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昨日と今日がくっついてゆく世界で

小沢健二「キツネを追ってゆくんだよ」という配信を観た。歌を歌わない配信、さて何をやるんだろうと興味津々だったのだけど、なんだかとても面白くてMacBookProの前でずっと最初から最後まで見入ってしまった。多分予定されていた映像や段取りがトラブルでてんやわんやになって、予定より時間が大幅に押したのだろう、気づいたら日付が変わってしまっていた。たくさんの人が関わって入念な準備もされただろうに「ああ、ライブ配信ってやっぱ超こわい…!」と思ったけれど、そのハプニング含めて2時間のなかにいくつもハイライトがあった。

小沢健二その人の声でいくつかの朗読を聞いていて僕が思ったことをうまく説明するのは難しいけれど、ここ最近ずっと頭の片隅にあった「言葉のノイズやバズ」について、改めていろいろ考えた。先月やった配信ライブ「ハイテク!猫町フェス」でTシャツを作ってオンラインで販売して、それはもう驚くほどの、予想以上の人たちが購入してくださった(ドネーションの報告などもう少しお待ちください)。白、黄色、青と3色作ったんだけど、なにかのタイミングで、だれかがどこかで「青はイラストが見えないから」とコメントすると、直感的に青がかっこいいなと思って心を決めていた人も「え?」と思って「イラストが見える白のほうがいいかな…」と惑う。「黄色は派手だからなあ」と誰かがつぶやけば「あ、目立つの嫌だな」と黄色のTシャツをカートに入れてた人は青に心変わりしたりする。結局、一番人気があったのは白で、一番通好みな色は青だった。

青のTシャツに黒のインクを刷るのに印刷所まで行って1回刷りにするか2回刷りにするかで職人さんと悩んだり、いくつかある黄色のなかから色見本を睨んでTシャツのボディを選んだり、そこには当たり前に時間と労力とヒューマンパワーが注がれているけれど、「言葉」にはそんなのを軽く(簡単に)飛び越えていく、切れ味というものが、ある。顔の見えない声にも人の心への影響力というものがやっぱりある。僕は2005年に「思い思いの言葉を紡ぐことで誰かしら誰か傷つけてゆくのなら僕は黙っているよ」という歌詞を書いたけれど、でも、人間は生きていくうえで黙ったままではいられないわけだから、蛇行する思考を重ねてから何かを言うようにしたい、と思う。今もそう思っている。言葉ってすごい道具だから、丁寧に扱って、きれいな言葉でしゃべりたい。

真夜中、今日が昨日になって、明日が今日になる瞬間に僕はそんなふうに「言葉」について考えた。そのきっかけをくれたのは、小沢健二「キツネを追ってゆくんだよ」だった。

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