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『愛するあした』(1969年5月1日・日活・齋藤耕一)

齋藤耕一監督、伊東ゆかりさんとザ・ワイルドワンズをフィーチャーした、歌謡青春映画『愛するあした』(1969年5月1日)を久しぶりに、娯楽映画研究所シアターで上映。

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松竹でヴィレッジ・シンガーズの『落葉とくちづけ』(3月9日)を撮ってすぐ、齋藤耕一監督が古巣日活配給で撮った作品。制作は芸映で目黒スタジオで撮影している。昭和42(1967)年「小指の想い出」で大人っぽい「愛」を歌ってイメージチェンジに成功した伊東ゆかりさんは、昭和43(1968)年10月「朝のくちづけ」、この年2月「知らなかったの」とスマッシュヒットを連打。

6月1日発売予定の新曲「愛して愛して」のカップリングとして、用意された作詞・安井かずみさん、作曲・東海林修さんの「愛するあした」をフィーチャーした青春歌謡映画。松竹でのGS、カレッジフォーク映画を成功させていた齋藤耕一監督に、松竹でドリフ映画を制作していた芸映の青木伸樹プロデューサーが声をかけた。

男子ばかりの大学・愛和学院大学のアイドル的存在、水沢洋子・伊東ゆかりさんと八代美智子・松原智恵子さん。写真部の加瀬邦彦さん、鳥塚繁樹さん、島英二さん、植田芳暁さん、渡辺茂樹さんたちに盗撮されて、密かにプロマイドやスケジュール表を、男子学生に売っていた。

この時のワイルドワンズにはチャッピーこと渡辺茂樹さんがいて5人体制。「バラの恋人」「マーシー・マイ・ラブ」「すべてを捧げて」「明日に逢いたい」など、ヒット曲を歌うシーンが用意されている。

伊東ゆかりさん主演なので、タイトルバックに、ボサノバ歌謡の傑作「愛するあした」が流れ、劇中も、「朝のくちづけ」「知らなかったの」「潮風の二人」などのヒット曲を次々と歌う。もちろん齋藤耕一監督なのでフォトジェニックに! また孤児院の先生役でもあるので「浜千鳥」などの唱歌、童謡も歌う。

で、松原智恵子さんは、外国人のペンフレンドに次々と手紙を送り、いつかは・・・と夢見ている。彼女を好きな和田浩治さんは、学生運動に没頭していて、いつも怒っている。本当の気持ちをなかなか伝えることができない。

といったカレッジ・コメディに、伊東ゆかりさんが経営難に陥っている孤児院に住み込みで働いていて、その窮状をなんとかしようと、和田浩治さんが立ち上がってチャリティ音楽会を開こうというのが大筋。

伊東ゆかりさんの歌はふんだんだけど「小指の想い出」だけを歌わない。観客がじれていると、和田浩治さんが子供たちと合唱するという笑いが用意されている。

ある日、ペンフレンドの日系ブラジル人・中山仁さんが横浜に着くというので、嫉妬深い和田浩治さんの目を誤魔化すために、松原さんは伊東ゆかりさんの孤児院に、和田さんを”子供たちの遊び相手”の名目で預けてしまう。

バンカラだけど、子供たちに好かれ、孤児院のことを真剣に考える和田浩治さんに、伊東ゆかりさんが次第に惹かれていって・・・

という82分のプログラムピクチャーで、お話は他愛のないものだが、若い女性を載せることに生きがいを感じているタクシー運転手・有島一郎さんや、中山仁さんが泊まる赤坂プリンスホテルのフロントマン・左とん平さんなど、脇役がいい。学生運動の闘士に、「オバケのQ太郎」の声優でブレイクした曽我町子さんがコメディリリーフ的に登場。また、内田裕也さんが柔道部の師範役で、ブルース・リー前夜なのに「怪鳥音」のような怪しい奇声を発して笑わせてくれる。

劇伴奏も含めて音楽は東海林修さん。フルートをフィチャーしたサウンドが心地良い。「愛するあした」がボサノバなので、中山仁さんをブラジル移民の息子という設定にしたような気がする。

日活公式サイト

web京都電影電視公司「華麗なる日活映画の世界」


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