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つけ麺の存在意義

水曜日は忙しかったので、昼も晩も近所で外食したのだが、夕食はいつもと違うものを食べたいと思ってラーメン屋で思わずつけ麺を頼んでしまった。おいしいんだけどね、ラーメンが800円ならつけ麺は600円くらいの価値しかないかな、と思ったりして。店側のオペレーションとしては、つけ麺は

◆ 茹でて冷やす手間があるため、提供までのスピードは落ちて回転が下がる
◆ スープを提供する必要がないため、材料の原価的には抑えられる

というくらいのトレードオフかなと。飲食店でも、特に食事を出す店の最大の課題の一つは需要がフラクチュエートすること、つまり12時から1時までの間に昼飯需要が集中してしまうわりに、それ以外の時間に人が来ないという問題をどのようにしてクリアするのかということだと思うので、こういうスピードと原価とにトレードオフの関係が存在するメニュー構成(ポートフォリオと呼んで差し支えない)はそのインパクトを吸収するという意味で良い戦略であると言える。すなわち、

◆ 混んでいるときは回転が速いラーメンが注文されがちだが
◆ 空いているときは利益率が良いつけ麺が注文されやすい

という状況になっていることが望ましい。とりわけ、ラーメン屋はそもそもSKUが絞られているので、何か二つを主食のメニューに据えるのであればこういう関係にあるものが良いのだろう。

問題は今のところ、サービスを受ける側のお客にとってもラーメンとつけ麺とがトレードオフの関係になっているとは言えないことである。確かに、店が混んでいる昼時は、特に日本人であればなるべく早く済ませられるものにしてあげたいと思うのかもしれないのだが、そうする義務はない。そしてつけ麺は「ゆっくり時間があれば、手の込んだおいしいものを注文して、食べてみたい」という類の一品としての地位についているとまでは言えないと思う。ラーメン屋に行く人は、ラーメンを食べたい人がいまだに多いのではないだろうか。僕はいまだにスープがたくさん入ったラーメンの方が好きだし、空いていても混んでいても結局それを注文することになるからね。

そうであれば、ラーメン屋が商業的に成功するための秘訣が見えてくる。すなわち、つけ麺をいかにおいしくできるか、ということなのである。ラーメンがおいしいのは当たり前で、つけ麺がラーメンに匹敵するぐらいおいしい店は、きっと大成功するに違いない。つけ麺にはそういう存在意義があると言えそうである。

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