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「模倣犯」を読んで、noteをはじめる。

最初に一つ言わせてください。
絵を描いたのは夫です。カッコいい中居くんを描こうと散々頑張ったもののうまくいかず、私が風呂に入っている間にこちらの絵が出来上がっておりました。
うん。いつもありがとう。

この夏、宮部みゆきの「模倣犯」を読みました。
今更「模倣犯」?って思いました?
大丈夫です。私もそう思ってます。

もちろん宮部みゆきの「模倣犯」は知っていました。映画化もドラマ化もされ、その度に原作には到底叶わない、原作の持つ空気感を表現することはできないと原作を読んでいる人が口々に言う、それが「模倣犯」。映像化するのが難しいことは読んだ人なら100%わかるにも関わらず、それでも多くの人がどうにかして映像化してみたいと思わせる、それが「模倣犯」。

読んでみたいなとはずっと思っていました。読書が趣味と言うと、お前年間何冊読んでんだとか、三島由紀夫の文学についてどう思うかとか言われると困るので読書が趣味とは言いませんが、小説は好きです。年間100冊以上読んでいた時期もありました。

何故これまで「模倣犯」を読んでこなかったのか。
単純です。

長いから。

小説って読むと止まらなくなりますけど、漫画と違っておおよそ一冊で完結しているものが多いです。めちゃくちゃ続きが気になるなら、その日のうちに読み終わらせることができるんですよ。
それが「模倣犯」は文庫本が5巻(単行本は上下巻)。1日、2日で読める長さじゃありません。
5巻ってやばいですよね。シリーズものでもない限り、小説で5巻いくものってあまりない気がします。

「めちゃくちゃ続きが気になったときに5巻はきつい」そう思って、何度も見かけながら、その面白さを耳にしながら買うことができませんでした。
じゃあ何で急に読んでみたのかっていうと、Netflixで再びドラマ化されるにともなって出ていた「模倣犯」の記事がおもしろかったからです。(ちょろい)

会社まで1時間くらい電車に乗るので、通勤時間だけに読もうと決めて読みました。毎日続きが楽しみで、毎日電車に乗る前はそわそわ。そんな生活を数日送っていたので、読み終わってしまったら通勤時間に何をしたらいいのか急にわからなくなり、何故だかすぐに別の本を読む気にもならず、することなくてドラマの感想を長々と書いて夫に送りつけてたら「ブログでもやったら?」と言われてnoteはじめた感じです。

「模倣犯」、面白かったです。
が、もっと早く読めばよかった!とは思いませんでした。学生の頃に読んでももちろん感動したとは思うんですけど、大人になって毎日働いて、結婚して子供もできて、という今だからこその読後感が私の中にありました。

まずすごいのは、映画で中居くんが主役を演じてた犯人は物語途中まで出てこないことです。あの犯人を物語の中盤まで登場させないなんて、正直どうかしてるとしか思えません。もちろん犯人は最強に狂ってます。それにも関わらず、(映画では中居くんが演じたということが私の頭にあることもあるかもしれませんが)犯人が話に登場してからの「模倣犯」は既に上がりまくっていたギアが更にあがるのです。魅力的というと語弊がありますが、彼が登場する前から充満していた底知れない不気味さが一気にはっきりとした形となってこちらに迫って来ます。

物語は、被害者、被害者家族、加害者、警察、事件関係者と次々に主役が入れ替わり、読み手はそれぞれの人生を垣間見ることになり、それぞれの苦しみや悲しみが自分の中に流れ込みます。
私は普段は視点が変わると少し物語がリセットされてしまうような気持ちになるのですが、「模倣犯」は違います。視点は変わりまくりですが、それでも話の勢いや読み手の感情を止めることなく、どんどんと読み進めてしまう力があるのです。

話は三人称(三人称っていうのは、「僕は〜」とかいう文章じゃなく「太郎は〜」的な文章)で進みます。全ての登場人物の心理描写ができるのは三人称で、事件について書く時も三人称の方がいいというのも聞いたことがあります。だから「模倣犯」が三人称で書かれているのは当然と言えば当然なのかもしれせんが、それでも読んでいて何度も三人称の書き方のうまさに驚愕しました。一人称のよさって、やっぱり心理描写がリアルに書けるところだと思うんです。でも、「模倣犯」は三人称でも一人ひとりの全ての感情が淡々とながら流れ込むように伝わってくるんです。物語はいろんな人の視点になり、それは文章として長い人もいれば短い人もいれば、殺されてしまっていて心理描写が描かれていない人もいます。それでも読者は登場する全ての人の性格や悲しみや絶望がわかる気がしてしまうのです。そして時折効果的に挟まれる神の視点。それが物語の中で異彩を放ち、その筆力に改めて圧倒されました。

長くなりましたけど、要は今からでも今じゃなくていつかでも、必ず読んでほしいと思える本でした。

ちなみに、レジで買う時、「新潮文庫の100冊」のおまけがもらえると思ってたらもらえなくて内心「え?」ってなりました。なんとなく、「模倣犯」のような名作は毎年入ってるんだと思っていましたが、今年の100冊には入ってないんですね。
ステンドグラスのしおりがどうしてもほしかったわけではないのですが、何故か少し残念な気持ちになりました。

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