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『若き日の次郎長 東海道のつむじ風』(1962年1月3日・東映京都・マキノ雅弘)

渥美清研究で、中村錦之助「若き日の次郎長」シリーズ第三作『若き日の次郎長 東海道のつむじ風』(1962年1月3日・東映京都・マキノ雅弘)をYouTubeレンタルで、40年ぶりの再見。錦之助の「若き日の次郎長」シリーズは、ぼくが子供の頃、最初にテレビ放映で出会った「次郎長映画」。久々に観たけど、本当に面白い。

今回は、若妻・お蝶(丘さとみ)と水入らずで、甲州の温泉場に湯治に行くヤング次郎長(錦之助)が、旅の途中で通りかかった甲府で、庶民を困らせている猿谷の勘助(山形勲)一家を成敗する痛快篇!

服部良一先生によるオリジナルの挿入歌もふんだんに、ミュージカル・コメディの味わいもあり、森の石松(ジェリー藤尾)とそのガールフレンドで次郎長一家のおもと(渡辺トモコ)ちゃんの歌が楽しい。甲府の雲助・片輪の権(千秋実)さんたちの歌う挿入歌のユーモア。錦ちゃんの次郎長は、実に頼もしく、言動がキビキビしていて爽快、痛快、ダイナミック!

前半、ヤング次郎長が、単身、甲府に乗り込んで、猿谷の勘助に宣戦布告をするトッポさ。悪代官(松本染升)の鼻の下と、脛の傷に集中攻撃をする作戦のトンチ。大政(水島道太郎)、法印大五郎(田中春男)たちベテラン陣にまじって、若さ溢れる渥美清さんの関東綱五郎のイキの良さ! あわよくば、ほかのキャラを食ってしまおうというエネルギーがたまらない。

クライマックスは、やくざ同士の闘いではなく、スケベな悪代官を懲らしめるために、甲府の庶民たちを一致団結させて、代官所に乗り込む次郎長一家! 前年の60年安保の国会前デモのマキノ版! イソップ童話のような寓話で描かれて、肝心の猿谷の勘助退治があっさりしているのもいい。

次郎長一家に惚れ込んで、大活躍する若き日の吉良仁吉に、劇場版「月光仮面」大村文武。トッポさも含めて、映画の勢いになっている。もちろん、一番良いところで「わっしよい!わっしょい!」もある。しかし、東宝版からずっと法印大五郎を演じている田中春男さん!素晴らしいなぁ。

星美智子のイカサマ賭博師と大政との交情や、コミカルな杉狂児のそば屋の親父など、マキノ雅弘監督の痒いところに手が届く目配せも楽しい。

よろしければ、娯楽映画研究への支援、是非ともよろしくお願いします。これからも娯楽映画の素晴らしさを、皆さんにお伝えしていきたいと思います。