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この頃すっぱいみかんを食べるグルメな夫

グルメな夫が早生みかんのことを「すっぱいみかん」と名付けたのは、オヨメサンが妊娠していた時にさかのぼる。季節は初秋。
 
オヨメサンは切迫流産になったために身動きができず、グルメな夫が近くの商店街に買い物に行き、家事一切をやるはめになった。そのときおよめさんが食べたかったのがグレープフルーツ。
「グレープもフルーツもわかるけど、グレープフルーツって、いったい何?」
グルメな夫はグレープフルーツをインドネシアで見たことがなかった。
アチャー、予定変更。早生みかんを買ってきてもらうことにする。みかんならわかる。

「インドネシアにもみかんはあるけれど、早生みかんを食べるなんて聞いたことがない。いったい日本ではそんなものを本当に売っているのだろうか。」
首をひねりながら、グルメな夫はたどたどしい日本語で買い物をしてきたものである。
早生みかんを嬉々として食べるオヨメサンのそばで早生みかんを食べかけて、
「す・・・すっぱい!!!!!!」
と叫んだグルメな夫。たちまち食べるのをやめた。

インドネシアにもみかんはある。が、甘いみかんにしかお目にかかったことはない。スダチのような小さい緑のみかん(jeruk nipis)もあって、多分インドネシアで最も酸っぱい果物だろうが、果汁を絞って砂糖をそれこそたっぷり入れて甘い甘いジュースにする。すっぱいみかんを食べるという発想はない。

かくして、以来、早生みかんはグルメな夫に「すっぱいみかん」と呼ばれて敬遠されてきたのである。

ロンボク島の素焼きの皿に大玉の早生ミカンてんこ盛り。

インドネシアで酸味の料理と言えばアチャル(acar酢漬け野菜、多くの場合皮をむいた胡瓜)くらいだろう。そのアチャルにしても、料理に添えられていてもほとんどの人が食べ残すのを見てきた。だから、インドネシア人は酸っぱいものが苦手なのだろうと思う。グルメな夫も例外ではなかった。
 
それがどうだろう。「すっぱいみかん」を1日に7個も食べるというのは、普通の日本人以上ではなかろうか。
おまけに、グルメな夫はこの頃、「すっぱいみかん」だけでなく、酸っぱい和食メニューも食べられると言う。

びっくりである。何が起こっているのかわからないけれども、とにかく「めでたい!」ということにしておこう。

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