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haha

 妹は地方に進学が決まった。どうやら寮生活らしい。父にはまだ単身赴任の可能性がある。となると私には最短でも1年、母と二人で暮す可能性が残されていることになり、これはとても恐ろしいことだ。

 母は本来なら共同生活の困難を疑うほどのマイペースである。私に合わせることを決してせず、私のリズムを慮ることもしない。ひょっとしたらする意思くらいはあるのかもしれないが、実現しないのでは同じことだ。母とふたりで暮すということは、そんな彼女のペースで生きていくということを意味している。私が就職後即時に一人暮らしを切望する理由の一つがこれだ。仮に就職後もこのまま実家で暮らすことになったら、私は引き続き彼女のペースに合わせて生活しなければならない。ぞっとする。

 彼女の強み、ヒトとしての強みはこちらに何を言っても無駄だと思わせることだ。必要以上にきつい言い方も、主語を広くとりすぎるところも、人に厳しく自分に甘いところも、長らく改まらない。恐らく何を言っても無駄なのである。彼女自身も恐らく、とうの昔に我慢を辞めたのだ。同居人と譲り合って、快適に共存しようという発想がない。

 問題は父にもある。上記に述べた母の頂けない点を野放しにしてきたのは他でもない父である。父は父で、母に対して異常に大らかなのだ。私が母に対して意見を述べられるようになったのは自我と多少の教養が身についてからであり、それまで母は20年以上も放っておかれたわけで、今更私が言葉を尽くしたところで改まらないはずである。 

 そんなわけだから、母と暮すには差し当たって我慢、多少は快適に暮らしたいと思うなら耳を塞ぐしかない。私はどちらにもうんざりなので、ただ父の地方赴任がないこと、就職活動が最短で終わることを祈るのみである。 


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