2話：ギリギリの企み
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日本と中東でスタートアップしています。
会社の創業ストーリーを連載しています。
1話：創業前夜
1-1話：すべてを変えることになる「筋肉」と「ブログ」
1-2話：重なるタイミング
1-3話：再会
1-4話：手探りのスタート
2話：ギリギリの企み
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話は1話の文末に戻る。
ブログをキッカケに出会いと偶然が重なって奮起し、キッカケを掴み始めていた頃。そして、本業の結果が出始めて少しずつ復活したものの、クライアントとメディアの間に介在する代理店との情報量のギャップに超えられない何かを感じていたころ。
この時、ようやく最初の仕事の報酬を受け取った。
仕事を回した後輩の取り分を引いて、手元に残ったのは約10万円。
額としては大したことないが、はじめて会社の肩書も関係なく（実際は多分にあったんだろうけど）ゼロから自分で営業して自分で行動して作ったお金だったと思う。
この10万円が2年後に10億以上の売上を生み出す元手になったわけで、そう考えると何がどこでどうなるかわからないものだし、小さなことでも挑戦すべきだなと思う。
このときは当然そこまでのことは考えてなかったわけだけど、今振り返ってみるとすべてが繋がってる。「conecting dots」とはこういうことを言うのかなと思う。
止められなかった好奇心
僕はずっと営業畑で生きてきたのだけど、今まで営業として大事だと言われていたけどできなかったことが一つある。
ある意味最も大事であり、業種によっては簡単であるがBtoBの営業職としてはなかなかできないこと。
それは「自ら自社の顧客になる」こと。
消費財メーカーや食品会社、飲食店やゲーム会社であれば比較的簡単に自分自身が顧客になることはできると思う。
しかし、僕が売っていたものは、自社のアプリの広告で、顧客は法人である必要がある。
営業トークや資料を磨いて売ること自体は得意なのだが、
「お客さんはどういう気持で自社の広告を買っているのか？」
「自分たちが提案している内容に根拠はあるのか？」
「本当に楽しいのか？」
「他社の広告と比べてどうなのか？」
どうしても気になってしまった。
気になってしまったし、同時に今自分にすごく足りていないもののような気がしてならなかった。
自社の運用型広告を売る中で自分なりに行き着いた運用方法やクリエィティブの考え方など、運用に関するあらゆることを体系化し、他社の広告プロダクトでも同じように結果を出すことができるのだろうか？
まずは自分がリスクをとって客になり、他社の広告や他の人でも再現できれば、それは実績と言えるんじゃないだろうか。
そんな気がしていた。
実はこう思うようになった理由は入社直後に当時の執行役員に言われたことがきっかけとして残っている。
業界では、広告費として利用した金額を「消化額」と呼ぶ習慣があるのだけど、ミーティングの中でこの消化額という呼び方について
「お客様はただお金を出しているだけではなく、ビジネスのために広告を使う。ただ払わせるだけのような消化という言葉は使わずせめて「利用額」と言おう。利用してもらったからには対価を返さなければいけない」
と言われたことがあった。ごもっともだ。
と思うと同時に、自分の身銭を切らないとその意識は絶対持てないだろうな。とも思っていた。
だからこそ、よりそれを実感するためという意味も含め、自分が客として自社の広告を使いたいと強く思うようになった。
ちなみに、周りの誰も気づいていないかもしれないが、この時以来そうでなきゃ話が進まないときを除いて「消化額」という言葉は使っていない。
必ず利用額と言うようにしている。
小さいことだけど、お客様と対等でいたい、きちんと成果を返したいという意識を忘れないにはこれが良い。
そう思ってからは早く、僕は自分が自分の会社の顧客になるために動き始める。ここにすべてのお金を突っ込むと決めた。
※当時（2016年の初め頃）お客さんにどういうビジネスをしてるのか聞いたときのメモ。今から思うと「こんなことかよ」だけど、当時は「こういう世界もあるのか」とすべてが新鮮だったのをよく覚えているし、「これなら絶対俺もできる！」と思えたこともよかった。とにかくなんでも聞いてみると良いとこの時知った。
気づいたこと
広告代理店との情報のギャップを超えるにはどうすればよいのか。
おそらく、ここを超えて他の社員が持っていない経験や情報を得ない限り、これ以上先には行けない。組織の中は情報共有が徹底されていたものの、外の情報や外で感じる情報は自ら取りに行くしか無いのである。
それに、自分にたくさんの発注をくれた代理店からの仕事もいつまであるかはわからない。
さらなる成果を上げて、自分自身の価値を高めること
と
この先今の会社に頼らず生きていくこと
社会人適正に限界を感じ、いずれは今の会社を退職することを意識していた僕にとって、この２つは絶対に確立しなければ先がないことはわかっていた。
そのためには、自分で仮設を立て実行、検証し誰よりも成果を出す必要があった。
この考えに至ったのは「自分は◯◯をした」と言えるものがなく、それをやらないまま独立してもうまくいかないのは目に見えていたからで、原体験が2つある。
１つは、今の会社は営業でいくら成果をだしても自分の力とは言えない環境だったこと。マーケティングや開発が優れており、プロダクトの知名度も高く業界内の立ち位置も明確で、ぶっちゃけ営業職の難易度は高くないと感じていた。だから、0から100まで自分で考え実行し、成功する必要があった。
以前結婚式場の口コミサイト営業をしていたときは知名度がまったくない上に営業は全国が対象だったためとても苦労した。『ベンチャーにTVCMはいらない』と言われていた時代で、営業もそうだがアポを取るだけで相当な苦労があった。
もちろん、今の会社でも受注後の継続は難易度がぐっと上がるが、営業以外の職種が営業のしやすさに寄与していたことは間違いない。
※この経験もあり、マーケティングの力を知ったことで後々もっとこの業界が好きになっていくことになる。
※前職の「売れにくいものを売る」という経験自体はとてつもなくためになった。行動量だけでは解決できない壁があったことで、お客さんのビジネスを考える癖がついた。
２つめは、『ハッキリと誰がやったかわからない』成果は認められないということ。
実はこの数ヶ月前に個人的にはすごく成果を出せたことがあったのだが、僕は当然もらえると思っていた社内賞をもらえず、同じチームの別の人がもらった。
今でもハッキリ覚えているが、総会中、直接関わってくれていて古参の方に「◯◯さんのおかげでチームの数字伸びたね」と言ってもらえている中まったく別の人が受賞し、二人で微妙な空気になったことがある。
その時めちゃめちゃ悔しかったこともハッキリ覚えてるけど、『この程度の実績ぐらいじゃ誰も見てくれない』と明確に意識しだしたきっかけになった。
誰の目にも共通の価値観で結果を出さない限り市場では認められない。
※単純な数字だけで賞は獲れないことにこのときもまだ気づいていない。賞を獲るには数字以外の面でも「全員の規範」になれる必要がある。
今の自分の立ち位置と仕事内容では、結果を出したとしても猛烈にやれば誰でもできることだったのだと思う。
・全体で効率を上げると成果を出しやすいこと
・その効率の中で「こなしてる」だけでは自分の実績と言えないこと
それを学ぶことができた。
だから結局、今個人としてもらってる仕事も今は自分の力ではないんだなと思うようになった。
これ以降、目標から戦略、実行まで全部やった上で圧倒的に結果を出し続けて初めて、自分の名前で勝負できるのではないかと考えるようになっていくようになる。
※実はこのとき、人生初の謎の偏頭痛に1ヶ月ほど悩まされていた。目も開けられない、立ってるのも辛い偏頭痛が1日に10回ぐらい突然やってくる。あまりにもきつくてMRIまでしたけど何もなかった。あれは一体なんだったんだろうか...
100回は言われた「やめた方がいい」
決めたら後は動くのみ。
プランとしては至ってシンプル。
代理店に表にたってもらい、自分で営業してとってきた案件を、その代理店経由で出稿させてもらうこと。
一時的な広告費の支払いはその代理店にお願いし、僕は利用した広告費に5%の手数料を乗せて支払う。
当時は（専門的な話になりますが）、ダブルアカウントが禁止で、同じ商材を複数の代理店から出稿できなかったので案件探しにはそこそこ苦労した。
案件が決まってからは、この話に乗ってくれる代理店を探し始めた。本職で付き合いのある会社で信頼できる人に僕のやりたいことを話してみた。
「やめた方がいい」
「ずいぶん危ない橋わたりますね」
ほとんどの人に言われた。
うまく行かない可能性のほうが高いし、うまく行ったら行ったで会社員がそこまでやっていいの？ということだった。
しかし、僕はそういった意見はほとんど気にも留めなかった。
たくさん反対されたほうがやる価値があると最初から思ってたから。だから、言われてる最中は若干ムっとすることはあっても反対されてもやめる気はなかった。
全張りで身銭を切る
最終的には、この座組で個人宛に仕事をくれた代理店の役員の方に図々しくも再度助けていただくことになる。ここで感じたことは、小さいながらも仕事を受けておいてよかったということ。
発注をもらって納品するという一連の流れを一度全てしているので、お互い相手の仕事のイメージが付く。
「杉浦さんの言う事なら信用しますよ」
と言ってくれたのは本当に嬉しかった。
※たまたま残ってたその方との当時のLINE。この方の応援がなかったら確実に今はないと言える。
これは誰にも言ってない話なのだけど、実は当時めちゃめちゃに金欠だった。大して稼ぎも良くないくせに後輩には基本的におごっていたし、金あるふりして過ごしていた。
25歳ぐらいからそんな生活してたせいで、子供の頃からお年玉でためた定期預金も解約に解約を重ね残り10万円。現預金ほぼゼロになっていた（母ちゃんごめん）
しかし、なにを思ったか僕はこれは勝負だと言わんばかりにその定期預金10万円を引き出し、残った10万円と足して最初の広告費の前金にしたのである。
つまり、このとき貯金はマイナス。
銀行のどういう仕組かは忘れたけど、通帳に−100,000円て記載されていたのをよく覚えている。
この10万円を払込するときは、手が震えた。
広告がうまく行かず、失敗したらすべて戻ってこない。
支払ってからは、1分1秒が吐きそうだった。口から手を入れられて胃袋掴まれて引っ張り出されるような感覚。
そうして新たなチャレンジは始まっていった。
ー3話に続く
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