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NOKTONと厳島

NOKTON 35mm F1.2 X-mountを手にしてまだ一ヶ月も経っていないのだが、写りにかなり惚れ込んでいる。
元々コシナvoigtlanderのレンズは好きで、NOKTONもVMマウント版のものは3本使ったことがある。(いずれも35mm)どれも素晴らしい描写だったのだがこのX-mount版も素晴らしい。フジフイルムのイメージセンサーに最適化して光学設計をしたのだから相性はもちろん抜群として、開放での滲む感じと絞って撮ってもしっかり立体感がある描写をしてくれる所が流石ノクトン!さすがコシナ!という感じである。

暇があればいろいろ撮りに出掛けているのだが、今回は厳島(通称宮島)へ行った際の事を。

そもそも厳島へは年に何回も行っている。何回も行って何をするのと思うかもしれないが、四季折々の自然を楽しみたいのが一番で、お寺や神社へ参拝するのがその次といった感じだ。なので厳島神社や鳥居の方に行かずに帰ることもある。厳島はそもそも島自体や弥山が御神体として考えられる由緒正しい土地であり、そこにある自然を堪能するだけで価値があると思う。
そして新しいレンズを手に入れたら毎回来ている場所でもある。
新たなレンズがどんな描写をしてくれるのか、僕が撮りたい物をきちんと写してくれるのかを試すにはちょうどいい場所でもある。

というわけで今回はノクトンでじっくり宮島を撮るというのが目的の旅。
他にレンズはSIGMA 56mm F1.4とSIGMA 16mm F1.4の2本。ノクトンを基本として広角と中望遠を必要な時に使うという感じだ。じっくり撮影に出る時の基本的なスタイルは昔から広角・標準・中望遠の3本が基本だが(レンズの名前が変わることはしょっちゅうだが)ノクトンを手に入れてからは広角と中望遠の出番が減った気がする。
広い景色に対してはどの部分を切り取るかを考えればいい、どこかをクローズアップしたい時もぐっと寄ればいい、と考えれば35mmというレンズはAPS-Cにとって万能の焦点距離と言える。35mm1本で撮る基礎が昔に作られているのでそもそも得意なレンズではあるのだが、描写の良さも相まってレンズを変えようという気持ちがあまり出てこない。(コシナ製の広角と中望遠を持っていたらまた別かもしれない。早くX-mountを増やして、コシナさん。)

鞄の中にSIGMAを2本入れ、X-Pro3にNOKTONをつける。コシナのHPでもX-Pro3に取り付けた写真が使われているだけあって、X-Proシリーズとの親和性は狙っていると思う。組み合わせた見た目は本当に素晴らしい。


一人でスナップしている人間には佇まいが必要だと思う。


平日だが春休みのシーズンだったので、宮島口の方へ向かう電車はそこそこの人だった。そしてフェリーも結構な人。こんなに多いのは久しぶりだ。
コロナに対してもみんな体裁だけ取り繕っているけど心ではどうでも良いと思っているのがありありとしている。マスクだけとりあえず付けとこうというのが日本人らしい。


今回の写真は全てX -Pro3とNOKTON。
モノクロはACROS、カラーはクラシックネガ。

X-Pro3ではこのX-mount版のノクトンを使うとちゃんとパララックス補正もされる。私の大好きなOVFで撮影が出来るのだ。
なので撮影の感覚としては本当にアナログだ。被写体を見つけたら目測で大体のフォーカスを合わせる、絞りを決め、ファインダーを覗いてピントと露出を決定してシャッターを切る。大事なのはこの所作をスムーズに無駄なくする事。カメラを構えて撮るという行為は人によっては不快に思うかもしれない。だから出来る限り美しく、敬意を持って撮っているという事を周りに伝えたいと日々自分を顧みるようにしている。

写真を撮るという行為は自分だけのものではない。
例え見られているのが鹿だとしても。


宮島と言えば鹿


だから背面モニター越しにパシャっと1枚撮って連れ合いとバカ笑いしながら立ち去っていく、というカメラを持っている人を最近よく見かけて「なんだかなぁ」と思う。逆に構える姿がしっかりしていて美しく、周りへの配慮も感じられるカメラマンを見かけると誇らしく思う。

なんて事をぶつくさ考えながら人気のないところへ向かう。



島の自然と向き合う時間。
静かで幸福な時間。


基本的に絞りはF4までを使うことが多かった。
というのも、F8ぐらいで既に回折の影響が出るように感じたのと、マニュアルフォーカスだと絞りすぎるとピント位置がわかりにくくなるからだ。
遠景で無限遠方にピントを合わせる時以外はF4ぐらいまでがピントの山を掴むには向いていると思う。実際F4だと被写界深度もある程度稼げると同時にボケも出るので立体感のある作画をしやすい。そしてF1.4〜F2辺りを使えばピントはシャープでかつしっかりとボケてくれるので一本でいろいろな写真が撮れるレンズだと思う。
解放で撮ると独特の滲みが出てこれぞ!という感じになるが、思ったほど暴れる訳ではなく案外使いやすいとは思う。ちなみに滲みのせいでピントの山は分かりにくくなるため、フォーカスはなかなか大変になる。だがその分撮影に対する集中度が増えるのが良いと思う。


F1.2解放。この日のEXIFを調べたら思ったより使っていなかった。


自然を堪能した後は大聖院へ参拝。



その後はまた人気のない所でぼーっとして海沿いへ。



夕方になり潮が満ち始めていた。
鳥居の方へ歩いてみると記念撮影をする人々で沢山。
私はそういった人々をスナップする。
観光名所といった場所自体にさほど興味はない。
人が多いと興が冷めてしまうからだ。
だからそこにいる人々がどんな顔をしているか、何をしているかの方を写真に撮りたくなる。



しかし本当に観光客が戻ったなと思う。コロナ禍はどこに行っても静かだったので、その点に関しては個人的には良かった。だがこれが本来の姿であるし、この方がこの厳島で商売をしている人にとっては嬉しいはずだ。
願わくば節度ある人が増える事と、散歩するだけじゃなくてちゃんと観光してくれる人が増える事を願う。



冬の終わりの宮島をノクトンと歩いて、全く素晴らしいレンズだと改めて思わされた。
写りも良い、佇まいも良い。
何よりも、初心に戻って写真を撮っている感覚がするのが嬉しい。
X-Pro1とNOKTON classic 35mm、この組み合わせが私のスタートだった。カメラもレンズも最新のものになってはいるが、大事な部分は変わっていない今のこの組み合わせ。
これから大事な一枚を撮るときは、このレンズでしっかりと丁寧に撮っていきたい。



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