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プロパラを振り返る(81)

(191) 上田吉一 (Problem Paradise 38, 2006)

191 上田吉一

           SH#5 b)Kf6→c6 (4+4)
           Neutral Locust a5
           Neutral Pawns g2,h2

Series help:黒だけが連続してn手指し、その後1手で白が黒をメイトできるような手順を求める。最終手を除いて、黒は白にチェックをかけてはならない。

neutral piece:黒からも白からも動かすことができる駒。
Locust:Qの筋で相手の駒を一つ飛び越したその直後の地点に着地する駒。飛び越された駒は取られて消える。取り無しでは動くことができない。

a)1.g1=nS 2.h1=nQ 3.nQh7 4.nSf3 5.nSe5 nLoxe5-f5#
b)1.g1=nB 2.h1=nR 3.nRh5 4.nBc5 5.Kb5 nRxc5#

 neutral Pによる四種成。極限まで刈り込んだ構成は、neutral Pieceを知り尽くした上田さんならでは。

(192) 上田吉一 (Problem Paradise 38, 2006)

192 上田吉一

           #517 (2+1+3n)
           Transmuted Kings, PWC
           neutral Rook a8
           neutral Kangaroo b5
           neutral (3,5)-leaper f5
           (2,5)-leaper b3

Transmuted Kings:チェックをかけられると、そのKはチェックをかけた駒の動きになる。
Platzwechselcirce(PWC):駒を取るとき、取られた駒は取る駒が直前にいた位置に再生する。8段目に発生したPは任意の駒に成れ、その選択は取りを行った側が決められる。1段目に発生したPは動けない。

Kangaroo:Qと同じ方向に、駒を二つ(離れていてもよい)飛び越えてその次の桝に着地する。そこに敵の駒があれば取れる。
Leaper:Sのような動きの駒の総称。(x,y)-Leaperは駒のいる位置から縦横に(x,y)又は(y,x)だけ離れた地点に着地する。

 Transmuted Kings+PWCというのは、もはや上田さんのフェアリー趣向作では定番の設定。また、leaperとKとの追いかけっこが縦横にジグザグの軌跡を描くというのも、既に(173)などで目にしたものだ。まずは手を進めてみよう。

(以下では(2,5)-leaperをLと略記することにする)

1.Lg5+ Kd2 2.Lb7+ Kf7 3.Ld2+ Kh2 4.Lf7+ Kc4 5.Lh2+ Kh6 6.Lc4+ Kf1 7.Lh6+ Kd6 8.Lf1+ Kb1 9.Ld6+ Kg3 10.Lb1+ Kxb5(nKAg3) 11.Lxg3+(nKAb1) Kg7 12.Lb5+ Ke2 13.Lg7+ Kc7 14.Le2+ Kh5 15.Lc7+ Kc3 16.Lh5+ Kh1 17.Lc3+ Kf6 18.Lh1+ Kd1 19.Lf6+ Kb6 20.Ld1+ Kg4 21.Lb6+ Kb2 22.Lg4+ Kd7 23.Lb2+ Kf2 24.Ld7+ Kh7 25.Lf2+ Kc5 26.Lh7+ Kh3 27.Lc5+ Kc1 28.Lh3+ Ke6 29.Lc1+ Kg1 30.Le6+ Kb3 31.Lg1+ Kg5 32.Lb3+ Kb7

           (32.0手目の局面)

192-1 上田吉一

 この32.0手(将棋流に数えると64手)という長いサイクルを繰り返す度に、nKAは居場所を強制的に移動させられる訳だ。この後nKAはb1-f1-c4-f7-b7-b3-e6-h3-h7-d7-g4-d1-h1-h5-e2と引越しすることになるが、その途中は省略して最終局面に移ろう。

481.Lg5+ Kd2 482.Lb7+ Kf7 483.Ld2+ Kh2 484.Lf7+ Kc4 485.Lh2+ Kh6 486.Lc4+ Kf1 487.Lh6+ Kd6 488.Lf1+ Kb1 489.Ld6+ Kg3 490.Lb1+ Kb5 491.Lg3+ Kg7 492.Lb5+ Kxe2(nKAg7) 493.Lxg7+(nKAb5) Kc7 494.Le2+ Kh5 495.Lc7+ Kc3 496.Lh5+ Kh1 497.Lc3+ Kf6 498.Lh1+ Kd1 499.Lf6+ Kb6 500.Ld1+ Kg4 501.Lb6+ Kb2 502.Lg4+ Kd7 503.Lb2+ Kf2 504.Ld7+ Kh7 505.Lf2+ Kc5 506.Lh7+ Kh3 507.Lc5+ Kc1 508.Lh3+ Ke6 509.Lc1+ Kg1
510.Le6+ Kb3 511.Lg1+ Kg5 512.Kd5+!

           (511.5手目の局面)

192-2 上田吉一


 16回趣向を繰り返すと、何とnKAは初形位置に戻ってしまう。では、この駒のポジションチェンジがその目的ではなかったのか?
 実はnKAと黒Kとがどちらも5段目に居る状態が作りたかったのだ。この瞬間にKd5+というkey moveが入ると、黒側にはneutral (3,5)-leaperをa2に跳ばす以外に受けがない。しかし、これで首尾よく白はc4の地点を抑えることができた。後は今迄通り追い続けるだけだ。

512... n(35)a2 513.Lb3+ Kb7 514.Lg5+ Kd2 515.Lb7+ Kf7 516.Ld2+ Kh2 517.Lf7#

           (詰上がり図)

192-3 上田吉一(詰め上がり図)


(平成26年5月2日記)

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