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『ヴァジニアの血闘』(1940年・ワーナー・マイケル・カーティズ)

今宵の娯楽映画研究所シアターは、滅法面白い西部劇の傑作!マイケル・カーティズ監督『ヴァジニアの血闘』(1940年・ワーナー)を久しぶりに堪能。エロール・フリン、ランドルフ・スコット、そしてハンフリー・ボガート!ヒロインはミリアム・ホプキンス。


南北戦争末期、南軍の軍資金のため金塊を、北軍支配下のヴァジニア・シティから密かに運び出すべく、南軍のアーヴィ大尉(ランドルフ・スコット)が決死の作戦を展開する。危機また危機の活劇篇。

リッチモンドの捕虜収容所の所長だったアーヴィ大尉にその話を持ちかけたのは、昔馴染みの南部のお嬢様で、今ではヴァジニアの酒場の歌姫となっているジュリア・ヘイン(ミリアム・ホプキンス)だった。

折しも、収容所から北軍の勇士・ブラット大尉(エロール・フリン)たち3名が脱獄。北軍司令部から、金塊輸送作戦の妨害を命ぜられる。ヴァジニアへ向かうブラット大尉が乗った駅馬車には、ジュリアも乗っていて、二人は恋に落ちる。さらに乗客のジョン・マレル(ハンフリー・ボガート)が窃盗団のボスで、駅馬車はジャックされるが、ブラット大尉の機転で事なきを得る。

さすが活劇スターのエロール・フリン主演作だけに見せ場がふんだん。収容所からの脱獄は、のちの『大脱走』のように、長期計画でトンネルを掘って、と言うもの。しかしランドルフ・スコットに見抜かれて、一度は断念するもののリベンジして大成功。さらに駅馬車でのアクション!この映画の前年、ジョン・フォードの『駅馬車』(1939年)が大ヒットしたこともあり、窃盗団襲撃のアクションはかなり凝っている。ハンフリー・ボガートに襲われ、御者が振り落とされ、暴走する馬たち。エロール・フリンは、馬から馬へ飛び移り、先頭の馬にまたがって駅馬車を停める!

子供の頃、テレビでこのシーンを見て大興奮した。で、ヴァジニア・シティに着いてからは、北軍のエロール・フリン、南軍の密使・ミリアム・ホプキンス、南軍のランドルフ・スコットの三角関係のロマンス。金塊を積み込んだ馬車が、敵地から出発するサスペンスが展開。この映画の良いところは、どちらかが正義ではなく、南軍の理、北軍の理を並列で描いている。どっちが良くて、どっちが悪い、と言う話ではない。

それぞれの立場で戦わざるを得ない。と言うスタンスで展開される。南軍のための軍資金を必死に運ぶランドルフ・スコット、それを執拗に追うエロール・フリン。南軍はヴァジニアを脱出する時に、ハンフリー・ボガートの窃盗団に騒ぎを起こさせて北軍の気を引く作戦をする。しかし、それが仇となり、南軍の金塊は、ハンフリー・ボガートたちに狙われることになる。

満身創痍の幌馬車隊を助けるエロール・フリン。もう敵も味方もない。ランドルフ・スコットと共闘してボギーたちに立ち向かう。こういう「男と男の友情」が西部劇のたまらんところでもあり。

果たして金塊は? 最後にエロール・フリンが取った行動とは?この顛末が映画的にも素晴らしい。最後の最後は「一つのアメリカ」というテーマに集約されて・・・

ミリアム・ホプキンスのヒロインが、二人の大統領に会うという展開も面白い。ヴァジニア・シティからの金塊輸送計画を提案したことをディヴィス・ジェファーソン連合国大統領に褒められ、クライマックスには「あることを」北軍のエイブラハム・リンカーン大統領(ビクター・キリアン)に懇願する。

マイケル・カーティズ監督の緩急自在の演出で、見せ場はふんだん。121分を飽きさせない。この映画、今、公開されたら「面白い」の口コミでヒットするんじゃないか?と言うほど、シャンとしていて、キリリと引き締まっている。これぞ娯楽映画のお手本!

1952年10月15日日本公開


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