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モノクロ同盟 (5)

1−10

  三上、岸田、あっけにとられて、ふたりを見送る。

岩谷   (岸田へ)書いてきたんだろ。
岸田   ……はい。
岩谷   置いていけよ。
岸田   ありがとうございます。
岩谷   三上さん、読んだの?
三上   いえ、まだ……
岩谷   いいの? 先に読んで。
三上   岸田くんに聞いてください。
岸田   ぼくは……はい(机に原稿を置く)これです。
岩谷   じゃあ、たしかに。
岸田   よろしくおねがいします……いつものように、ぜんぜん、急がない
ので……すみません、ぼくは、これで。
岩谷   別にじゃまじゃないよ。人がいても書けるから。
岸田   いえ、ちょっと打ち合わせが。
岩谷   さすが、気鋭の新進作家。
岸田   そんな……先生だって……
岩谷   おれ? そうだな……おれも二〇年くらい気鋭の新進作家って言わ
れてるかな。
三上   先生、先月号では本当に失礼しました。
岩谷   そんなこと、ひきずっちゃいないよ。
三上   気をつけさせますので。
岩谷   中堅作家、とか?
三上   ……
岩谷   どうでもいいよ。
三上   すみません。
岩谷   気にしてないって。文句があるなら、そう言うよ。おれは、いやみ
なんて、きらいだ。
三上   ……本当に、申し訳ありませんでした(がまんしていたくしゃみ)

  岩谷、机をたたく。

1−11

  くろかわ、はいじま、顔をのぞかせる。

岩谷   気にしてないって言ってるだろ。
三上   ……

 岸田、頭をさげて、去ろうとする。
 出口をふさいでいる、くろかわ、はいじまに、ちょっとびっくりする。ふたりのあいだを割って、岸田、去る。

1−12

岩谷   呼んだ?
くろかわ はい。
はいじま すぐ来るって。
岩谷   ありがとう。

  くろかわ、はいじま、顔を見合わせる。

く・は  やった!

  うれしそうに書斎を横切って、去る。

1−13

  三上、ふたりを見送る。

三上   ……いまのが?
岩谷   なんだか知らないが、役に立ちたいそうで(しろいを指す)
三上   ああ……先生のファンが……
岩谷   いいえ。
三上   では……?
岩谷   なんだか分からないけど、帰らないので、ほっときました。
三上   え? 住みこみですか?
岩谷   朝、起きると、いつのまにかいるんですよね。夜中、原稿を書いて
て、気づいたら、いません。
三上   まあ、先生がいいなら、それでいいんですが……(時計を見る)では、
私もこれで……新作、たしかにおあずかりしました。また、来ます。

  去ろうとすると、大家・福永とはちあわせる。

1―14

  尻もちをつく、三上、福永。

岩谷   いらっしゃい。
福永   なんだよ……もう……

  福永、立ちあがろうと、あたふた。

岩谷   チャイムも鳴らさずに、あがってくるから。
福永   「いらっしゃい」? ぼくの家ですけど。
岩谷   おれの家です。
福永   家賃をもらってないうちは、ぼくのものです……(三上へ)どうも。
三上   すみません……(連続くしゃみ)……風邪かな? 花粉症? (連続くしゃみ)

1―15

  三上、去る。

福永   ……(岩谷へ)家賃。
岩谷   払います。
福永   いつ。
岩谷   じきに。
福永   じきに、じゃこまります。いま。何ヶ月、滞納してると思ってるんです
か。悪いけど、今日は、むりやりでも取り立てますよ。

  福永、奥に行こうとする。

岩谷   誰か。お金。

  しろい、起きる。

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