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『11人のカウボーイ』(1971年・ワーナー・マーク・ライデル)

 娯楽映画研究所シアター洋画部ではマーク・ライデル製作・監督、ジョン・ウェインの大作『11人のカウボーイ』(1971年・ワーナー・ブラザース)を20年ぶりに。

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この頃、日本では森繁久彌さんの「社長」、加山雄三さんの「若大将」、植木等さんの「クレージー映画」とシリーズ映画が終焉。アメリカン・ニューシネマの波もなんのその、ハリウッドでは最後の伝説・ジョン・ウェインは大作西部劇への主演を続けていた。

スティーブ・マックイーンの『華麗なる週末』(1967年)を大成功に収めた、マーク・ライデル監督は、ジョン・ウェインの初老の西部の男が、まだ小学校に通っている少年たちをカウボーイとして育成、650キロのキャトルドライブの旅をするウェスタンを企画。壮大なロケーションで、きめの細かい、感動的な作品に仕上げた。

牧場主・ウィル・アンダーソン(ジョン・ウェイン)は、1500頭の牛を400マイル離れたベルフーシュの町まで運ぼうとしているが、男たちは砂金取りに夢中で、働き手が一人もいなくなる。頑固一徹のウィルは、どうしても冬になる前に、牛を運びたいのだ。友人のアンス・ピーターソン(スリム・ピケンズ)の提案で、レッドスクールに通う男の子たちをカーボーイとして雇うことに。上は15歳、ほとんどが経験のない11人の少年たちを、俄仕立てのカウボーイにして、キャトルドライブに出発。

一行の胃袋を満たす、炊事係には海千山千の黒人・ジェベダイア・ナイトリンガー(ロスコー・リー・ブラウン)。このナイトリンガーが、アンダーソンの良き相棒となり、子どもたちの、硬軟取り混ぜての教育係として機能する。

少年たちが、こっそりナイトリンガーの酒瓶を盗み出して、回し飲みしてご機嫌になる。アンダーソンとナイトリンガーは激怒するかと思いきや、少年たちの酒盛りをニコニコ見守る。翌朝の二日酔いのおかしさ!

子供を早くに亡くした頑固爺さんと、孫のような少年たちの冒険は、かなりハードで西部劇の醍醐味にあふれている。緩急の演出も見事で、キャトルドライブはリアルで、ホームシアターで観ていると、まさに大興奮!

このまま無事に目的地に到着出来れば良いのだが、容赦ない悪役を設定したことで、一転ハードな世界に!

牢屋から出てきたばかりで、アンダーソンに恨みを抱いている、極悪非道のワッツ(ブルース・ダーン)一味が、一行を追跡してきて、牛を奪おうと虎視眈々。気の優しいメガネの男の子・ダン(ニコラス・ビューヴィ)を掴まえて、自分たちの事を喋ったら寝首を掻くと脅かす。

クライマックス、ワッツたちの襲撃を受け、西部の男らしく立ち向かうアンダーソンに、ハリウッド映画史上もっとも汚い手を使う。本当に憎たらしい!

そして、不死身のジョン・ウェインが、なんと!の展開には、最初に観たときは、本当にビックリした。

しかし、最後の20分間、少年たちの反撃がアクション映画としても見事で、マーク・ライデルの狙いがここにあるのだ。編集も鮮やかで、憎きワッツを徹底的にやっつける! ラストの墓碑銘、そしてアンダーソンの口癖が、少年に受け継がれていくサゲ。お見事!

ジョン・ウィリアムズによる音楽も、序曲、休憩、終曲と、タップリで来るべきジョン・ウィリアムズ黄金時代の前奏曲のようでもある。


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