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一番心をつかまれているそのプレイヤーは

4月30日の記念日【国際ジャズデー】
2011年のユネスコ総会で制定された国際デーの一つです。ジャズを通じて世界の様々な文化についての理解を深めること、未だ十分に教育を受けられる環境にない地域に住む少年少女たちにジャズを伝えていくことなどを目的としているとのこと。また、ジャズを平和・団結・対話を大切にした人と人との協力強化のために力を発揮するものとして、その意識を高めていこうという目的もあると言う事です。

ユネスコの、目的いっぱいで実際には何を目的にしているかわからない国際デーは、相変わらずちょっと「?」なので、そういう点ではうまく記念日として伝えにくいなぁと感じていますが、ジャズというワードだけは今個人的に熱いワードだったので、今日の記念日で取り上げることにしました。

というのも、自分がずっとファンの、あるジャズプレイヤーがいるからです。彼は現実世界にはいません。石塚真一先生によって生み出されたそのジャズプレイヤーの名前は「宮本大」。作品「BLUE GIANT」で、その生き方を追う事が出来ます。高校時代から独学で毎日サックスを吹き続ける姿は常に全力で、真っ直ぐに世界一のジャズプレイヤーを目指す彼の旅は、今クライマックスを迎えているのです。

無名のアマチュアプレイヤーだった高校時代から、日本国内で活躍するところまでを描いた第一部、単身ヨーロッパに渡ってからの活躍を描いた第二部の「explorer」、そしてヨーロッパで出会った仲間達と別れ、再び単身挑むジャズ発祥の国アメリカでの旅を描いた第三部「supreme」と、物語は紡がれていますが、掲載本誌である「ビッグコミック」では、その「supreme」が、もうすぐ最終回。

石塚真一というマンガの天才が、世に送り出した二人目の天才である宮本大は、最初の天才『岳』の島崎三歩とはちがい、初めその才能は全くの種です。しかし最初の師匠から「小さいが、お前には咲いているんだ花が。」と言われたように、その音は人の心を震わせるもので、彼は毎日全力で吹き、そして世界一のプレイヤーを目指し歩みを止めません。

多くの人と出会い、最高の仲間と出会い、そして幾度とくる困難も、東北人の力強い魂で乗り越えて、成長していく大のアメリカでの旅が、どう終着するのか、そしてその後はどうなるのか、あと1話で「supreme」が終わりでも、続きを描いてほしい。そう渇望してやまないのですが、そんな大が鳴らし続けてくれるジャズの響きは、この15年余り、いつも心の中に聞こえ続けています。

実は今年の2月ごろにこのBLUEGIANTはアニメ映画となり、そこには演奏の音もオーディションまでされてあてられたのですが、僕自身はその映画は観ていません。自分勝手な拗らせ具合ですのでご勘弁頂きたいのですが「大の音は、大しか奏でることはできない」と思っているからです。石塚さんも立会いのもとでのオーディションで選抜された名うてのプレイヤーの音は、それは感動するものだとは思うのですが、こちらの世界の別の人が奏でた音は大の音ではない。

石塚先生のマンガからは、大の音が聞こえてくるんです。心の中に。その音が僕がBLUEGIANTから受け取った大の音だから。だから映画に足を運ぶことができませんでした。

ジャズ、この熱くて優しい音楽を、ゴールデンウィークに楽しむのは贅沢な時間になるかもしれませんね。

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