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ガレキのタマシイ

(プラモとガレキ:後編)

そもそもガレキとはなにか?


ガレージキット!略してガレキ
です。

プラモデルがプラモデルメーカーの工場で作られるのに対して、
ガレージキットは個人で扱えるレベルの技術や設備を用いて生産される
組立キットです。

ガレージキットという言葉の語源は諸説あるようですが、私は最初に聞いた『欧米において好事家が裏庭や車庫(ガレージ)で、自分たちの持てる技術を投入して作り出した組立キット
というのがいいなぁと思います。

お金を出しても買うことが出来ないなら自分で作ってやる
自分が好きなものが形になるのを自分一人で楽しむだけでなく、ほかの人にも分かちたい。

こういうモノづくりスピリットが、そこはかとなく欧米の香りとともに漂ってくるような名前ではありませんか?

趣味三昧!バチが当たるぞ!

メーカーがプラモデルとして発売していないようなものをプラ板やパテで一からつくることをフルスクラッチビルドといいますが、これは一点ものです。

これをオタク、いやいやマニア、う~ん、もっと良い言い方ないかな、そう!エンスージアストの方々が、なんとか組立キットとして量産し、ほかの人にもシェアしたいという思いから始まったということです。

ガレージキットといっても種類はいろいろあって、今普通に手に入るガレージキットは、
シリコンで型取りしてレジンで複製するレジンキャストキット
ですが、それ以外にも
レジンの代わりにホワイトメタルを使うものや
プラ板を熱して型に押し当てて成型するバキュームフォーム
などがあります。

レジンキャスト、ホワイトメタル、バキュームフォームの他、エッチングや旋盤加工部品が付く
モデルファクトリーヒロのマルチマテリアルキット

ただ普及度からいうとレジンキャストが主流で
レジンキャストキット=ガレージキット
みたいになっています。

私も実はレジンキャストキットしか作ったことがないので、
これからはレジンキャストキットガレージキット
いやさガレキと表現したいと思います。

寄生獣のように名前にはこだわらないのが吉です。

みなさん名前にはなかなかこだわりがあるようで…


なんせ律儀にレジンキャストキットと言ってみたところで、
名前に使われている単語からは何も識別できないのですから

レジン(resin)は“樹脂”の意味。
あぁ樹脂ね』といったん納得しかけますが、
樹木の脂”って?と疑問が再び頭に浮かびます。

そこでこんどは“樹脂”を調べてみましょう。
 
文字通り”植物体から分泌される精油類縁物質の総称”
もっとわかりやすく言うと、
天然に植物に生じた、やに状物質(=天然樹脂

ですが、さらに合成樹脂として
有機化学的に合成される天然樹脂とよく似た性質を持つ物質
とも書かれており、”どっちも土器♪”ならぬどっちも樹脂なのです。

土器にレキシあり、樹脂にギモンシあり。

それにしても”やに状物質”ならまだしも、”それによく似たもの”とは
なんとも、投げやりな言葉です。

よくわからないものを、よくわからないものに例えてたんじゃ、いつまでたってもわからない。

レジンの正体を突き止めるのは、いったんあきらめて、別角度から探求!

プラモデルの材料
プラスチックかな?

スチロール樹脂でした。
って!待ってください。
樹脂”って付いてますね、これはもう事件ですよ
じゃない、レジンですよ

結局、レジンの意味がどうであろうと、レジンキャストキットとプラモデルどっちも”樹脂”という同じ仲間ということですよ。

ではプラスチックって何?ですが、これは”plastic”は可塑性の、という意味で、曲げてもばねみたいにビヨヨーンと戻ってこず、へにゃっとなるものですね。
これの名詞“plastics”は、
可塑性があり、加熱すると軟化し、任意の形に成型できる有機高分子物質の総称、とあり、
言葉の響きは高尚ですが、へにゃっとして熱いとぐにゃとなって、形を変えられるって、結局、”やに状物質”と同じようなイメージですね。

一周回って帰ってきてしまい、
プラモとガレキの自分探しの旅は徒労に終わってしまいました。

反社会的存在を”街のダニ”と呼ぶか、”社会の鼻つまみ者”と呼ぶかくらいの違いしかないということです。
あぁ!良い例えが思い浮かばなかったとはいえ、
なんてことを言ってしまったのだろう。
プラモ君、ガレキさんゴメン!

でもレジンという言葉では何もわからないのも事実!
そのうち『レジンで済めば警察はいらない』という言葉もできることでしょう。

プラモとガレキの違い


≪生産数量≫
まず第一に製品として作る数量の規模が違うというのが原点です。
プラモは数10万個単位。ガレキは多くて数百個単位
畢竟プラモデルではみんなに人気のメジャーなものを選び、

プラモ三兄弟

ガレキは知る人ぞ知るというマイナーなものになるわけです。

ガレキ三兄弟


生産数量に関わる技術的な側面では、プラモはプラスチックを流し込む型に耐久性のある金属を使います。すなわち金型ということですね。

メーカーでの金型の作り方も時代を経て変わってきているようで、
昔は完成予定品を最初は木型でつくり、
職人がそれを見て金型を直接削るという名人芸だったそうですが、

CAD-CAMの普及で、デジタル上で設計し、
その設計データで金型が自動加工できるようになったり、

あるいは3Dスキャン技術で対象物をデーター化してそのデータを使って金型加工することもできます。

一方でガレキは元々はエンスージアストとはいえ、アマチュアが作るもの
ですので、レジン  ーーー ちょっと待ってください!
さっきレジンを街のダニだなんて言ってしまったものだから、
ちゃんと訂正しておかなければ、 

ピュ~~~


レジン取ってきました。

愛用のボークス造形村 EX-CAST



なになにウレタン樹脂とな!
成分は キシレンジフェニルメタンジイソシアネート変性体
(うーん、体に悪そうな名前ですね。特に変性体っていうところがヤバげ
やっぱりレジンでいいや

えーっとそのレジンを流し込む型をつくるやり方が、
特殊な設備を必要としない、というのがミソなのです。

このやり方というのは、
レジンでバンバン複製したい元のもの(原型)シリコンで型取りする
というものです。

具体的には液状のシリコン硬化剤を入れてよくかき混ぜ
原型の周りに流し込んでから固まるのを待つ
という原理的にはシンプルな方法ですので、それなりの技術は要りますが、一般的な道工具があればアマチュアでも十分に可能なレベルです。

シリコン型取りに必要な道具と材料(あとは気合!)

ただしシリコン型は耐久性がそれほど高くはなく、
レジン注入の回数が限られます。

一つのシリコン型で複製できるのが30~50個くらいらしいですので、
100個とか作ろうとすると、また原型からシリコン型を取り直しとなる。

シリコン型取りの労力を思い出すと個人的には絶対やりたくありませんね。
(一度シリコン型取りの最終段階で失敗して、泣く泣く最初からやり直したことはありますが)

なんせシリコン型取りに挑もうとする時といえば
冬に水垢離寒修行をした後に白装束に着替え、
いっとき座禅をして心を無にしてから、
カッと目を見開くゼロのような気分です。

髭が生えるほど長時間は瞑想しません。

こういう理由で、やり方はシンプルではありますが、大量生産は出来ない
ガレージキットというものがプラモの対極として存在するわけです。
(簡単でたくさん作れればメーカーも最初からやってますものね)

≪モノづくりの方向性≫
生産数ではなく、モノを生み出すという意味でも両者は対極にあります。

プラモは先ほど言いましたように完成見本を作るにしても
参考品としての木型か、今ならデジタルデータ

完成品なしで、まず型から作るというのがプラモデルであり
すなわち工業の産物なのですね。

そういえばガンプラ黎明期では、世の中の新製品への熱い視線に対して
少しでも早く新製品情報を伝えようと、木型模型の写真を載せて、
これは木型ですので完成品とは異なります。”
などという説明が書かれていたという記憶があります。
少年チャンピオンの裏表紙にまで、そんなガンプラの広告が載っていました。)

少年誌といえば、昔の少年誌では謎の通販広告があったのを覚えていませんか?

セッチマ歯磨きとか、パワーアンクルとか今でも売っているものが、
より怪しく売られていたり、鏡で後ろが見えるスパイ眼鏡とかあったような。

現金ではなく郵便切手で買えるというシステムが謎ですね。

また現代でも皆様のご期待の高いプラモ発売前段階からデジタルデータだけで広告されることがあります。


逆にガレキ完璧な完成品である原型ありき、
これがあって初めてそれを複製することができるということで
アプローチが全く逆
原型を作る人のことを原型師と言って、原型師の個性がそのまま製品になるので、ガレキは原型師が誰なのかが重要です

原型師の仕事というのは、工場にあるような機械は使わずほとんど手作業です。線一本でも、機械で彫るのではなく、手彫りです。

ロボットなど本来は左右対称の血の通わない機械キカイダー除く)なのですが、
よく見ると左右でちょっと形が違うということもあったりします。
それが血が通っているというか、原型師の魂が感じられるのです。

左右対称に憧れる25歳

≪造形の違い≫

型が金属でできているか、シリコンで出来ているかの違いは
生産できる数のみに現れるわけではありません

仮に原型師がつくった原型を3Dスキャンで読み取って、
そのデータの通り金属を加工できたとしても、
それだけではプラモデルの金型にはなりません。

金型は注型したプラスチックを抜き取ることが出来てこそ
初めて金型足り得えます

テーパー形状なら楽チン♪

どういうことかというと、逆テーパー形状では(特殊なスライド金型を使わない限り)固まったプラスチックを抜き取ることができないというわけです。

したがって逆テーパーがなくなるまでパーツを分割するか、
あるいは少しくらいなら、と逆テーパーがなくなるよう形状修正するのです。

世の中そんなに甘くはない!



さらにプラモデルでは流し込むスチロール樹脂の特性上、厚みが限られますので、大きな塊はカニの甲羅のように、外側の殻の部分を成型して、それをもなかのように合わせる構造にする必要があります。

ぷらもでる、ぷらもなか、かにもなか

また厚い板状のものであれば、表から見ると厚いけど、裏から見たら肉抜きされているという形状にします。

このように、少しずつ原型と違ったところが出来てしまうのですが、
何故かこのわずかな差で原型師が作品に込めた魂が感じられるかどうかに違いがでるのです。(主観)


これに対してシリコンは弾力性があり少々の逆テーパーでも抜き取ることができますので、文字通り、型として柔軟性があるわけです。

みんな大好きシリコン!ビヨヨーンと曲がります。

シリコンであればどんな形でも大丈夫というわけではありませんが、
原型をある程度に分割すれば、複製用の型を取ることができます。

シリコンの弾力の分、注型時のバインドで少し肉やセする部分もありますがおおよそ原型をそのまんま再現することができます。

では造形としてプラモデルがガレキに劣っているかというとそうではなく、自動車、バイク、飛行機、戦車など工業製品に対しては同じく工業製品であるプラモデルが最適であり、
フィギュアをはじめとした、怪獣、恐竜など彫像的なものガレキのほうが向いているということです。

ガンプラなどのロボット可動も考えるとプラモデルのほうが、より適していますが、ファイブスターストーリーズのモーターヘッドについては
プラモ、ガレキ両方とも売られています。

可動させる場合にはプラモデルのほうが良いですが、
私はモーターヘッドのより彫像的なアートの面を重視してガレキのほうを選んでおります。


プラモデルをつくるということ


ドラえもんでスネ夫が戦艦大和のプラモをつくり、
プラモデル作っているときは楽しいが、完成すると物足りない。』
と言っていたような気がします。

私は作るプロセス中多大なる苦労ちょっとの楽しさ
すべて完成品の出来栄え満足度につながってほしいと思います。

すなわちプラモデルは作るプロセスを楽しむもの
というのはなんだか価値観が違います

人はいずれ死ぬのになんのために生まれてくるのか?”と哲学的なことを言ってみたい年頃の人は意外とたくさんいますが、
むしろ私は子供の頃、
”プラモデルはいずれ組み立てられるのに、なんのためにバラバラで生産されるのか?”と疑問に思っていました。

まぁそれは言い過ぎで、
わざわざバラバラにしなくても良いものを、分割して造り、
さぁ組み立てるのは楽しいよ、やってごらん。
と言われるのは嫌だな、と思っていたということです。
なんとひねくれた子供だったのだろう)

こういうのは遊びとしては否定するつもりはありません
ジグソーパズルなんてその最たるもので、
一枚の絵や写真をわざわざバラバラに切り刻んで売っています。

確かにピタッと形と模様が合わさったときの快感
時間をかけて完成した時の達成感は楽しいですし、
あのピタッと合わさる加工精度
それ以外のどのピースを持ってきても合わせることができないという
1ピース、1ピースのユニーク性は設計技術としても素晴らしいと思います。

No.1にならなくたってOnly One!(ほんとなくなると大変)


しかし出来上がったものは、完成まで大変苦労したという感慨の点以外では、もともとの写真や絵のような感動を与えるものではないかなぁ、
という事なのですが、
まぁ元々そんなつもりでつくるものではないので言ってもしょうがない。

それに対して前述の金型の話のとおり、プラモデルの分割は、形状を再現するために、そうせざるを得ない必然性のある分割であるという知識を得て、大いにプラモに対して肯定的気持ちになったのですが、最近のガンプラなどではまた話は別です。

部品の分割が形状以外の要素である、”色”によって行われるようになっています。

要は塗装で色を塗り分けて仕上げるところを、最初から色毎に部品を分割して、色違いのプラスチックで成型する。

組み立てただけで塗装をしたように色が再現できますし、塗装をするにしてもやりやすいということです。

こうなるとプラモデルがジグソーパズル化しているような気がしてきますがモデラーにとって、いいことなのか悪いことなのかは、
最近のガンプラを作ったことがないので何とも言えません。
(食わず嫌いはやめておこう。)

一方でガレキはまだまだそこまでは行っておらず、精密化が進み部品数が増えても色によって部品を分けるという発想はなく、
あくまで形状の複雑さを追求するための分割です。

しがたってプラモデルに比べてパーツ分割が少ないガレキでは、
余計に色の塗り分け技術(というか忍耐力)が必要になります。


今後のnoteで書きたいこと


最近作ったモーターヘッドのガレキについて
3つの記事を同時並行ですすめていきたいと思います。

その1『シュペルター製作15年記
その2『レッドミラージュV3 スポットライト
その3『ルミナスミラージュ製作実況中継
 
シュペルター製作15年記』は、何かの15周年記念製作という事ではなく、本当に製作開始から完成まで15年間を費やしてしまったというものです。
 これを完全に時系列で書き綴るなど無謀なことはせず、
ステップ毎に少し整理した形でまとめるとともに、
それぞれのステップと同時期に書いていたエッセイ的なものコラムとしてリメイクしたいと思います。

古いMMを買うと意外な落とし穴が!

レッドミラージュV3 スポットライト』は最新の完成品であるレッドミラージュV3(キットは20年前の限定販売品)が、またボークスにて再販されることになったので、再販記念として
私のレッドミラージュはここがポイント!を紹介。
製作記事よりはうちのレッドミラージュ自慢という方向性です。
ただしやはり製作面も少しは書くことになるかと思います

透明レジンは苦労が絶えない!

ルミナスミラージュ製作実況中継』は作りながら、進んだところを実況中継的にお伝えするスタイル。
今まさに作っているものがどう仕上がっていくか、
いまだはっきりとは見えていませんが、少しずつご報告したいと思います。多分1年以上はかかると思います

ピンクのロボット!

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