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『ゴジラの逆襲』(1955年4月24日・東宝)・『弥次喜多漫才道中 化け姫騒動の巻』(宝塚映画)二本立を再現!

『ゴジラの逆襲』(1955年4月24日・東宝)

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小田基義監督『ゴジラの逆襲』(1955年4月24日・東宝)を久々、クライテリオン版Blu-rayで、初のプロジェクター鑑賞。

戦後十年、海軍の辣腕パイロットだった月岡(小泉博)は、大阪の海洋漁業会社で魚群探査の仕事に就いている。その同僚、小林(千秋実)は気の良い男。ある日、探索中に岩戸島に不時着した小林の救助に向かった月岡は、小林とともに島で格闘するゴジラと巨大怪獣を目撃する。

第一作が博士、科学者、サルベージ会社の社員の物語だったのに対し、今回はグッと庶民的。かつて戦争で戦った若者の現在を、サラリーマン映画的な明朗な雰囲気で描いている。その日常に、再びゴジラという災厄が現れて、今回は暴竜・アンギラスとともに、大阪を蹂躙、大惨事となる。

ゴジラ来襲に、なすすべもなく、灯火管制を敷くのは、やはり空襲の影を感じる。大阪襲撃のきっかけとなる脱走犯のシークエンスは、本編のドラマとは直接関係ないが、彼らが奪ったタンクローリーが大爆発して、結果的にゴジラを誘引してしまう展開は面白い。いかに、アンギラス共々、ゴジラを大阪で暴れさせるかの苦肉の策だけど、ハリウッドのモンスター映画みたいで面白い。

さらに中之島でのゴジラとアンギラスの戦いで、淀屋橋駅が水浸しになり、脱獄犯が濁流に飲まれるシークエンスも、何度見ても驚嘆する。美津農のビルが倒壊していくミニチュアワークも惚れ惚れする。ちなみにこのビル、小田基義監督が前年に宝塚映画『家庭の事情 ネチョリンコンの巻』(1954年)で、トニー谷さんが広告のデモンストレーションで、パラシュートで落下したビルである。おそらくタイアップだろう。

後半、北海道を舞台にしてからのゴジラ退治のシークエンスとなる。北海道支社に転勤になった小林を訪ねてきた月岡と社長令嬢・秀美(若山セツ子)たちが料亭で宴会に加わるあたりSF映画とかけ離れているので、若い時は違和感があった。そこでの月岡の戦友・田島(土屋嘉男)、池田(山本廉)たちとの再会も野暮ったいと思ったことがある。

それが昭和30年のリアルな光景なのだと、今では、当時の空気を味わうことができる。そこからは戦争映画の作戦のように、いかにゴジラを神子島で氷漬けにするかが、テンポ良く描かれていく。

とにかく若山セツ子さんが、ひたすら可愛い。小泉博さんとナイトクラブでダンスを踊るシーンは、「次郎長三国志」的には、お蝶と追分三五郎でもある(笑)

なぜ、今日は『ゴジラの逆襲』かというと、これから同時上映の『弥次喜多漫才道中 化け姫騒動の巻』(佐伯幸三)を観るための気分の盛り上げでもあり(笑)

『弥次喜多漫才道中 化け姫騒動の巻』(宝塚映画)

続きましては、1955年4月24日公開『ゴジラの逆襲』同時上映の、佐伯幸三監督『弥次喜多漫才道中 化け姫騒動の巻』(宝塚映画)。今宵は、昭和30年4月にタイムスリップ!

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この頃、連作されていた宝塚新芸座の漫才チーム総出演の喜劇映画。宝塚新芸座は、1950年、東宝のトップ、小林一三氏がモダンで新しい寄席を作るべく創設した「宝塚新芸道場」が前身。エンタツ・アチャコを育てた秋田實先生がプロデューサーとなり、夢路いとし・喜味こいしたちが続々参加。

そこで生まれたのが、松竹新喜劇とは対極にあるニュースタイルのコメディ「漫才学校」だった。これがABCでラジオ放送(阪急電鉄提供)され、一世を風靡する。

というわけで、これは人気絶頂の「漫才学校」チームよる時代劇コメディ。

タイトルロールの弥次喜多コンビに、夢路いとし・喜味こいし師匠。二人がごまのハエにあって無一文になる宿屋の夫婦に、ミヤコ蝶々・南都雄二のカップル。そこへミス・ワカサの炭焼き娘がさる大名の落とし胤・若狭姫に仕立てられて、泊まることに。これは大儲けのチャンスと蝶々さん大張り切り、無一文のいとこい師匠が宿の下男となる。さらに、ミス・ワカサの恋人・島ひろしが未練を抱いて追ってきて・・・

さらに悪漢側の浪人に秋田Aスケ・Bスケのコンビ。つまり「漫才学校」のレギュラー陣が総出演のアチャラカ時代劇が賑やかに繰り広げられる。

ということはこの時の興行は、いとし・こいし、蝶々・雄二、ワカサ・ひろしと、名コンビのユニット出演に、ゴジラ・アンギラスの怪獣コンビも加わっての強力番組だったのだ!

新東宝の『名探偵アジャパー氏』同様、佐伯幸三監督のドタバタは、斎藤寅次郎監督ほどのパワーはなく、後半、延々と続くコマ落としの逃亡劇は、面白いんだか、面白くないんだかわからない。でも、当時、ゴジラ観たさに、劇場にやってきた子供たちが大笑いしている姿が目に浮かぶ。

原案は秋田實先生、脚本は倉谷勇さん。意外と良いのが岡政雄さんと河村篤二さんによる音楽。特に「弥次さん喜多さん」のコミカルな主題歌が楽しい。

一応の大団円でエンドマークとなるが、物語は同日公開の「第二部・腰抜け一家の巻」へと続く。

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