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娯楽映画研究家「ブギウギ日記」PART10

最終週「世紀のうた 心のうた」3月25日〜30日


「世紀のうた 心のうた」#1

「男女オールスター歌合戦」で「ヘイヘイブギー」を圧倒的なパフォーマンスで熱唱。楽屋を訪ねてきた水城アユミが頭を下げる。「自分の持ち歌一つで、瞬時にお客様を虜にしてしまう歌手になれるよう頑張ります」グッとくるね。これぞ芸道もの!

新聞もスズ子の「完全復活!」と絶賛。愛子「マミー、決闘は勝ちやったな」「決闘やないけど楽しかったわ」しかしスズ子は燃え尽き放心状態のまま。梅吉、ツヤ、六郎、愛助…少女時代から昨日までの人生が走馬灯のように蘇る。あれから三十年…

史実では笠置シヅ子さんがなぜ歌手引退を決意したのか、実は明らかにされていない。インタビューでも「身体が思うように動かなくなった」というような話しかしていない。なので僕たちは「推測」することしかできない。

先日の足立紳さんとのトークでも話題になったが、明らかにされていない「歌手引退」を「#ブギウギ」でどう描くか?一番楽しみだった。今、それが眼前に展開されている。ここからは足立紳さんのドラマの世界。まさにズキズキ、ワクワクする。

水城アユミからとてつもないエネルギーをもらって「あのステージができたと思います」「「今回は、もう、ええか、もう、ええやろ、わて、ようやったんちゃうか、いう気持ちでいっぱい」とスズ子。それだけの最高のパフォーマンスだったからね。

羽鳥善一は「もしかしたら君は、今までと違った気持ち、決意を持ってあのステージに」立つと思っていたが「まさか引退とは思わなかった。予想外でした」と今までにない表情。草彅剛、本当に素晴らしいね。善一の心の中を佇まいで表現している。

善一は、スズ子の歌は二人で作り上げてきたもの、スズ子が歌ってこそ意味があると。先ほどの水城アユミの言葉でもある。「君が引退するということは歌を殺すことになる」「そんなことをは絶対に僕は許さないよ」と厳しく、しかも寂しそうな表情。

「君は死ぬまで歌手なんだ、歌を葬り去ることなんて絶対に許さないよ」「もしも歌手を辞めるというなら、僕は君と絶縁します」「#ブギウギ」で最も緊張感のあるシーン。スズ子と共に「音楽」を作り続けてきた善一には、許し難いことなのである。

それもよくわかる。一方、愛子は「ほんまに、マミーが嫌やったら、辞めてもええねんで」と優しい。いい子だね。先週の「ズキズキするわ」でマミーから教わったことを愛子はマミーにちゃんと返している。これは抱きしめるしかないでしょう。

ファイナルがどうなるのか?この半年間「#ブギウギ」を見続けてきたファンにとって、最高のクライマックスである。先日、足立紳さんが仰っていたこと、ああ、そういうことなのか!と頷きながらの15分間でした。明日が待ちきれない!

「世紀のうた 心のうた」#2

今日は善一の「もしも、君が本当に歌手を辞めるというなら、僕は君と絶縁します」から始まる。スズ子にしてみればよくよく考えた上での引退。しかし善一には、スズ子が歌って初めて自分の作品が完成しているので、引退を受け入れることができない。

その平行線のなか、りつ子はスズ子とは「歌手として、女として同じ時代を生きてきた同志」だから引退を理解してくれる。りつ子は「私は生涯歌手を続けるわ」と、これも生き方。「先生にとって歌い手は、歌の一部なのね。歌が全てなの、先生は」

この喫茶店のシーンに流れる「別れのブルース」のピアノヴァージョン。そして、沈思黙考の善一が静かに「東京ブギウギ」をピアノで弾いている。見事な音楽演出。これだけでグッとくる。タケシの名場面もある。「先日は、取り乱して、本当にすいません…」

マネージャーになった時は、スズ子の歌の良さがわからなかったが、いつの間にか勝手に歌えるようになり、つらい時も励まされるようになったと。ズキズキ、ワクワクの心をタケシも理解していた。お騒がせキャラのタケシだったが、最高のシーンに。

「もっと、スズ子さんの歌を聴きたかった。もっと励ましてもらいたかった」と。それを聞いていた愛子「甘えん坊や」(笑)スズ子は「歌っていた甲斐があった」としみじみ。だからファンにお礼を伝える意味で「引退会見」を提案する。

しかし善一はスズ子を避けたまま。どうしたらいいのか? 羽鳥はりつ子に相談。「本当に羨ましい関係ですわ。先生は、私にもたくさんの名曲を書いてくださいましたけど。やっぱり、福来スズ子なんです」とりつ子。

りつ子は続ける。「あの娘なんです。そしてあの娘も先生なんです」。羽鳥善一あっての福来スズ子だし、スズ子あっての羽鳥だと。「二人とも、存分に苦しめばいいんですわ」。まるで恋愛の相談を受けてるみたい(笑)ココ大事なトコ。

カツオが欧州から帰国したのでスズ子は羽鳥家へ。しかし善一はまた逃げてしまう。記者会見は明日なのに。麻里「羽鳥は、あなたに捨てられるのがつらいのよ」「なんか、私、変にヤキモチ妬きそう」と本音もチラッと。

「あなたたちの関係は、あなたたちが気づいていない二人だけの世界があるのよ」と麻里。これもりつ子同様、本質をついている。同時に「あなたが好きよ」歌手・福来スズ子として、人間・花田鈴子としても「最高の友達と思っているわ」いいねぇ。

そこで麻里「二人とも苦しんじゃえ」とりつ子と同じことを言う。シンクロニシティだがことの本質でもある。引退会見の朝。愛子「マミー、頑張ってくるんやで」とモリモリ朝ごはんをおかわり。羽鳥家でも善一がご飯を「おかわり!」。これもシンクロ(笑)

スズ子には愛子。善一には麻里。かけがえのない存在が見守ってくれている。そこで麻里は引退会見が今日だと話す。「あなた、突然知ったらショックを受けるわ、そんなあなたを見るのがつらい。これでも一応あなたを愛していますからね」グッとくるね。

やがていよいよ「福来スズ子歌手引退報告会見」が始まる。本当にカウントダウンですねぇ。さびしいなぁ。

22日(金)の足立紳さんと佐藤利明のトークショー、夕刊フジの記事です。これも「会見」っぽいビジュアルですが(笑)


こちらはデイリースポーツ北村泰介記者によるトークショーの記事です。Part1だそうです。

「世紀のうた 心のうた」#3

今日は「福来スズ子歌手引退報告会見」。進行のタケシが、スズ子との出会いから話し始める。スズ子からのツッコミ。そこから会見が始まる。引退の理由は「今までのようなパフォーマンスができなくなった」「自分が一番輝いてきた時を汚したくない」

自分の思いをユーモラスに、いつもスズ子の調子で語る。ドラマだけど趣里ちゃんの会見にも見えてくる。そして僕らの世代にはキャンディーズの「普通の女の子に戻りたい」の引退会見とも重なる。これも「#ブギウギ」の奇跡の一つ。

記者からの質問。「男女歌合戦」のパフォーマンスが凄かったのに?「あれが最後の花火ですわ」水城アユミは「これからすごい歌手になると思います」「ごっつい悔しいです」と本音も。スッキリを受け応えていくスズ子。鮫島記者の意地悪な質問もさらっと交わしていく。

「羽鳥先生がおられなかっらワテは間違いなくここには居らへんと思います」「感謝してもしきれない。それ以上のことは何もおまへん」鮫島「寂しいな」が印象的。もう歌手に未練はない?「どうでっしゃろ、未練があるなら、辞めへんかも知れまへん」

鮫島記者もスズ子のファンだったんだ。「最後に一曲だけ聞かせてください」「そらあきまへん」「歌手、福来スズ子を可愛がっていただいて、ほんまに、ほんまに、ありがとうございました」。鮫島、最後に脱帽して拍手(ああ、フィナーレが近いんだなぁ)。

笠置シヅ子さんの引退について明確な真相がわからないだけに、スズ子の会見で、そのキモチに触れるようでとても良かった。その夜、愛子たちがショートケーキでスズ子を労う。「マミー、ほんまにお疲れ様でした」。そこからのスズ子のセリフがいい。

「なんや、今不思議な気分や」「ワテは自分が歌手を辞める日が来るとは思うても見なかった」その瞬間に「ワテの周りにおるのが、あんたらやったということ」大野さん、タケシ、ハジメ、小田島、そして愛子。スズ子にとってはかけがえのない「家族」。

血は繋がっていないけど、大切な「ワテの宝物」。ここで梅吉やツヤのことが蘇ってくる。見事だなぁ。血縁ではいけど、一緒に暮らし、一緒に笑い、一緒に泣いて。それが「家族」。誘拐未遂犯も一緒(笑)ああ、これぞ「ホームドラマ」!これぞ家族の物語。

足立紳さんの脚本に通っている「背骨」それが「家族」ぼくらが「ブギウギ」を観て「いいなぁ」と思ってきたのはこれであります。そして引退を知ってびっくりして大阪から駆けつけてきた秋山美月との再会。秋山は現役を貫いて「梅丸を繁盛させたい」

「うちは福来さんをずっと尊敬していました」「最高の先輩です」と秋山、頼もしいね。そこへ股野と水城アユミがやってくる。梅丸歌劇団時代の仲間の再会であると同時に、アユミとスズ子の芝居場でもある。

アユミ「私は、服来先生に引退して欲しくありません」。スズ子は「ワテが引退するのはあんさんのステージのおかげ」と男女歌合戦でものすごいエネルギーをもらったこと、いつまでもエネルギーをもらうわけには行かないと。

スズ子はアユミに「あなたを見て、歌手としての人生をスパッと辞めようと思うたんや」と引退の真相、胸の内を話す。「ブギウギ」でのスズ子の引退理由。「あと、渡したで、頑張ってや」後進にバトンを渡していく、大事なイニシエーション。やー、見事。

あと2回。残すは羽鳥善一とスズ子がちゃんと話をすること。ちゃんと話をすれば分かり合える。当たり前のことだけど、それがなかなかできない。足立紳さんの最後の仕掛け。いよいよ明日!楽しみであります。

#ブギウギ」は今週末で終わりますが、来週末からCSホームドラマチャンネル「ブギの女王 笠置シヅ子特集」にバトンは渡ります(笑)。1948〜1951年にかけての全盛期の主演映画五本に、特番「笠置シヅ子ブギウギ伝説」(前後篇)「笠置シヅ子スヰング伝説」で、圧倒的なパフォーマンスを!

「世紀のうた 心のうた」#4

あーだめだ。涙が止まらない。「#ブギウギ」を125話、観続けてきて良かった。この瞬間のために毎朝僕らは福来スズ子と羽鳥善一の「音楽史」を目撃し続けてきたのか。足立紳さんの脚本、草彅剛と趣里の芝居、いや佇まいは本当に素晴らしい。

麻里「そのお礼はちゃんと伝えた方が良くってよ」。りつ子「あなたたちは、何をやってるのよ」。善一とスズ子それぞれが自分の気持ちを言えないまま… りつ子に背中を押されたスズ子が出かけようとすると家の前に、麻里に背中を押された善一が現れる。

この草彅剛の「やぁ」に全てが込められている。今日は二人の会話だけで成立。「君が僕の元からいなくなってしまうのが、怖くてたまらなかった」二人で作り上げてきた「ブギは君のものになってしまった」「僕は、いつしか君に嫉妬していたんです」

「絶縁だなんて、僕は全く小さな人間だと後悔している」「僕はまだまだ君と楽しみたかった」「もっともっと歌を作りたかった」と気持ちを吐露し続ける。「羽鳥善一という作曲家を作ってくれたのは、君です」と感謝の言葉。このシーン本当に見事!

スズ子も「わては何度も先生に救ってもらいました…」引き抜き騒動、六郎が亡くなったとき、そして愛助を亡くし「ドキドキじゃないズキズキだ」と「東京ブギウギ」が完成したとき。この回想シーンは、スズ子や善一だけでなく視聴者の想い出でもある。

「わては先生の作られた歌だけ、歌ってきましたんやで」そう、笠置シヅ子さんの歌の98%は服部良一先生の作曲。外国曲のカヴァーと原六朗さんの曲を除いては。「先生とわては人形遣いと人形」「それでよろしいんです」「それがよろしいんです」

いつまでも善一にとって最高の人形でありたかったけど「もう無理ですわ」とこれも本音。最高かどうかなんてどうでもいいと善一。しかしスズ子は「お客さんの前に、先生にとって最高の歌手でおりたいんです」「君は僕にとって最高の歌手だよ」

「せやけど、そうでないんは、わてが一番ようわかってます」。それがスズ子の引退の本当の理由だった。「福来スズ子という歌手と作ってくれて、ほんまありがとうございます。紛れもなく、羽鳥善一という大天才の作曲家のおかげです」

ここで流れる「ハッピーブギ」の劇伴奏が僕らの感情をさらに高めてくれる。「先生のおかげで最高に楽しい歌手人生を送れれましたわ、ほんまに、ほんまにありがとうございました」。今日は二人の謝辞と感謝の言葉に溢れている。本当に素晴らしい。

そこで「福来君、最後に、最後にもう一度だけ、遊んでくれないか?」「思い切り楽しく終わろうじゃないか?」「よろしゅう頼んます」ああ最高のフィナレ。全てが羽鳥善一の音楽と福来スズ子の歌に収斂されていく!いよいよ大団円!

#ブギウギ」は明日で最終回ですが、来週からCSホームドラマチャンネルで「ブギの女王 笠置シヅ子特集」がスタート。7月まで笠置シヅ子さんの超絶パフォーマンスを楽しめます。オリジナル特番「笠置シヅ子ブギウギ伝説」(前後編)「笠置シヅ子スヰング伝説」も製作中!

「世紀のうた 心のうた」#5

いよいよラストショー。愛子は「マミーはもう二度と歌は歌われへんのやろ?」「どんな感じやろ、歌を歌わへんマミー」「それでええねん」スズ子を理解している愛子。思わず抱きしめて「あんたなんでそないええ子やねん」「誰が育てたんや?」

「マミーと愛助さん、ダディーの自慢や」とスズ子。グッとくるねぇ。そして当日。楽屋には梅丸少女歌劇団の仲間たち。もちろん「強く、たくましく、泥臭く、そしてー艶やかに」を久々に。村山興業専務となった坂口、そして山下もやってくる。

ラストショーのステージで、スズ子「なんや、もっと、もっと、言いたいこと、言わなあかんことあったんでっけど、もう、胸がいっぱいですわ」「この小さい胸を掻っ捌いて、言葉を引っ張り出したいんですけど、もう、何も言えまへん」

客席のあの顔、この顔。これまでスズ子が「義理と人情」で関わってきた人々ばかり。「わてかて皆さんのこと、ごっつい応援してまっせ。愛してまっせ」「ほなら、歌わせていただきます。皆さん大好きなこの曲」スズ子うなづき、善一うなずく。

なんとピアノのイントロ。バラード・バージョンの「東京ブギウギ」をゆっくりと歌いだす。ステージのスズ子、まるで「スタア誕生」のジュディ・ガーランドみたい。「#ブギウギ」は優れた音楽伝記映画のよう、といつも書いてきたが、最後もやはり!

羽鳥善一が奏でる美しいピアノ。ゆっくりと言葉を噛み締めながら歌うスズ子。そして転調、ステージが一気に華やかに、パワフルに、ゴージャスに!ああ、見事な大団円!ずっと福来スズ子のステージを見ていたい。

「東京ブギウギ」転調での善一の「スリー・トゥ・ワン・ゼロ!」も最高でしたね。そして穏やかな日々。食事風景の愉しさ。「義理と人情」と「おかわり」!やー、本当に見事でした。足立紳さん、櫻井剛さん、スタッフ、キャストの皆さん、ありがとうございました!

#ブギウギ」は本日がラストショーとなりましたが来週からホームドラマチャンネルで「ブギの女王 笠置シヅ子特集」がスタート。7月まで笠置シヅ子さんの超絶パフォーマンスを楽しめます。特番「笠置シヅ子ブギウギ伝説」(前後編)「笠置シヅ子スヰング伝説」も製作中です!


よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。