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『クレージー黄金作戦』(1967年4月29日・東宝・坪島孝)

深夜の娯楽映画研究所シアターは、東宝クレージー映画全30作(プラスアルファ)連続視聴。

18 『クレージー黄金作戦』(1967年4月29日・東宝・坪島孝)

4月23日(土曜日)は、2時間37分のゴールデンウィーク超大作『クレージー黄金作戦』(1967年4月29日・坪島孝)をスクリーン投影。日記によれば、2年前、2020年4月16日に観たばかり。だけど、30作を公開順に連続視聴するのが今回のテーマなので、クレージー映画の宴を楽しく観た。

クレージー映画で「アメリカ縦断ロケをしよう」という発想は、渡辺プロダクション社長・渡辺晋さんのアイデアというか、渡辺プロのタレントたちをショービジネスの本場アメリカで勝負させたいという野心でもある。ラスベガスでクレイジーキャッツのショーを成功させたい。その夢を、益々勢いづいているクレージー映画で実現させたのが本作。邦画の喜劇としても、157分の大作というのは前代未聞。ハリウッドの大作なみの上映時間にする。つまり始めに「上映時間ありき」の企画でもあった。

脚本はクレージー映画の二本柱、笠原良三さんと田波靖男さん。今回は植木等さん、谷啓さん、ハナ肇さんの三人を主役に、均等に描くことで物語の充実(と長尺)をはかった。田波靖男さんにんよれば、河竹黙阿弥作の歌舞伎「三人吉三廓初買(さんにんきちざ・くるわのはつかい)」のクレージー版を意識したという。

なので、日本を出発するまでのドラマがなかなか楽しい。ギャンブル好きの破戒僧・町田心乱(植木等)が檀家の借金返済のために金友商事(ロケはもちろん大和証券ビル!)に就職。まんまとロサンゼルス支店へ転勤。汚職の汚名を着せられたことも知らずに外遊に出た国会議員・板垣重金(ハナ肇)、日本に失望した医者・梨本金男(谷啓)。それぞれの物語を並列で描いて、パンナムの飛行機での出会いとなる。

で、毎回、画面を凝視してしまうのは、カジノのチップをおもちゃ会社の親父・沢村いき雄さんに発注に行くシーン。生産ラインにはブースカの人形! 植木さんの後ろには、マルサンのプラモの箱が! ガラモン、ウルトラマン、エビラ! たまらないねぇ!

坪島孝監督によれば「撮っても撮っても終わらない」現場で、アメリカロケから帰ってきてから、セット撮影、編集の日々は前代未聞の忙しさだったという。『〜奇想天外』『〜天下無敵』とクレージー映画を連打してきた坪島演出は、改めて観るとなかなか楽しい。

なんといっても、クレージー七人が勢揃いしてラスベガスの目抜き通りで歌って踊る「ハロー・ラスベガス〜金だ、金だよ」のナンバーから、ホテルリヴィエラ(という設定の)「クレージーキャッツ・ショー」での「ウナ・セラ・ディ東京」のショー場面!ザ・ピーナッツ、ジャッキー吉川とブルーコメッツ、ジャニーズ、ザ・シャンパーズと、「シャボン玉ホリデー」でお馴染みの面々がスクリーン一杯に繰り広げる夢のページェント。

レーザーディスク化されるまでは、スクリーンでの上映でしか観る機会がなく、このラスベガスのシーンと、前半での加山雄三さんと植木さんの「二人だけの海」共演を観たさに、オールナイト上映に通っていた。あの浅草東宝の興奮が、観るたびに蘇る。


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