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歌い手とMIX師それぞれのいいミックスについて

ぼんやりX (旧Twitter)をながめていたら、衝撃的なポスト(ツイート)がおすすめで流れてきました。どうも歌い手さんがMIXの仕上がりについて納得いかず、それについて投稿したものでした。

でも、どちらが悪いとかでもなさそうな内容でしたし、誰の身にも起こりかねない話だと思ったので僕なりに原因となりうる要素についてまとめてみました。

少しでもリスクをさけるために、僕たちがやらねばならないことって色々あるんだなと改めて考えさせられました。


ことの発端

今回は、悲しみと怒りをあらわにしているポストだったので、何がおきているのかということにとても興味を持ちました。

そして、関連作品などを聞いているうちに「これはすべての歌い手やMIX師の間で起こりうる問題なのでは?」と感じる瞬間がありました。

そもそも、こういったトラブルは作品に対する完成イメージの差異が歌い手とMIX師の間にあることと考えられます。

歌い手にとってのいいミックス

歌い手のみんなが1番思っているのは、自分の歌声をいい感じにしてくれるミックスです。とてもアバウトですよね!でも正解だと思うんです。とはいえ、これではnoteとして成立しないので少し掘り下げてみていきます。

僕は歌唱レベルによって歌い手がミックスにもとめることって変わってくると考えています。

発声もままならない場合、1音の中での揺らぎもバッチリ補正して安定感のあるように聞こえる音作りが合います。

声は出るが、音程リズムが曖昧な場合、リズムはきっちりあわせて、音程は9割補正するのが良い場合が多いです。

表現などもこだわってる場合、1音単位での補正を重ねると納得されない場合が多いです。

つまり、自分の歌唱のいいところと悪いところが本人の中でハッキリしているため、悪いと思っているところだけどうにかしてほしいと願っているのです。

逆に音色や音質の部分についてこだわる方は少ない傾向にあるので、きっとそこはMIX師を信頼していただいているんだと思います。

MIX師にとってのいいミックス

逆にMIX師というのはそういった歌い手の主観的な良い悪いという基準で音を聞かないことが多いです。

なので、それぞれがもっているリファレンスと比べてミックスすることが多いです。そのため、基準となるラインが歌い手さんの外にきます。

なので、歌い手さん自身の良い部分がそのまま「良い」とならない場合もあります。そのすり合わせを怠るといろんな食い違いを生んでしまいます。

ただ、そのMIX師がもとめてるサウンドというのがその人の個性でもあるので、歌い手さんの意見にすべてを合わせてすべての個性を殺してしまうというのはちょっと違うかなと思うんです。

そもそも、依頼をいただく側にいるのですから、依頼の前に音の傾向は歌い手さんも理解されてるからです。それなのにあれもこれもとそのMIX師の音に否定的な場合は何かしらのエラーがあるんだと思うんですね。

多くの場合は、双方の技量不足と僕は思っていますが。

僕の思う良いミックスについて

良し悪しの基準をどこに置くかによってたどり着くゴールが変わるということを理解いただけたと思います。

それらを踏まえた上で僕の中でのひとつの線引きがあります。

歌だけよく聞こえれば良いという基準でミックスすることは僕はありません。なので、もしかしたら他のMIX師さんよりもボーカルの音量は小さいかもしれません。

歌ってみたとしては歌だけ綺麗に聴こえていればいいのかもしれません。実際歌ってみたのリスナーの中にはそういう価値観の方もいると思います。

それでも、僕が聞いてほしいのはもっと不特定多数の人たちです。

普段歌ってみたを聞いてない音楽ファンが聴いても、
「この歌い手さんの歌で元気出た!」って思われるような作品を世に残すお手伝いをしたいんです。

そのためには、あまりにも歌ってみたナイズされた音ではそれが違和感となってしまって、ちゃんと歌を聴いてもらえないと思うんです。

そんなこと言ったって、自分の価値観を歌い手さんに押し付けて「声を大きくしてほしい」という要望に「しません!」というのは違うんです。

魅力的な声を最高の状態にしあげて、たくさんの人に届くようにしたい。
この軸さえ僕の中でぶれない限りは要望には精一杯応えたいというのが僕のスタンスです。

MIX師は考えることのできる道具であれ

正直機材の進歩がめまぐるしく、興味があれば誰でも歌ってみたのミックスなんてできる時代になっています。

その中でMIX師という人たちがそれを続けるには、歌い手の潜在力を引き出すようなアプローチをもってるかどうかだと思うんです。

ただ使われるだけの道具なのであれば、それはあなたである必要性がないわけです。

歌い手さんが自分の中にはなかったなに新しい光みたいなものを掴めること。そのきっかけを作ることこそ、これからのMIX師に必要な価値なのです。

それが作り出す音であれ、キャラクターであれなんでもいいんです。
関わる歌い手にとってプラスになることさえ満たされていれば。

まとめ

元ツイートの件については、お互いの沽券に関わることだと思うので真っ当な感覚で言えばどちらも手を抜いているわけではないと思うんですね。

それでもこういったことが起こるということは、明日は我が身ともいえるわけです。

それを回避するのにいちばんの特効薬はやっぱり「誠実さ」なのです。
僕自身も兜の緒を締め上げ直して活動をつづけていきたいと改めて思いました。

この記事がすこしでもみなさんのリスクヘッジに繋がるなら幸いです。
そして、有意義な活動をつづけられるよう、お祈り申し上げます。

また、今回の件について僕がちゃんと触れたのは双方が公開されている音源だけです。お互いの人間性、これまでの経緯などは知りませんのでご了承ください。


追記

該当のMIX師さんからもこの件についてのポストがあがっていました。


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