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良い感じの読書生活ゲーム(3)

 あなたが自分で幸せになるための「良い感じの読書生活ゲーム」を紹介している。このゲームは3つのステージがあり、2つ目の実践ステージの攻略法の続きを紹介する。ちなみに、前回は以下のリンクを参照。

実践ステージ(後編)

実践ステージの攻略(2)読みたい本のリストを豊かにする

 読書生活ゲームの最大の難所であり、成功か失敗かを左右する最大のポイントが「あなたが本当に読みたい本があるか」という点。基本ステージは気楽に読める本を取り上げるのでそこまで気にならないが、実践ステージで読書生活ゲームが「リーグ戦」となってくると、読書に「楽しさ」だけではなく「読み応え・やりがい・成果」みたいなものも期待するようになる。

 実のところ、読みがいがあって、気付きの多い本との出会いなど、百発百中とはいかない。3割ヒットなら十分成功と思った方が良い。しかも、良書ほど「読み応え」は強いときている(そして挫折しがち)。リストアップしたときは気合いも入って「やるぞ!」と思っているが、いざ読み始めると手強くてしんどくて、いつの間にか本を読まなくなる。別の充実した時間を過ごすならともかく、ダラダラと、幸福感の低い時間の過ごし方に陥りがち。

 私もこの点に苦労しているが、今のところはうまくいっている。あれこれ試して、参考になったのが外山滋比古さんの『思考の整理学』。以下に、この本を参考にした、私なりの「読みたい本」を充実させる方法を紹介する。

1. 気になった本をとりあえず記録しておく
 出会った時点でスマホからAmazonのウィッシュリストやhontoのほしい本に登録する。この時点では自分のメモに書いている読書リストの「読みたい本」リストには登録しない。いわばノミネート段階。気になる本に出会うきっかけは様々で、新聞の書評だったり、他の人からの紹介だったり、ネットサーフィンで見つけたり。自分の「読みたい本」リストを見て、自分に足りない領域の本があれば、図書館司書に尋ねるのも良い。読もうと思った本でも、とりあえず「ほしい本」に記録しておく。

2. 「ほしい本」に登録した本に対して、少し時を置く
 少し間をおくと自分の中に変化が現れる。少し経って、それでも読みたいと思っているなら、その本を買う。図書館にあれば図書館で借りる。買わない・借りないのであれば、その本は「その程度の本」ということ。時期が来れば買うかもしれない。ただし、専門書など発行部数の少ない本は、買わなければ入手できなくなる可能性があるので注意が必要。

3. 買った本を自分のメモの読書リストの「次に読みたい本」に登録する
 買ってしまえば、「買ったからには」と、読む気になる。そして入手したその日にちょっと一区切りその本を読む。入手した時が読む意欲の最も高い時なので、その時に一区切り読むのは苦ではない。一区切り読んで面白ければ割り込んで先に読むもよし。そこまでなければ積ん読にして後日続きを読むもよし。図書館で借りる場合は、返却期間までに読む必要があるので必然的に優先的に読むことになる。

4. 読書は数冊の本を並行で読むのがオススメ
 複数の本を併読すると、読書生活が続きやすい。「重い本」を読んでいるときも、別の本があると少しずつでも読み進められる。併読するので、1冊読了した時、実際には「1冊の読了と仕掛かり中の数冊」を読んでいることになる。この「仕掛かり中」が、これからも読書しようという気にさせる。さらに、読書リストの見直しにも役に立つ。

5. 自分の読書リストの「次に読みたい本」を見直す
 「次に読みたい本」が順調に消化されていくカテゴリと、なかなか読書が進まないカテゴリがあるのに気付く。ここで読書リストのカテゴリごとの目標の配分を見直す。自分にとって最も幸福度の高い読書リストはどのような配分であろうか。順調に読書が進むカテゴリの本を増やして波に乗るのが良いか、滞りがちな自分に喝を入れて現状打破を図って読破による充実感を得るのが良いか。この選択を決めるのに役立つのが「仕掛かり中」の本たち。途中まで読んだ本に対する所感が、読書リストのどのカテゴリのリストを充実化させ、どのカテゴリのリストを縮小させるかを導いてくれる。

6. 読了ペースと読書リストのバランスを見る
 もしも週2冊の読了ペースを1年続ければ、四半期の13週間で26冊、年間の52週間で104冊の読了ペースとなる。この時、読書リストの「次に読みたい本」が104冊リストアップされていれば、理論上は、その年の読書に困らない。しかし、実際にはその年に発行された本や、ふと出会って割り込みで読み始めた本などがあり、そこまでいらない。私の経験だと「次に読む本」に60冊程度リストアップされていれば、1年分の読書で何を読むか困ることはない。

7. バランスが崩れたら
 読みたい本が増えてくると「次に読みたい本」のリストが長くなって、読了ペースが追い付かない事態が起きる。または、仕事や生活状況が変わって読書ペースを落とさざるを得ないとバランスが崩れる。その時も「どの読書が自分にとって幸せか」という視点で読書リストや「次に読む本」のリストを見直すと良い。「次に読みたい本」のリストが長くなりすぎた場合は、本の追加を抑えれば良い。私は、読書リストに追加した本は原則として削除しない。3年越し、5年越しに読むことになる本もあるが、それでも読んで良かったと思える場合がほとんど。普通に保管すれば、本は腐らない。

実践ステージの攻略(3)読書内容のバランスを取る

 そもそも、なぜ実践ステージが基本ステージよりも幸福度を上げるのか。それは、実践ステージが基本ステージの諸条件を満たしつつ、さらに「快楽とやりがいの両立」を図るところにある。読書によって一石二鳥を狙おうというもの。実は、快楽とやりがいの両立やバランスは難しい。やりがいに目を向けて手強い本ばかりを選んで読んでいると、しんどさが募る上に、読了冊数も下がってくる。何より、読書のリズムが乱れてくる。この攻略において、私はポール・ドーランの『幸せな選択、不幸な選択』を参考にしている。

 この本は、幸福を「快楽とやりがいの両立」と捉えて論を進めている。この本を参考にしても、1冊の本で快楽とやりがいを両立させることは難しい。しかし、リーグ戦のごとく複数の本の組合せで読書を振り返ることで、全体として快楽とやりがいを両立させることができる。

1. はじめに、厳密な数値化は難しいと開き直る
 
読書リストのカテゴリは「快楽」の色が強いもの、「やりがい」の色が強いもの、その中間のものがある。また、同じ1冊の本でも700ページを超える大著から、150ページに満たない雑誌まで様々である。なお、同じ100ページでも難易度によって読み進められるスピードは全然違う。そのため「1冊読了」の価値は読んだ本によって異なり、これを平準化しようという努力は無駄に終わる。しかも、実際に読むまで正確なところは分からない。自分の直感に基づく幸福度の評価こそが、このゲームの結果を決める。

2. 厳密な数値化が難しくても、目安を持つ
 たとえば私の場合、「快楽」色が強いファンタジーやSFなどの小説の読む負担を1とすると、一般的なビジネス本の読む負担は2程度となる(例えば、300ページ程度のSF小説は、150ページ程度のビジネス雑誌と同じくらいの負担で読める)。そして、内容の難解な本(哲学や経済理論など)の読む負担は4程度となり、一般的なビジネス本の2倍程度の時間が掛かる(例えば、450ページ程度の難解な哲学の本は、150ページ程度のビジネス雑誌の6冊分と同じくらいの時間が掛かる)。

3. 自分の目安を元に、月にどの程度の本が読めそうか見込みを立てる
 私の場合「150ページ程度のビジネス雑誌」が基準になっていて、1冊読むのに4時間程度が目安となっている。そして週に12時間〜16時間ほどを読書に充てるので、このレベルなら週に3冊くらいなら読むことが出来る(読むだけならば)。ここから、もしも難解な本に挑戦せず、読みやすい本に留まるなら、月(4週間)で12冊は読了可能という計算が成り立つ。しかしそれでは「やりがい」は高まらない。そこで、450ページ程度の読み応えのある難解な本を1冊だけ選んだとする。その1冊は「150ページ程度のビジネス雑誌」の6冊に相当するので、その月に読了できそうな見込みは7冊程度となる。そうやって、「次に読みたい本」のリストから「快楽とやりがい」のバランスを見つつ、無理のない程度に次月に読む7冊をリストアップする。
 とはいえ、はじめから周到な計算などできない。予想は外れる。そして、予想が外れるから読書は楽しい。計算高くなるより、本を愛するまっすぐな心を大切に読み進める方が幸福に近づく。

4. ざっくりと年間の見通しを立てて「次に読みたい本」を充足させる
 私の場合、2023年時点で「快楽とやりがい」を両立させる選書は、年間読書数が100冊になるように調整している。100冊をリズムよく読書する範囲で、読み応えのある本を選ぶようにしている。何年もこのゲームを続けていると、自分の読書ペースを掴めるようになってくる。(それでも「当たり」の本を百発百中で選ぶことはできない。)
 読書生活ゲームの実践ステージは振り返りが2段階になっているが、2段階目の振り返りの際に、今の読了ペースから「次に読みたい本」のリストが充足しているかどうか確認すると、読む本に困ることはない。私の場合、「次に読みたい本」リストは積ん読リストとなっており、150冊近く積まれている。割り込みなど含めると2.5年分に相当する。ちょっと積みすぎなので半分ぐらいにしようとは思っている。それでも1年後には枯渇しそうなカテゴリがある。カテゴリごとの本は偏る。この偏りを2段階目の振り返りで調整すると、いい感じで「やりがい」を感じることができる。


 読書を通じた「快楽とやりがい」のバランスは、人によって随分と異なるだろう。あまり他人と比較せず、「自分は自分」と開き直って、自分にとって満足度が高まるような読書リストをメンテナンスすべきだ。そうやって淡々と読書を行い、記録を付けて、振り返ること。そうすることで、自分の中で知りたかったことを知り、見たい世界が見えるようになる。継続によって、ふと今までの経路を振り返った時、そこに充実の色を見る。
 振り返りから充実の味を噛み締める時、読書生活ゲームを続けて良かったと、得も言えぬ満足感を味わうことが出来るだろう。

(応用ステージに続く)


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