洋楽『Settle Down』(THE 1975) あるはずのない思い出

目を閉じて、耳を澄ますと、とある風景が浮かぶ。そんな音楽が存在する。たとえそれが、見たことがない風景だったとしても。

初めて聴いたのは、たしか某アパレルショップの渋谷店。全世界に展開している有名なショップだ。そこで大音量でかかっていたのがTHE 1975『Settle Down』。一瞬で心奪われた(だが彼らの音楽に本格的にハマるのは、それからしばらく後のことだった)。

なんて切なくてキレイなメロディなんだろう。それが最初の印象。そしてその印象は、何度も聴いた今もなお変わらない。

じっと聴いていると、行ったこともないイギリスの市街地の風景が思い起こされる。PVがそんな感じなので、引っ張られているところもあるかもしれない。だけど、この感覚は嘘じゃない。

切なくてやり場のない、そんな感情を持て余していた10代のころ。自分にも確かにあった「あの頃」を思い出す。THE 1975、彼らの方が僕よりも年下なのに。なんでそんな曲が書けるのか。

こうしている間にもまた聴きたくなってくる、素直に良い曲である。

YouTubeを見ていると彼らの曲のピアノカバーとかに出くわす。これがまた素敵である。この曲だけではなく、彼らの曲のカバーってどれも、ずっと聴いていられる。シンプルなカバーが素敵って、いい曲である証拠だよね。素材として愛される音楽って、強いと思う。

彼らのあらゆるものに対するスタンスはかなり尖っている。こと音楽に関しては、スターダムとマニアックが混じっている。

でも彼らをいくら解説して紐解こうとしても、意味はない。彼らの音楽に身を任せて、そこで感じたことが全てである。

音楽を聴くことの楽しみや切なさを僕に取り戻してくれたバンド。

いつまでも聴き続けるだろう。

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