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自作短篇

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自作小説の短編をまとめています。400字詰原稿用紙で30枚から50枚くらいです。
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記事一覧

【短編小説】コはコウノトリのコ

  脳がチップ化されて以来、鳥が増えた。  死にかけた年寄りたちがこぞって自分の脳をチッ…

平松誠治
1か月前
3

【短編小説】理工学部 福来教授

 買い被られてきた人生だった。  丹下賢太郎は夕暮れが近づく高速道路を一路埼玉に向かって…

平松誠治
5か月前
10

【短編小説】ナオンとナオンの鉄の拳

 学園都市の内務政府が統制を強めてデュエルを禁止し、我々は少し暇になった。しかし 四季母…

平松誠治
7か月前
9

【短編小説】メディアコンバーター

 局長のブリーフィングを嗅ぎながら俺は眠気を催していた。つまり退屈していた。俺のキャリア…

平松誠治
9か月前
9

【短編小説】死神と取引するために必要ないくつかの準備について

 野球やサッカーを楽しいと思ったことは一度もない。  いや、私はむしろ子供の頃からこのよ…

平松誠治
1年前
12

【中編小説】女の操

    レズビアンの両親に育てられた僕は——当たり前と言ったら当たり前なんだけど——父親…

平松誠治
1年前
8

プロレス・スーパーヒーロー列伝 傲慢と偏見、ブルーザー・バンディット編【短編小説】

 三年ぶりに訪れたアマリロは相変わらず埃っぽかった。町を出ればすぐそこにあるのは砂漠であるから当然なのだが、まだ五月だというのにテキサスの太陽はすでに日本の真夏のそれと変わらない輝きである。しかし空気が極度に乾燥しているので、皮膚に浮かんだ汗はすぐに蒸発し、さらりとした感触だけを残していく。蒸し蒸しした日本の夏とはそこが大きく違うところだろう。私は市の郊外の空港で借りたレンタカーで、そのまま今回の目的地に向かっていた。町の中心からさほど離れていない、商業地区の外れにある倉庫で

【短編小説】真実は拳に宿る

 ソビエトという国がなかったことはもはや定説となった。今から数百年前、ユーラシア大陸の大…

平松誠治
2年前
9

【短編小説】火星の大統領クリントン

 伯父の遺品の中に火星の土地の権利書があった。もちろんジョークグッズの類だろう。しかし各…

平松誠治
2年前
7

【短編小説】暗闇を抜けて漆黒の中へ

 泉慎太郎は学校の成績がよく、顔立ちも整っていたが、性格に難があったので女の子にはもてな…

平松誠治
2年前
14

【短編小説】竹輪を裏返せると思う?

 スーパーで買ってきたおでんに入っていた竹輪に見とれていた私に娘が「どうしたの?」と聞い…

平松誠治
2年前
15

【短編小説】リボルバー

 黒木から間に人を介して連絡があった時、俺はネパールのカトマンズにいた。宿のWiFiを通して…

平松誠治
2年前
14

【短編小説】荒磯博士と機械婦たち

 今さら言っても仕方のないことだけど、荒磯博士の仕事なんて手伝うべきじゃなかったんだ! …

平松誠治
2年前
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【短編小説】青葉の叔父さん

 青葉の叔父さんは三十九歳だが、独身だった。オートバイを三台、ギターを十二本持っていた。  叔父さんが住んでいるのは、青葉と母親が暮らしている二階の部屋から廊下を間にはさんだ北向きの六畳間で、いつも足の踏み場もないくらい散らかっていた。青葉がまだ小さかった頃、母親にこっぴどく叱られた夜には叔父さんの大きなベッドの中に潜り込んで一晩やり過ごすこともあったが、十四歳の今、もうそんなことはなかった。でも青葉は今でも叔父さんのことが大好きだった。  そもそも青葉たちが暮らしている家は