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クラス全員で節分鬼祭り (7)

「こっちの方が動きやすくない?どう?」

「もう少し金棒柔らかくないと、もし当たった時に痛いと思うよ。」

「まじか、じゃあどうしたらいい?」

「私、家にある綿持ってきたよ。間に挟んでもう一回巻いたら。」

「その綿、カツラ用にもってきたんじゃない?」

「たくさん持ってきたから大丈夫。」

図工室でも教室でも、休み時間中鬼祭りの準備で、

どこかしこで盛り上がっている。

セコンド係になった子達は、

全員ですることになる前から、鬼役の6人に、

あれこれデコレーションをして、

鬼の衣装をバージョンアップしてくれていたので、

公式のセコンドになってから、俄然やる気になっている。

鬼役の6人は、補欠になった2人が、

どのタイミングでだれと交代するかについて、8人で話し合い、

先立って練習していた暴れ方の演技を、補欠の2人に教えていた。

6の1の子たちは、本当に仲が良い。仲が良いからケンカも多いけど、

目標を定めた時の行動力と発想力、それをみんなで協力する団結力は、

とてつもなく大きな力を生み出す原動力になっている。

一人一人が、自分たちの役割にさらにアイデアを出して、面白くしていく。

瞬間の役割になったお知らせ係や、鬼が来たぞー!役の子達も、

何度お互いにアドバイスし合って練習している。

一年生のお世話係になった子は、二年生のお世話にもなることになって、

一・二年生の教室に下見に行って、掃除道具が教室の分で足りるかどうか、

自分たちで用意しておくものは何が必要かを、確認しているようだった。

さて、どんなものがやってくるのか、一・二年生の担任の先生たちも、

6の1の子たちのワクワク感が伝わった様で、楽しみに待ってくれている。

本番まではあと少しだ。たんにんとしての僕のここからの仕事は、

抜かりなく子どもたちの様子を観て、会話に耳をそば立てて、

上手に友達同士が巻き込めるようにちょっと後押しをしたり、

話し合いでもめすぎないように、アドバイスをしたり、

怪我がないよう、気持ちが本番前に盛り上がりすぎないように諫めたり、

そういった、全体の調整役になる事だった。

もうすぐ当日。嫌が応なしにも、子どもたちの気持ちは盛り上がってきた。

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6年生の3学期はむずかしいとよくいわれる。

6年間で一番最後のラストスパートなのだけど、

卒業式以外目立った行事がなく、子ども達に明確に、

毎日の目標の様なものが示せないと、

子どもたちは、小学校生活が終わる解放感に引っ張られて、

だいぶ落ち着かなくなることも多い。

最上級生としてとか、卒業するのだから最後はしっかりととか、

そういった締め付ける目標ではなくて、

雰囲気ではなく、明確に自覚して迎える最初の「卒業」と言う節目を、

どこまで自分たちの思い出として印象深くできるか。

そういったことが大事なのではないかと思っている。

そのために何をしてあげられるか、ギフトではなくアイデアで。

与えるではなく、子どもたちが自分たちでやり遂げたと思えるものを、

どう上手く興味を持たせて、提案できるか。

その物語を、子ども達と言う演者の顔を浮かべながら作る機会に恵まれる。

おそらくこの仕事で、一番楽しいことはこういうことなのだと

この子達との日々は、何度も何度も感じさせてくれた。

そして今回この子たちに提案した鬼祭りは、

見事に、卒業まであと40日を切った6の1の子達への

モチベーションが爆上がりになるイベントになっていくのであった。



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