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インポッシブル・フーズが名前を変えるとき(後編)

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インポッシブル・フーズのように、植物性の代替食の進化によって私たち人類の食生活や食意識に変化が生じようとしています。これら食の進化が更に進んだとき、私たちの食卓にはどのような変化が生じるのか、そんなに遠くない未来を想像してみましょう。

未来人のあなたは、どう感じますか?

食肉の多くは人工肉に置き換わる道を辿るでしょう。自然保護、動物愛護の意味でも植物性人工肉は重要な役割を果たせることが期待できます。また、増加するビーガンやベジタリアンたちにも提供できることから、彼ら用の専用メニューや材料調達も不要となります。生産性のコストにもメリットがあることから経済的効果は大きくあるでしょう。また、昨今のウイルスの発生源を減らすことにも個人的には期待しています。

一方、動物性天然肉はどうなるのでしょうか。それでも天然肉を求める需要は著しく下がりはしないものの減ることは確実です。当然生産量は下がるでしょう。人工肉に慣れた人類は、血の味や臭みがこれまでに以上に少なく、肉と脂の味を堪能できるものを求めることから、高級肉需要が高まり、さらに高級化していくでしょう。では、それ以外のこれまで我々の生活を下支えしてきた生産者たちはどうしたらよいでしょうか。余った土地を活用し、これまで餌を提供してくれた大豆生産メーカーに貸すことで彼らの収入を生むことができるかもしれません。受発注が逆転しますが、そうすることで新たな大豆畑を作る必要はありません。人工肉の生産にどれほど大豆が必要で、元家畜の土壌で育つことができるのかという問題が伴いますが。

野菜はテクノロジーによってより生産性が効率するでしょう。屋内生産の冗長化によって自然災害の影響の打撃も受けにくいエコシステムができれば、低価格で質の良い野菜を年中得ることができます。室内生産の効率によって自宅栽培や市民農園のシェア畑がスマート化して需要が拡大するかもしれません。家族の健康に合わせて栄養価をカスタマイズした野菜たち。さらにヘルスケアの分野が合わさることで、ライフスタイルに合わせたチューニングというのは未来的ですが非現実的ではないでしょう。

一方、従来通りの天然野菜たちはどうなるのでしょうか。これについては食肉同様、天然ものを求める需要は続くと思う一方で、自然環境の変化によって土壌や虫などの問題から、人々が天然に魅力を持ち続けるかは不安なところです。水が山の湧水をそのまま飲むより、ペットボトルに入った安全なものを求める人が多いように、こればかりは人類の心理的要素が左右するため、人工野菜がゲームチェンジャーとなってしまう可能性があります。従来の生産者たちは、人工製法に向き合ってこれまで通り良い野菜を作ることを続ければ、需要は続けることはできるかもしれません。

肉、野菜以外にも変化は当然生じます。

乳製品はすでに大豆、ココナッツ、アーモンドなどによる第三のミルクが市場拡大していますが、一方で人工牛乳の開発も進んでいます。3DプリンタでDNA配列を再現し、そこにイースト菌を注入し発酵させることで牛乳を作ることに成功しています。第三のミルクは栄養価が高いことで注目されていますが、やはり牛乳ならではの良さはあるので消費者の選択肢は継続されるかもしれません。

魚介類も当然人工化が進んでいます。食肉同様、大豆やひよこ豆を使ったツナの再現に成功していたり、タピオカや海藻を使って刺身の再現に成功している企業もあります。海の食物については皮肉にも、環境汚染によって生態系が変化していたり、国境水域の争いがあったり、マイクロプラスチックの負の食物連鎖があったりと多くの問題を抱えています。それ故に人工化が進めばそれらの問題は解消するのですが、肉以上に様々な種類の魚と加工法で食べられることから人工化はなかなか難しいところがあります。そのため、養殖技術の進化が鍵かと感じています。海の恵みが豊富な星ゆえの悩みです。

この影響は人類の食だけでなく、ペットや動物園の動物の食にも影響が発展することも考えられます。ペットフードはより天然なものに近づき、動物園はより人工的なものに置き換わるかもしれません。ライオンが虫由来の人工肉を食べる・・・ライオンキングが実話になってしまいますね。このような技術の応用によって、絶滅危惧の動物保護や、生態系の保全に繋がることができれば、人類の技術は地球に恩返しすることができるかもしれませんね。

人類は五感で覚えている幸福感はなかなか置き換えることが難しいため、このような未来が広がるには30年以上は要するかもしれません。しかしこの地球が抱えている問題は、これまで以上に我々の生活に映し出され、何か手を打たねばという心を動かしてきていると思います。少しでも早い歳月で人類が自分たちで自分たちの生態系をコントロールできるシステムが機能し、新世代が旧世代の我々の行いを笑ってくれる日が訪れることを期待しています。

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