに溢れたアレンジ。だから翌朝のスズ子の「行ってきます」愛子の「行ってらっしゃい」ショット。幸福感に満ちていた。いよいよ来週は「買物ブギー」!予告で寅さんみたいな人がいるのが気になったけど(笑)

いよいよ明日です!2月24日

徳島県板野郡北島町立図書館・創世ホール 佐藤利明講演会「笠置シヅ子ブギウギ伝説」

14時開場。14時30分開演。

笠置シヅ子さんと服部良一さんの音楽人生を昭和のエンタテインメント史と共に語ります!

皆さま、お待ちしてます!


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